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もくじ

ー 完璧なコンディションのF40 パリで出品
ー レースのためのクルマ
ー 快適性はゼロ
ー 今回出品された個体

完璧なコンディションのF40 パリで出品

288GTOが80年代の過激なフェラーリのトーンを定めたとしたら、F40はそれにシンフォニーを書いたと言えるだろう。

フェラーリの40周年を記念して生産されたこのクルマは、発売当時のフェラーリ史上最速で最もパワーのあるマシンであった。

そして、わずか1300台という生産台数もあり、現在ここまで状態の良いF40を見つけるのは至難の技だ。その意味で、この1989年型の1台は非常に魅力的だ。

この車両が4月8日、パリで行われるアークチュリアル・オークションに出品される。

レースのためのクルマ

F40は中断された288GTOコンペティツィオーネの計画を引き継ぐ形で、1987年に発売された。

グループBで戦うために開発されたが、FIAがそのカテゴリーを撤廃したことを受け、エンツォは車両を公道向けスーパーカーとして開発しなおしたのだ。

エンツォ・フェラーリ自身の手による最後のスーパーカーとして、F40はフェラーリ40周年を飾った。

洗練性という意味では欠ける部分もあるが、アグレッシブなルックスとパワーでひとを圧倒する。

2.9ℓのツインターボV8によって、478psを発揮する。見事な空力性能と軽量設計により、最高速度は320km/hだ。これはポルシェ959Sに対抗するには不十分と言えるが、当時の市販車最速の座を勝ち取るには十分であった。

快適性はゼロ

羽のような軽さを実現するため、ケブラー、カーボンファイバー、アルミニウムなどの軽量素材がふんだんに仕様されている。華やかさは廃され、窓はプラスチック製だ。

軽量化のため、ドアハンドルやグローブボックスなども装備されていない。

当初の予定では400台のみが生産される予定だったが、1992年までに合計1311台が生産された。

この時点で、このクルマはすでに象徴的な立場を獲得しており、F40は多くのビデオゲームやポスターなどに使われていた。

このクルマは日常使いには全く不向きであった。後方視界は壊滅的で、信頼性には疑問が残り、街乗りにおけるドライバビリティというものは存在しない。電子制御が皆無であり、このクルマを320km/hで制御するのは至難の技だ。

しかし、F40は当時のフェラーリを体現するクルマだった。印象的なルックスと強烈なパフォーマンスは、公道で使うには過激すぎていた。これは現代においても変わっていない。

今回出品された個体

今回出品された1989年型のこの個体は、30年間にわたって3人のオーナーに管理されてきた。走行距離は未だ53000kmだ。また、その大部分の期間において、モデナ・モーターズによって整備が行われており、忠実な整備記録簿が残っている。

オリジナルのロッソ・コルサの塗装はそのままに、いくつかの補修が施されている。例えば、2010年にクラッチが、2013年に燃料タンクが新品に交換された。

昨年、ベルト類やタイヤが交換され、現在のオーナーの元に届けられている。

今年初頭、スペシャリストの手によってボディにコーティングが施され、新車同様の輝きを放っている。同時にホイールもリフレッシュされ、工場を出たばかりのような美しさだ。

もしこのクルマを落札したら、フェラーリオリジナルのラゲージセットがついてくる。もちろん、取扱説明書やスペアキー、整備記録の証明書類も付属する。

オリジナルのエンジンであること、整備状態、走行距離を鑑みるに、このフェラーリを落札するのは至難の技だろう。85万ユーロ(1億1150万円)という最高落札予想を見る限り、われわれはレゴで我慢した方がよさそうだ。