「ミツバチの針を体に刺す健康法」でミツバチに刺された女性が死亡してしまう
by Kris Fricke
世間に伝わる民間療法には非常にさまざまなものがありますが、その中には「ミツバチの針を刺す」というものがあります。そんな「ミツバチの針を使う民間療法『アピセラピー』によって、ミツバチに刺された女性が死亡した」という事故が報告されています。
Death due to Live Bee Acupuncture Apitherapy
(PDFファイル)http://www.jiaci.org/revistas/vol28issue1_6-2.pdf
https://arstechnica.com/science/2018/03/gwyneth-paltrow-claimed-bee-sting-therapy-healed-her-it-just-killed-a-woman/
死亡が報告されたのはスペインに住む55歳の女性で、ストレスと筋肉の硬直を解消するために、「アピセラピー」というミツバチの針に刺される治療を繰り返し受けていたとのこと。アピセラピーは近年世界各地の富裕層に人気の代替治療法として広まっており、アメリカの女優であるグウィネス・パルトローさんが支持したことで知られています。
アピセラピーによって昆虫の毒を体に取り込むことにより、体の炎症や痛み、皮膚の疾病等に効果が期待できるとアピセラピー支持者は訴えています。しかし、アピセラピーの薬効は根拠に乏しいとして専門家たちが「アピセラピーは危険だ」と警鐘を鳴らすこともありました。最も危険とされていたのが、「これまでミツバチに刺されたことのない人が繰り返しミツバチの毒を摂取することで、アナフィラキシーショックを引き起こす可能性が高くなる」という事実です。
2015年には、韓国の研究チームが145件のアピセラピー療法に対して調査を行った結果、「アピセラピーによって患者が有害な影響を受ける可能性は高い」という研究結果を発表しています。研究の中では、21歳の人物がアピセラピーを受けた1年後、「偶然」ハチに刺されてアナフィラキシーショックで死亡した事例も報告されており、「アピセラピーによってアナフィラキシーショックを引き起こすリスクは高い」とのこと。
by darwin Bell
今回死亡が報告された女性の場合、4週間おきにミツバチの針を体に刺すアピセラピーを、2年間にわたり継続して行ってきたそうです。いつものようにアピセラピーを行った後、女性は呼吸に支障を来し始め、やがて意識を失ったとのこと。
女性がアピセラピーを受けた診療所には、このような緊急事態に対する用意が整っておらず、診療所では女性に対して炎症を軽減するメチルプレドニゾロンの処方程度しか治療できなかったそうです。30分後に救急車が到着し、すでに収縮期血圧が42mmHg(通常は90〜110mmHgが平均とされる)にまで低下していた女性に、救急隊は速やかにアドレナリンや生理食塩水の注入、コルチコステロイドの投与などの治療を施しました。
救急車内で一時的に血圧や心拍数が落ち着いたものの、重度のアナフィラキシーショックから脳卒中を引き起こしていた女性は、昏睡状態に陥ってしまったとのこと。女性は数週間後に多臓器不全により亡くなってしまったと報告されています。
by Kris Fricke
この事例に対して医師たちは「アピセラピー診療所に緊急事態の用意があれば、女性を救うことは可能だったかもしれない」としながらも、そもそもアピセラピーによって得られるメリットとデメリットを比較した場合、アピセラピーを受けることはオススメできないと述べています。
しかし、アピセラピーは世界の富裕層に人気の代替医療であり、イギリス王家のキャサリン妃や歌手のヴィクトリア・ベッカムさんらが、ハチの毒を使う製品を支持しているとのことです。