親に最も愛されて育った長子にとって、いちばんうれしい褒め言葉とは?(写真:Anurak / PIXTA)

『不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち』の著者・五百田達成氏が、「きょうだい型」別に性格分析とコミュニケーション方法を伝授する本連載。五百田氏は角川書店で雑誌・書籍編集者、博報堂でプランナーとして勤めた後、作家・心理カウンセラーとして独立。豊富なカウンセリング実績を生かした人付き合いやコミュニケーションに関する実践的アドバイスを行っています。第1回の今回は、責任感と自尊心の強い生まれながらの「王様」「女王様」、長男・長女について解説します。
なお、本稿ではきょうだいのいちばん上を「長子」、3人以上のきょうだいの長子と末っ子以外を「中間子」と表記しています。

"最も親に愛されている"自尊心ときょうだいへの責任感

長子の性格をひと言で言い表すなら「王様」「女王様」です。その性格は親からの惜しみない愛によって形づくられます。

何といっても一人目の子どもですから、親も子育ての理想に燃え、エネルギーにも満ちあふれています。

実際、多くの親が「結局、1番目の子がいちばんかわいい」と告白します。そして下の子になるほど、親も肩の力が抜け、手抜きも覚えていくことに。

長子のときは、妊娠から出産、ハイハイの様子、七五三、入学式と何百枚何千枚も撮った写真が、中間子では数十枚に減り、末子に至ってはほぼゼロになる……というのは多くの家庭の"あるある"です。

そのように"最も親に愛されている"という自負に加えて、「下の子たちの面倒を見てね」という親の言いつけをしっかり守ってきた長子。社会に出てからも、その責任感と面倒見の良さはあまねく発揮されます。


自宅で飲み会を開けば遅くまで引きとめて「泊まっていきなよ」と勧め、友人が厄介な恋愛をしていると聞けば「相談に乗るよ」と張り切る。相手が誰であれ、放っておくということができないので、何かと「俺(私)がなんとかするから!」と出しゃばる傾向が強いのです。

人を支配しコントロールしようとする傾向も

さらに言うと、長子は基本的に弟や妹の人格を認めていません。

ある男性(長子)は、弟に婚約者を紹介されたときひどく驚いたそうです。というのも、幼いころから「お兄ちゃん、待って〜」とまとわりついてきた弟のイメージが抜けていなかったから。「え! お前ごときが結婚なんかできるんだっけ!?」と純粋にビックリすると同時に、大人になっても自分の付属品や手下ぐらいに見下していた自分に、ハッとしたのだとか。同じようなエピソードを語る長子は少なくありません。

そのためか、大人になってから出会う赤の他人に対しても"この人は自分のいうことを聞くはず"と何の根拠もなく信じる傾向にあります。そのくせ、自負心と自尊心が強く、人に任せられない性分で、"自分がやったほうが早い病"にかかりやすいのも長子です。

家庭内で王様だったので、周囲の顔色をうかがってきた経験が少なく、大人になってからも、おおむね鷹揚でぼーっとしています。いざというときの決断力はあり、面倒見もいいのですが、自分では気づかないうちに横柄な態度で人に接し、支配しコントロールしようとしている可能性もあります。

ですから、"よかれと思って""相手のためを思って"という大義名分のもと、ずかずかと踏み込み、相手の人格を損なう言動をしていないか、振り返ってみる必要があります。王様は結構ですが、「裸の王様」にならないよう、気をつけたいものです。

長子から見た相性:仕事は末子、結婚は長子同士がうまくいく

長子にとって、最も相性がいいのは同じ長子。メイン性格(まじめ)が近い一人っ子ともそこそこうまくいきますし、真逆の性格である末子ともうまく補い合える可能性が。一方、似て非なる性格の中間子とは衝突する場面が多そうです。

仕事相手として相性がいいのは末子です。責任感とリーダーシップを発揮する長子と、周囲をうまく頼りながら効率よく仕事を進める末子は、お互い補完し合って、いいチームを組めそうです。

恋愛でも最初はノリがいい妹(弟)キャラの末子に引かれますが、付き合いが長くなると違いが際立ってくることに。いつしかムリが生じるかもしれません。

結婚相手として相性がいいのは、文句なく長子同士。"いざとなったら、家族の面倒は自分が見る"という責任感や気負いをすんなり理解し合えます。そういう面では一人っ子ともまずまずです。

友達付き合いでは、中間子や末子の態度をじれったく思うことがしばしば。

家族の顔色をうかがう機会が乏しかった長子は、社会に出てからも周囲の思惑に鈍感なことが多々あります。「え? 人付き合いなんて簡単だよ」「私は誰とでもうまくやっていけるタイプ」と口をそろえる長子ですが、実は相手が長子に合わせてくれているだけ、という可能性も十分にあるので要注意です。

長子との付き合い方は「親しき仲にも礼儀あり」を忘れずに。"きちんと"お礼を伝えましょう。

親の期待を背負い、弟や妹を導くリーダーとして振る舞ってきた長子は、責任感も人一倍。何事にも"ちゃんとしたい"という思いが骨の髄までしみこんでいます。

同時に相手にも"ちゃんとしてほしい"という思いが強いのが特徴。面倒見がよく、仕切りたがる反面、相手からのお礼がないと途端に態度が豹変。「いったいどういうことなのか」と問いただしたり、怒りを表明するケースが少なくありません。

その背景には「他人に何かを頼み、お世話になったらしっかりお礼を言うべき」という"常識""正義"があります。どんなに親しい間柄でも、なぁなぁにはしたくないわけです。

ルールや原則を重んじる傾向も見られ、その姿勢は友達同士の飲み会からデートまで幅広く適用されます。

さらに、誇り高い長子はいじられるのが苦手。周囲は親愛の情を示したつもりでも「バカにしてるの?」と不機嫌になりかねません。むしろ、長子に対しては、多少他人行儀だと感じるほど敬意を払って付き合うほうが、仲良くなりやすいでしょう。


長子にはこのひと言でうまくいく!!

1 褒めるとき:ありがとう

長子が最も欲しがる褒め言葉、それは「ありがとう」のひと言です。「仕事できるね」「すごいね」など、すばらしさを褒めたたえられてうれしくないわけではありませんが、もともと自尊心が高いので、本音を言えば「まあ、そうだよね」ぐらいの気持ち。むしろ、「ありがとう」「助かったよ」「うれしいです」と言われたほうが、「うむ、苦しゅうない」と喜べるのです。どんなことでも、無理にでも感謝の気持ちに変換してみましょう。

2 しかるとき:しっかりしなさい

子どもの頃からしつこく親に「しっかりしなさい」と言われ続けてきた長子たち。うんざりかと思いきや、「『しっかりしろ』と言われると、気持ちがシャッキリする」とのこと。きまじめで、しっかりす"べき"と思っている人たちには、これぐらいのハッパをかけて責任感に訴えるといいでしょう。逆に、遠回しにしかるのは逆効果。「言いたいことがあるならはっきり言ってほしい」「結局、何が言いたいの?」と論戦をふっかけられかねません。

3 謝るとき:反省してます

"しかる"の逆パターンで、何はともあれ反省の意をしっかり伝えることが大切です。できるだけションボリした風情を漂わせるのもポイント。下手に出ることで「ったく、しょうがないな」と案外あっさり許してもらえることも。

逆に、反省のステップを飛ばして「仕方がなかったんです」と言い訳したり、「この埋め合わせは必ず!」などと譲歩を切り出すと、「本気で悪いと思ってるようには見えない!」と怒りが再燃。話がこじれやすくなります。

4 慰めるとき:頑張れ

ミスをして落ち込んでいる長子に優しすぎる言葉は逆効果。「頑張るしかないよ」「きっとできるよ、頑張って」など、前を向かせる言葉が有効です。「そうだ。へこたれている場合じゃない、自分がやらなくてどうするんだ」と物語の主人公気取りで元気を取り戻してくれるはずです。一方で励ませば励ました分だけ無理をして空元気を出し、自分を追い込むクセもあるので、乱発は禁物です。

周囲の期待には応えたい性分

5 誘うとき:みんな待ってます

もともと義理堅く、周囲の期待には応えたいのが長子の性分。コミュニティに貢献してきた自負もあるため、「みんな待ってます」「××さんがいないと始まらない」などと自負心をくすぐられると、多少無理をしてでも駆けつけようと考えます。「来てくれたら〜〜」など交換条件をちらつかせるのは禁物。たとえ参加したかったとしても「そんなものに目がくらんだわけじゃないし」とへそを曲げてしまうことになります。

6 口説くとき:付き合うべきだと思う

「俺たち、付き合うべきだ」「私たち、合うと思うから付き合わない?」といった、やや芝居がかったセリフが長子には刺さります。好き、とか、さみしい、とか、そういった一時期の感情で付き合う"べき"ではないと思っている彼ら。

「互いの価値観をすり合わせることができたから、さあ、付き合いましょう」という冷静な口説き文句こそが、彼らにとって納得のいくものなのです。遠回しに好意を伝えようとしても鈍感な彼らは気づかないおそれもあります。

7 頼むとき:頼りにしてます


長子のやる気を手っ取り早く引き出すためには「頼りにしてる」が効果的です。幼い頃から人に頼りにされることに慣れているので、彼らにとって「頼られる」ことは、呼吸をするように自然なこと。事後には「助かりました」とフォローを忘れずに。逆に、「頼んだら迷惑かも」という遠慮は逆効果。 "能力を疑われている?"と不安になったり、"ないがしろにしてるのか!"と腹を立てたり。長子の厄介な面を引き出すことになりかねません。

8 断るとき:すみません

長子からの依頼や誘いを断るときのポイントは「申し訳なさ」を前面に押し出すこと。あれこれ言い訳する必要はありません。何はともあれ、「すみません」と謝り倒して十分に同情を買ってから、事情説明を。「断られた」とプライドを傷つけることさえ回避できれば、「オッケー、じゃ、またね」「そっか、僕のほうでやっておくよ」と快く引き下がってくれるはずです。「謝るとき」の項も参考にして、あくまで下手に出ましょう。