大晦日の対戦相手は3連続KO勝利で勢いに乗る若手だが、五味隆典は「ロベルト・デュランのように39歳で復活する」と自信を見せる

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“天下無双の火の玉ボーイ”の異名で、かつてPRIDEで破竹の10連勝を飾りライト級王座に君臨していた五味隆典。

2010年からはUFCに参戦したが、戦績は4勝9敗と振るわず、ここ5試合は全て1Rで敗退…あの時の輝きは失われていた。

その五味が、大晦日のRIZINで日本のリングに本格復帰。久々にその雄姿が地上波(フジテレビ)で放送されることになる。

PRIDE、UFC時代、そしてRIZINへの想いを激白した前編(「“火の玉ボーイ”五味隆典が「那須川天心を鍛えたい」)に続き、今回は若手ファイターの「インスタ映え」に苦言を呈す!?

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―RIZIN参戦は、榊原信行委員長をはじめPRIDEのスタッフが関わっていることも理由のひとつですか?

五味 そこは関係ないですね。確かにPRIDEでお世話になったっていうのもあるし、いい試合しなきゃっていう気持ちはありますけど。

―では、今回の相手、矢地祐介選手の印象は?

五味 「お祭り男」って自分で言ってるの? その点は面白いね(笑)。ああいうお祭り男がいないと面白くないしね。髪切れって感じだね(笑)。昭和の香りがするんだけど、ああいうチャラチャラしたところは平成なのかな? よくわかんないね。まあ、ああいう破天荒なのが出てこないと。

―五味さんが出る限り、やっぱりファンは“スカ勝ち”を求めますよね。

五味 う〜ん、俺も弱気なことは言いたくないけど…言わないほうがいっか(笑)。

―いやいや、言ってください(笑)。

五味 俺がイメージしているのは、(ボクシング元世界王者の)ロベルト・デュランのように39歳で復活するっていうね。経験を生かして、ガッツでやるしかない。ブサイクな試合でもね。

―大晦日には「秀作」をという思いは強いですか?

五味 そうですね。海の向こうでの試合と違って、日本のファンみんなが観られるわけですから。去年、魔裟斗さんとやって思ったのは、恩師や友人の前で無様な試合はできないなということ。そういうモチベーションはやっぱり日本での試合のほうが作れますからね。

―かつてのPRIDEのように日本の格闘技を盛り上げたいという思いは?

五味 そういう面もありますけど、オファーがあるってことは必要とされているからでしょうし、それだけファンも観たいと思ってくれているんでしょうからね。オファーがあるうちですよね。

―今後は一戦一戦がカウントダウンになってくると。今回の矢地戦は「世代交代」もテーマになってくるでしょうね。

五味 矢地くんは会見で「今のエースは俺だ」とか言っていたけど、何言ってるんだ?って思ったね。俺、そんなこと全然意識していないし。こっちは浦島太郎状態だからね。

―とはいえ、会見では他の選手もいる中で、五味さんへの注目度が圧倒的に高かったようですが。

五味 昼間だったから頭が働いていないのもあるんだけど(笑)、あの会見の雰囲気から「え、俺の試合が中心なんだ?」って。それ以外は盛り上がってねえのかと。俺は好きなようにやらせてもらうよって感じで、みんなで頑張って盛り上げようって思っていたの。ところがさ、要は、俺と矢地くんのカードが昔の(ヴァンダレイ・)シウバや(エメリヤーエンコ・)ヒョードルのカードになっているってことでしょ?

―そりゃあ、大会の目玉になりますよ。

五味 俺はそんな風に思ってないよ。昔の感覚のまんまだからね。吉田秀彦さんがいて、桜庭(和志)さんがいて、(アントニオ・ホドリゴ・)ノゲイラがいて。こんなすごい人たちの中にいたら、自分も自然といい試合を見せなきゃって気持ちは上がるよね。負けていられないって。ところが、今はどうなっているんだろ?って。今回の会見では、高田(延彦)さんが俺のことをすごくよく言ってくれるから、俺がメインか?と思って。

―高田本部長は「五味選手がUFCから来て、矢地戦を引き受けてくれたことにリスペクトします」と言っていました。

五味 ありがたかったですよ。涙が出そうになりましたよ。それを矢地くんが、契約がどうこう、ゴチャゴチャ言っているんだよ。そんなことより、今ここ(会見)にいるんだから、決まったんだからそれでいいんだよ。ああやってインスタに出したことだって、ホントは言っちゃいけないことだからね。

【※11月7日、矢地が「五味さん 大晦日、俺と試合してくださいよ! 一回やるって言ったんだから! 新星とレジェンドが時代を背負って戦うのは格闘技界の常でしょ! やるなら大晦日しかないでしょ! 僕達で日本の格闘技をまた盛り上げましょうよ」と発信。物議を醸(かも)す】

五味 俺はホント脇役だと思っていたんだもん。主役は天心とかRENAちゃんでね。

―いやいや、大晦日に五味×矢地戦があるのとないのでは全然違いますよ。

五味 それじゃあ、ちょっと厳しいよね。俺、UFCでなかなか勝てなかった人間だよ。まあ、そんなことを言ってもしょうがないか。だから言ってみりゃあ、俺のための大会なんだよ(笑)。

―その方向でお願いします!(笑)

五味 だって、それしか客が望むものはないんだもん。それに応えるためには奇跡を起こさないとね。「出ました、負けました」じゃ、もう意味ないよね。

―やっぱり五味さんには緊張感のある試合が期待されると思います。

五味 PRIDEの頃は選手もそうだけど、スタッフもピリピリしていましたしね。あの頃、試合前にあるスタッフの方に言われたのは「自分の将来のために頑張ってくれ」って。それはよい言葉だと思った。

―そう言われたら、頑張るしかないですね。

五味 会見の時もみんなピリピリしていてさ。俺のことを面白く思っていない選手も多かったし。だから、すごく緊張しましたよ。おかしくなるくらい緊張して。その点、今のコはみんな緊張しないもんね。ニコニコしていてさ。PRIDEの時はラウンドガールなんていつも怖い人が近くにいて、迂闊(うかつ)には話しかけられなかったもんね(笑)。今は(選手が)そこともSNSで繋がっちゃうしね。

今のコたちはTVの視聴率がどうとかよりもSNSで完結しちゃっているのかなって思うんですよ。俺がPRIDEでやっていた頃はインスタとかなくてブログぐらいだったから。TVで数字を取って、成功しなきゃっていう思いがあった世代だからね、(山本)KID(徳郁)さんにしても魔裟斗さんにしても。今はSNSの中でみんな完結できちゃうんだよね。フォロワー数が一番大事になっちゃうから。

―フォロワー数が大事って、寂しいですね…。

五味 まあ、俺もあんまりうるせぇこと言いたくないけれどね(笑)。TVに対してみんなそこまでの思いがないんじゃないかな。TV映えする試合はできなかったけど、インスタ映えするいい写真が撮れたからいいか、とかさ(笑)。

―TV映えよりインスタ映え…(苦笑)。ところで、RIZINでは女子の試合も行なわれます。会見では、神取忍さんが五味さんの隣に座っていました。

五味 神取さんは最強の男ですからね(笑)。男前ですから。RENAちゃんにしても、女性は強いですからね。今、男は情けないねぇ。女性は強いよ。今の都知事も女性だしね。RENAちゃんなんていい目をしてるもんね。凄いよね、殺気が。

―寝ている相手の顔面を踏みつけますからね。

五味 躊躇(ちゅうちょ)しないもんね(笑)。怖いところあるよね。それだけ賭けているんだろうなあ。

―大晦日以降、来年の展望はありますか?

五味 40歳までやりたいっていうのはあるんですけどね。まあ、先の話をしてもしょうがないんだけれど、クロン・グレイシーとかね。

―クロン戦は観たいですね! PRIDEで10連勝をしていた時、40歳になった時のことは考えましたか?

五味 そんなこと言われてもね(笑)。みんな平等に時間は流れているわけだし。ま、ここまで現役を続けられたのはよかったですね。2度目の格闘技ブームを巻き起こすところに携われるわけだからね。

(取材・文・撮影/“Show”大谷泰顕)

●五味隆典(ごみ・たかのり)

1978年生まれ、神奈川県出身。98年、修斗でプロデビューし、無敗のまま修斗世界ウェルター級王者に。04年からPRIDEに参戦し川尻達也、桜井“マッハ”速人らを下し初代PRIDEライト級王者に。PRIDE消滅後は戦極、UFCを経て、今年大晦日のRIZIN参戦が決定

●『RIZIN FIGHTING WORLD GRAND-PRIX 2017 バンタム級トーナメント&女子スーパーアトム級トーナメント 2nd ROUND/Final ROUND』

【日時】12月29日(金)、31日(日)/13:30開場 15:00開始 【会場】さいたまスーパーアリーナ 対戦カードなど詳細はRIZINオフィシャルサイトでチェック!