日本メーカーが考える未来のクルマは「超キュート」だった:『WIRED』US版が見た東京モーターショー
映画『ブレードランナー 2049』の舞台が、もしロサンゼルスではなく東京だったら──。ライアン・ゴズリングは今年の「東京モーターショー」の会場を、ゆっくりゆっくりと歩き回っていたことだろう。そうすれば、わざわざセットを組まなくてよかったかもしれない。
会場を埋め尽くしていたコンセプトカーは、ドゥニ・ヴィルヌーヴやリドリー・スコットが想像していたであろう「未来」を、説得力のある刺激的なかたちで具現していた。
世界の変容に向けて、日本の自動車メーカーはいかに準備しているのか。それはいまの時代でいうところの「コンセプト」、すなわちマーケット調査のためにつくられた、単なる現在のクルマの進化形を大きく飛び越えてたかのように見える。それこそ、あり得ないくらいの想像力をもってデザインすることを、デザイナーに許したのだ。
結果として生まれたのが、キュートで、曲線を多用した、スポーティーで、シャープで、そしてもちろん電動化されたクルマたちである。
ホンダの「Honda Sports EV concept」は、華麗に輝く丸みのある四角いリアライトを備えており、レトロな感じと未来的な雰囲気をミックスしたようなコンセプトカーだ。スバルの「SUBARU VIZIV PERFORMANCE CONCEPT」は、どんな災害がこの地球に起きたとしても、切り抜けられるようにつくられたように見える。それだけでなく、植民地となった異世界の惑星であっても、きちんと仕事をこなしてくれるだろう。
ダイハツ工業の「DN PRO CARGO」は商用車のコンセプトカーである。人混みの多い2049年の東京の街角でネオンライトに照らされながら、商品を運ぶ様子がよく似合いそうだ。
個性的に進化していくモーターショー
一方で、現実的な外観にデザインされたクルマもある。マツダはクリーンでシンプルなデザインを、「マツダ 魁 CONCEPT(マツダ カイ コンセプト)」と、「マツダ VISION COUPE」で示した。日産自動車は、走りのパフォーンスに特化したヴァージョンの電気自動車(EV)「リーフ」を展示した。
モーターショーは世界各地で催されているが、それぞれが個性をもって進化している。例えば、ジュネーヴはスーパーカーの祭典、デトロイトは男性的なマッスルカーの宝庫である。パリはフランスらしいアヴァンギャルドなアイデアにあふれている。そして東京は、いかにも日本らしいクールでキュートなポジションをつくり上げた。
クルマ好きにとって、いいニュースはあったかって? 「運転する行為」は変化していく運命にある。だが、個性はすぐには消え去りはしないだろう。