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テスラが現在直面している最大の困難は、「モデル3」を生産する規模を拡大したり自動運転ソフトウェアの性能を確実にしたりすることではなさそうだ。恐らくそれは、急成長したテスラが長い間支配してきた市場に、自動車産業がついに参入しようとしていることだ。

この5年間、テスラのモデルSは高級セダンの電気自動車市場を独占してきたが、その支配が危機にさらされている。ポルシェは2020年に発売予定のスタイリッシュなスポーツカー「ミッションE」を開発するために、10億ドル以上を使った。今後3年のアウディの新しい電気自動車に対する戦略には、新たなフラッグシップモデルになろうとしている「A9 E-TRON」が含まれている。

そしていま、BMWがイーロン・マスクの門前でそこに仲間入りしようとしているところだ。BMWは9月に開催されたフランクフルトモーターショーで「i Vision Dynamics」を発表した。4ドアの電気自動車で、最大走行距離が373マイル。これはテスラの性能(最高時速120マイル。60マイルまでの加速時間が4秒)に匹敵するとされている。

この「Vision」という名前が示す通り、いまのところ、これはただのコンセプトでしかない。しかし、創立100週年を祝うための極めて奇抜なコンセプトモデル「Vision Next 100」と比べ、この「i Vision」は近い将来を見据えたものであり、今後数年間のうちに量産化へ移行する予定だという。実際、それは多くのコンセプトカーより実際に購入できるクルマのような姿をしている。あとは本物のサイドミラーと普通のドアレヴァーがあればよい。

2025年に彼らが達成すること

BMWは数年前から電気自動車を生産してきた。2013年には、変わったデザインで楽しんで乗れる42,400ドルの都市型小型自動車「i3」を発表した。その1年後、注目を浴びることをねらって製造された2人乗りスーパーカー、143,400ドルのプラグインハイブリッドモデル「i8」がそれに続いた。だが、こうしたニッチなモデルは、BMWの年間販売台数のなかでわずかな割合を占めるにすぎない。i Visionがコンセプトカーから量産車へと飛躍すると、それはBMWが初めて電気推進力を、ポートフォリオの端っこではなく、長年そのブランドを築いてきた主要な売上を占める車種であるスポーツセダンとして提示することになる。

BMW取締役のクラウス・フレーリッヒは、フランクフルトモーターショーの壇上で「電気自動車は、われわれのブランドの中心になろうとしている」と語った。「みなさん、われわれは攻撃の準備ができたのです」と述べた。

量産タイプのi Vision Dynamicsがどのように走るかはまだはっきりと確かめられていないが、i3とi8はBMWがどうやってその性能を電気駆動に移行させるか知っていることを明らかにした。高性能なi3は、ガソリン駆動のレンジエクステンダーを使えば、1度の充電で200マイル近く走行できる。華やかな外観のi8は、最高時速が155マイルにも及ぶ。

そしてそれが今後の戦いにおける、たったひとつの武器であることをわれわれは知っている。2025年までにBMWは、CEOのヘラルド・クルーガーがフランクフルトで誓ったようにセダン、スポーツタイプ、SUVを含む全12種の全電気駆動のモデルを発表する予定だ。

続々と登場するテスラのライヴァル

BMWが電気コードを積み重ねている唯一の自動車メーカーというわけではない。ボルボ、ジャガー、ランドローバー、フォルクスワーゲン、ベンツ、アウディなどが今後10年間での電気自動車市場への攻撃を誓っている。

テスラはこれまで街の唯一の楽しみだった」とKelley Blue Bookの自動車産業アナリストであるカール・ブラウアーは言う。「しかし、いまとなってはそんなに珍しいものではなくなってしまったのだ」

現在、これらの自動車メーカーは、消費者ニーズに答えるために、ましてやイーロン・マスクの鼻をへし折るために電気自動車をつくっているわけではない。政府からの高まる厳しい要求に応えるためにつくっているのだ。英国やフランス、ノルウェー、中国の政府はみな、今後20年間でガソリン車やディーゼル車の販売を禁止する意向だと明らかにしている。たとえそのような計画が細部まで詰められたものでなく、具体的でなかったとしても、規制は排出物ゼロへと向かい、どの大手自動車メーカーもその市場なしには生き残れない。

BMWが次の1世紀の間も市場に存在するためには、i3やi8のようなクルマのように電気化することは避けられない。そのことは決算書に対してではなく、営業部門に対して大きな意味をもっている。年間数万台販売する主要な製品を電気化しなければならないのだから。従って、i Vision Dynamicsは、クールなコンセプトをもったもうひとつの高性能セダンであるだけではない。それが現実的な未来なのだ。

イーロンよ、幸運を祈っている。

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