ロシアW杯の出場は決まったが、最終予選はまだ終わっていない。

 9月5日のサウジアラビア戦は、日本にとって勝っても得るものはなく、負けても失うもののない戦いである。いわゆる消化試合となるわけだが、この一戦が意味を持たないわけではない。

 ひとつ目の意味は、W杯のメンバー入りへ向けた再スタートである。オーストラリア戦で出場機会のなかった本田圭佑や香川真司、後半終了間際に送り出された岡崎慎司らの経験者が、ポジション奪回に闘志を燃やしているのは想像に難くない。そうでなければ困る。ロシアW杯が世代交代のタイミングなのは間違いないが、彼らがいきなり衰えているわけではない。

 岡崎はレスターですでに2得点をあげており、本田も新天地パチューカでデビュー戦にゴールを決めた。クラブでの活躍こそが、再評価につながる。サウジ戦をその助走としてほしいのだ。

 8月31日の埼玉スタジアムにいなかった選手にも、改めてその気になってほしい。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督のチームはW杯の出場権を獲得したが、本大会に出場する23人はここから絞り込まれていく。いまはまだグループの外側にいる選手も、出場できる権利を持つ。

 ここでもポイントになるのは、クラブでのパフォーマンスだ。13年の日本代表に一度も絡んでいなかった大久保嘉人は、同年のJリーグで得点王になることで14年のブラジルW杯に出場した。Jリーグでも海外でも、クラブでのプレーはハリルホジッチ監督へのアピールになる。

 オーストラリア戦で決定的な仕事をした井手口陽介にしても、ガンバ大阪での日々を大舞台へつなげている。数多くの選手が当事者意識を持つことで、代表チームに熱がこもっていく。競争が激しくなり、責任感と使命感に揺らぎがなくなる。いまはまだ代表チームが遠い存在の選手には、10月に国内で開催されるキリンチャレンジカップに向けてアピールをしてほしいものだ。

 サウジ戦を消化試合にできないふたつ目の意味は、アジアでの今後の戦いを見据えたいからだ。

 ロシアW杯の翌年には、アジアカップがある。16か国から24か国に拡大された大会には、今回の最終予選に出場している12か国の出場が決まっている。サウジアラビアと再び対戦する可能性があるわけで、ここでもう一度、それもアウェイで彼らを叩くことには価値がある。「日本は強い」とのイメージを、彼らの記憶に刷り込むのだ。

 アジアカップの優勝国は、21年のコンフェデレーションズカップの出場権を得る。今回のオーストラリアが脅威を抱かせたのは、6月のコンフェデ杯でドイツやチリと印象的な戦いをしていたからだった。大陸王者らが集う大会は、チームの成長に結びつく機会だ。W杯の前年にアジア以外の国と真剣勝負を戦えることからも、アジアカップを取り戻して出場権をつかみたい。

 5日のサウジ戦は、再びアジアの頂点に立つための第一歩なのだ。負けられるはずがない。