2017年、NBAにて史上2人目という伝説的な記録が誕生した。“トリプルダブル”と呼ばれる、スタッツ3部門で2桁以上の成績をシーズン平均で残した選手が現れたのだ。その選手は、オクラホマシティ・サンダーのラッセル・ウェストブルックである。

ウエストブルックは今季、31.6ポイント（得点王）、10.4アシスト（3位）、10.7リバウンド（11位）を記録。シーズン82試合で、なんと歴代最多42回ものトリプルダブルを記録した。

バスケットは出場する5人に、ポジションで大体の役割が与えられている。ガードはアシスト、フォワードは得点、センターはリバウンド……といった具合に、それぞれ得意な分野で活躍できるように振り分けられているのだ。現代ではポジションの概念は少しずつ薄れてきてはいるが、それでも大枠はこの通りである。

しかし、ウエストブルックにその常識は通用しない。自らリバウンドを奪い、そのままボールを運び、得点を量産していく。そしてマークが自分に集まれば、アシストで他選手の得点機会を演出。まさにガード、フォワード、センターを1人でこなしてしまう、最高のオールラウンダーなのだ。

では、この記録はどれほどスゴいことなのだろうか？

まず、得点とアシストで、なんと50点以上もチームの得点に直接絡んでいる。これは歴代でも3位の記録だ（2位は今季のジェームス・ハーデン）。1チーム１試合あたり、約10人の選手がプレイする中、１人でチームの得点の半分ほどを稼いでしまうのである。

またリバウンドでも、210�僂梁臙砲�ひしめく中で、193�僂離Ε┘好肇屮襯奪�が次々と奪っていく。今シーズンの平均リバウンド数20位中、唯一の190�兮罎料�手だったりする。

そんなウエストブルックは、初のシーズントリプルダブル達成者であるオスカー・ロバートソンとよく比較される。かつて“Mr.トリプルダブル”と称されたロバートソンは、1961-62シーズンに30.8得点、12.5リバウンド、11.4アシストという記録を残しているレジェンド選手だ。

それだけ聞くとロバートソンの方が優れているようだが、出場時間を見てみると、ロバートソンの44.3分に対し、ウエストブルックは34.6分で、10分も差がある。単純に、ウエストブルックが10分多く出場すれば、確実に各成績を伸ばしていただろう。現に、前半18分のプレイ時点でトリプルダブルを記録した試合もあった。

ともあれ、不滅の大記録を達成したウエストブルック率いるサンダーは、ウエスタンカンファレンス6位で3位のヒューストン・ロケッツと対決。ロケッツのハーデンとはシーズンMVP候補として直接対決となったが、残念ながら総合力でロケッツに劣り1-4でプレイオフ敗退を喫した。

それでもシリーズ平均でトリプルダブル（37.4ポイント、11.6リバウンド、10.8アシスト）を達成し、最後までNBAを盛り上げてくれたウエストブルック。現在28歳ということで、まだまだキャリア全盛期に入ったばかり。“シーズン全試合トリプルダブル”なんていうバスケットの概念を覆すような記録も、彼ならば不可能ではないだろう。