まるでスペースシャトルのような外観を持ち、機内で秘密に包まれた実験を行ったとみられるアメリカ空軍の無人宇宙機X-37Bが約2年に及ぶ宇宙での任務を終え、フロリダ州のケネディ宇宙センターに着陸しました。

Unmanned U.S. Air Force space plane lands after secret, two-year mission | Reuters

http://www.reuters.com/article/us-space-military-spaceplane-idUSKBN1830PF



X-37Bはアメリカ空軍が2機を保有して運用する軌道試験機(OTV:Orbital Test Vehicle)で、製造は航空宇宙大手のボーイングが担当した機体。内部に実験設備を搭載して実験を行うことが可能となっており、4度目となる今回のミッション「OTV-4」は2015年5月にアトラス5ロケットで打ち上げが実施され、実に718日という長期間にわたって地球周回軌道を飛んで試験を続けてきました。



垂直尾翼のレイアウトが異なるものの、その姿は「小さくて窓のないスペースシャトル」そのものといったところ。全長8.92m、翼端幅4.55m、荷室に搭載可能な貨物サイズは2.1×1.2mという機体で、打上げ用ロケットに搭載して繰り返し打ち上げて運用する事が可能な点もスペースシャトルと同様です。着陸後の機体を防護服を着たスタッフが取り囲んでいる様子が見えますが、これは宇宙空間に長時間滞在したことによる放射線の影響と、推進剤として搭載されている猛毒のヒドラジンを抜き取る作業の際に身を守るためのもの。



今回の着陸はEDT(東部標準時)で2017年5月7日の午前7時47分に実施されており、付近一帯には高速で飛来してきた機体が発生させたソニックブーム(衝撃波音)がとどろいたそうです。アメリカ空軍は、着陸の様子を収めた動画をTwitterで公開しています。





また、滑走路に着陸する様子を複数のカメラで捉えた映像も公開されています。この滑走路はスペースシャトルのミッションで繰り返し使用された同じものであり、映像には滑走路脇におかれたスペースシャトルの機体の姿も映っています。

引きのアングルで撮影された映像も。なかなかに鋭い角度で進入して一気にフレア(機首引き上げ)をかけて減速して着陸する様子は、スペースシャトルと同じ「グライダー」で着地してくる機体ならではといったところでしょうか。

今回の長期ミッションの目的は当然ながら秘密のベールに閉ざされており、その内容を知ることはできません。ミッションそのものは空軍のAir Force Rapid Capabilities Office (緊急能力造成室)によって進められており、その目的については「リスク軽減と実験および、再利用可能宇宙船技術のための運用開発コンセプト遂行」、そして「宇宙におけるアメリカの将来をサポートするもの」と発表されていますが、全てが秘密に包まれているために、実は偵察活動や秘密兵器の開発に使われているという臆測も呼んでいます。

今回の719日間というミッションは前回のOTV-3ミッションの675日を超えて歴代最長のミッションとなっています。空軍では、2017年後半にも5回目のミッションを開始する予定となっています。