音声コーデック「MP3」に関する特許を保有するフランスのTechnicolor(テクニカラー:旧Thomson)のライセンスプログラムが2017年4月23日付けで終了したことが明らかになりました。

mp3

https://www.iis.fraunhofer.de/en/ff/amm/prod/audiocodec/audiocodecs/mp3.html



MP3は正式名称の「MPEG-1 Audio Layer-3」から分かるとおり、ビデオ圧縮規格MPEG-1のオーディオ規格として開発されました。しかし、その後、CDよりも高圧縮なオーディオコーデックとして、PCや音楽プレイヤーなどで利用され、デジタル音声フォーマットとして広く普及することになりました。

MP3の権利を巡っては、ドイツのFraunhofer IISとフランスのThomson(現:テクニカラー)が特許権を主張し、MP3のエンコード機能を利用するゲームメーカーなどのソフトウェア開発者にライセンス提供してきましたが、両社の技術に抵触しないように開発されたオープンソースプログラムのLAMEやWindows標準ソフトのWindows Media Playerなどの無料再生ソフトのおかげで、音声フォーマットのデファクトスタンダードの地位を占めることに成功しました。その後、MP3には著作権管理機能がないことから、AACやATRACなどが開発されましたが、MP3ほど普及することはなく、記事作成時点においても依然として音声フォーマットとして標準的な位置付けにあります。

MP3の権利を主張するFraunhofer IISが、2017年4月23日付けでもう一つの権利主張者であるTechnicolorが保有するMP3関連のライセンスプログラムが終了したと発表しました。Technicolorの保有するMP3関連特許権が消滅したことで、Technicolorの保有していたライセンスプログラムはすべて終了し、自由に使えるようになったというわけです。



MP3特許権を巡っては、フランスのAlcatel-LucentがMicrosoftを訴えて1審で15億ドル(当時のレートで約1800億円)の賠償評決が出され、その後、MicrosoftがFraunhofer IISからライセンス提供を受けていることが認定されて賠償命令が取り消されるなどの事例がありました。今となってはより高音質で著作権管理機能付きの他のオーディオ規格が登場していますが、依然としてMP3のシェアは高いため、MP3を音源に用いたいという開発者にとってはMP3関連特許権の消滅は、歓迎されることになりそうです。