「パパごはん」に学ぶ、お弁当作りの秘訣/栗原心平さんインタビュー・後編
インタビュー前編に引き続き、料理家・栗原心平さんのインタビューをお届けします。
前編もぜひご覧ください。
初心者でも料理を楽しめるコツとは?/栗原心平さんインタビュー・前編
後編では、おうちごはん読者からもお悩みの多い「お弁当作り」についてお聞きしました。
また、4月26日発売の新刊レシピ本『栗原心平のとっておき「パパごはん」』(講談社)についてもご紹介します!
主役おかずを決めることがお弁当作りの秘訣
――4月になり、新学期が始まってお弁当作りを始められた方も多いと思います。栗原さんも普段ご自身とお子さん用にお弁当を作っていらっしゃるとのことですが、まず「詰め方がどうも決まらない……」というお悩みをよく聞きます。栗原さん流のお弁当の詰め方のコツを教えていただけますか?
栗原心平さん(以下、栗原):まずは、「なんとなくお弁当の構成を考えておくこと」が結構重要だと思っています。前日から「明日のお弁当にはこれを入れよう」というのは皆さんあると思うんですよ。そこで、“主役”となるおかずを決めて、主役の置き場を決める。次におかずとご飯の間や仕切りどうしようか...と考えていくんです。
例えば、からあげがあって、ソーセージがあって、卵焼きがあって、野菜があるとしたら、からあげが主役の”からあげ弁当”にしてあげる。そのからあげを、主役としてお弁当の中でどう際立たせて、どうわかりやすくしてあげようか、と考えることが重要なんです。
――たしかに主役おかずはきっとみなさんある程度決まっているはずなので、今日は”○○(主役おかず)弁当”と名前を付けてあげると、お弁当のテーマが決まって作りやすくなりそうですね。では脇役おかずだったり、お弁当の隙間埋め問題はどうやって解消すればいいでしょうか?
栗原:隙間おかずは、ある程度使う野菜が決まってくると思います。だからあとはその色の付け方というか、調理の仕方がポイントです。
スライスではなく乱切りでごろっとしたレンコンできんぴら作ったっていいですしね。
手の込んでない、全く手をかけないものが続くことは抵抗あると思うんですよ。毎日毎日茹でたブロッコリーとカリフラワーを交互に入れていると、なんとなく罪悪感もあるし、パターン化してきて詰め方も似てきちゃうんです。だからあるときは、いつもは房のまま入れていたブロッコリーを縦4等分にして細切りのベーコンと炒め合わせたら、違う盛り付けに見える。そういうふうに拡げていくといいと思いますね。
余り野菜はお弁当のおかずに活用できる!
――お弁当を作ろうとなると、やっぱりいくつかおかずが欲しいと思ってしまいます。かといって、前日から仕込む余裕もない人に向けて、朝に簡単に作れる方法はありますか?
栗原:常備菜を作っておくモチベーションがあるのが一番いいんですけどね。五目ひじきのような日持ちするものを休みの日に作っておくのが本当は理想的なんですけど、なかなか毎週そういうわけにもいかないでしょう。
そんなときは「和えるだけのおかず」を考えておくといいですよ。ツナ缶と何かを和えるだけでも十分に副菜になるし、火も使わずに作れます。
さらに「お弁当に入れる分だけの量を作ればいい」と思えばいいのではないでしょうか。
例えばきゅうりとツナの和え物を作るにも、“お弁当にいれる分だけ”なので、きゅうりをまるまる1本千切りにしなくてもいいんです。トントントンと斜め切りしたきゅうりを3枚重ねて、さらに3回上からトントントンと切ったら9個に分かれる。するとお弁当の容量的にはもう十分なんですね、一人分だとすると。
――なるほど。せっかく作るなら多めに作っておいて晩ごはんや翌日のお弁当にも使おうと考えてしまって、一気にきゅうり一本使いきらなきゃと思っていました……。
栗原:そうそう、やらなきゃいけないというその気持ちがちょっと重いんですよね。
――このお弁当の隙間を埋めるために、ちょっとだけ作ろうというくらいで。そんなに気負わなくていいんですね(笑)。
栗原:お弁当作りはそれでいいと思うんです。あとは、普段料理をしていると野菜がちょっと余ったりするじゃないですか。その余り野菜をどうにか使おうと考えるのでもいいと思います。冷蔵庫の中がきれいになりますよ。うちは息子と僕の2人分のお弁当を作り始めてから冷蔵庫の中がだいぶすっきりしてきた気がします(笑)。
↑卵焼きは野菜を入れて彩りよく。薄めに焼くとお弁当にも使いやすいそう。
使いやすいお弁当箱の形は?
――お子さんは幼稚園の年長さんになられたということですが、子ども向けと大人向けのお弁当で気を付けている点はありますか?
栗原:小学生になるとまた変わってくるんでしょうけど、幼稚園だと「食べやすさ」には気を付けるようにしています。食べづらいと落としてしまうんですよね。千切りのきんぴらは細ければ細いほど食べるのが厳しかったり。お箸は使えるんですけど、なかなかご飯の上にのせてうまく食べられない。だから、フォークやスプーン、簡単にお箸で食べれるものがよいかなという感じはあります。
一度チャーハンを作って、パラパラにして持たせたんです。そうしたらやっぱり、スプーンで拾えなくてこぼすんですよね。幼稚園の先生からもあまりパラパラにしないでください、って言われて(笑)。そういうことなんですよね。
――お弁当箱についてもぜひ教えてください。どのようなお弁当箱が使いやすいでしょうか?
栗原:僕は1段で、ある程度深さがあるお弁当箱が使いやすいと思います。2段の弁当箱だとバラエティ感も出しづらいんですよね。
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――いっぱいおかずを用意しなきゃ…と。
栗原:はい。そして、ご飯のほうは白米だと成立しないんですよ。まぁ成立するんですけども、見た目的にたんぱくに見えてしまって(笑)。
あとは、2段弁当はそれぞれ高さが違うのですが、一般的におかずを入れる方は浅すぎてきれいにおさまりにくいと感じています。からあげは切らないと入らないですからね……それちょっとストレスなんです(笑)。なので、浅い方にご飯、深い方におかずを入れて使ったりしていますね。
――これからの季節、ピクニックや運動会など、外でお弁当を食べるシーンも増えてきます。大勢で食べるお弁当で作りやすいものはありますか?
栗原:おにぎりが定番ですよね。我が家はおいなりさんが多いですかね。前日から仕込んでおいて、当日は中身だけ作って詰めればいいので。
――お揚げの中身を混ぜご飯にしたりとアレンジもききますね!
先ほど普段のお弁当は主役を決める事が重要とのことでしたが、大勢のお弁当を作るときのコツはありますか?
栗原:みなさんの事情に適合するかわからないですが、大勢のお弁当のほうが主菜の種類が多い気がしますね。みんなが同じものを食べるわけじゃなく、各自が好きなものを選んでとる。なので、お弁当全体のバランスを考えるというよりは、一番なくなりそうなものを多めに作るという考え方ですかね。
2017年4月26日に新刊が発売!栗原心平のとっておき「パパごはん」
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――まもなく発売される新刊・『栗原心平のとっておき「パパごはん」』についてもぜひお話を聞かせてください。今回の本を出版されたきっかけは何だったのでしょうか?
栗原:講談社さんから「今実践されていることをそのまま表現してみませんか」というようなお話をいただいたんです。普段自分がやっていることが、食事の支度に悩んでいるパパや料理が初めての男性の手助けになればいいなと。
――紹介されているレシピは、チャーハン、ナポリタン、オムライス……と名前を見ただけで、グッと胃袋をつかまれるものばかりです。
このメニューのラインナップは栗原さんが普段おうちで作ってらっしゃるものばかりでしょうか?
栗原:そうですね。よく作ってますし、家の定番になりやすいメニューを選ぼう、というのが背景としてありました。
――表紙は、スキレットにハンバーグです。
栗原:やっぱりパパの料理ですからね。男っぽいのがいいかなということで、ハンバーグを表紙に選びました。
料理をする父を見て育ってきた男の人は、大人になったときに料理に対して抵抗がない方が多いですね。僕もそうでしたから。
――本のキーワードでもある「パパごはんの日」を実行する方が増えてくれるとうれしいですよね。では最後に、読者のみなさんにメッセージをお願いします!
栗原:ぜひ、本に記載のとおりに忠実にやってみてください。そうしたらまず失敗ないと思うんです。もし失敗があるとしたら、微妙な火入れの具合とか、本には書ききれないことだと思います。味に関しては塩分量などの分量を全部書いているので、失敗したらその次の理由もわかると思うんですよね。プロセスも結構細かく、写真をたくさん入れて説明していますので、どこでおかしくなったのか多分わかると思います!
そして最終的に気に入ったレシピがみつかったら、食材や味付けを変えてみたりして、自分なりにアレンジしてみてください。
代表的な料理の、代表的な作り方しか書いてないので、アレンジを入れやすいようにもなっていると思います。
――栗原さん、ありがとうございました!
栗原心平さん プロフィール
1978年生まれ。料理家・栗原はるみの長男。(株)ゆとりの空間の代表取締役専務として会社の経営に携わる一方、幼い頃から得意だった料理の腕を活かし、料理家としても活躍。全国各地のおいしい料理やお酒をヒントに、ごはんのおかずやおつまみにもなるレシピを提案している。2012年8月より料理番組『男子ごはん』(テレビ東京系列)にレギュラー出演中。
栗原心平ホームページ(ゆとりの空間オフィシャルサイト)栗原心平 公式インスタグラム(@shimpei_kurihara)