子どもが教室内カースト「D〜Fランク」に落ちた親の神対応5

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■「Fランク」まである! 今どきのスクールカースト

新年度が始まり、進級進学を迎えたお子さんを持つ親御さんは多いだろう。「新しい環境」というものに対し、期待に胸を躍らせた子どもたちがいる一方、元気をなくしてしまう子どもたちも珍しくない。実は、小学校高学年から高校生ぐらいまでは、新しい環境に少し慣れてきた今頃からゴールデンウィーク明け頃までが、1年で一番、子どもが元気をなくしてしまいがちな時期になるのだ。

今回は、
「子どもが学校に馴染めていないようだなぁ〜」
「友だち、できないのかなぁ?」
「でも、いじめというわけでもなさそうだなぁ」

と感じている「ちょっとだけ心配」という親御さんに向けてのその対処法を綴ってみよう。こうした症状に“罹患”してしまう率は中高生に多い。

思春期という自分ではコントロールできない体の変化に戸惑いを感じる時期であることがひとつ。

人の目が異様に気になりだすという気持ちの揺れがぶつかる時期であることがひとつ。

さらにここに「スクールカースト」(教室内でのヒエラルキー、序列)という逃げ場のない問題が登場する。「大人が押し付けて来た性善説」=「みんな仲良し、みんな平等」という前提について、多くの子どもたちは漠然と違和感をもっている。それがここではっきりと「性善説は間違っている」という自覚をもつようになるのである。

スクールカーストというものは、女子の一部では、早くも幼稚園時代には発生するように感じる。それは中学生になれば、ほぼ100%確率で教室内を格付けしているものだと認識している。

私は先日、ある中学校の取材をしていたが、そこの先生は驚くことを言っていた。

「今のカーストは上位、中位、低位、いじられの4段階というよりも、もっと細かく分かれていて、例えるならば大学の格付けのような感じになっています。つまりAランクからFランクまであり、さらにその中でも細分化されているという状態ですね。AからCまでは言うなれば、プロスポーツチームの1軍から3軍って例えればわかりやすいでしょうか。Dランクはいじめられっ子になる率が高く、E以下になると存在すら意識の外に置かれるというポジションになります」

■4〜5月が教室内「カースト決定」の時期

この序列は「こと細やかに画一的な集団行動を押し付ける」というわが国の教育制度により一層、強固なものにされていると私は思う。

こうした格付けに対して、どこの位置に所属認定がされようとも全く意に介さないというお子さんは除外である。それはそれで、とても賢明な生き方なのだ。

しかし、問題はこの格付けに「強烈な違和感」を持つケースだ。

大昔からどの国でも、どの学校でもあるものだと言われれば、そのとおりかもしれない。ただ、今の子どもたちが昔よりも可哀そうだなぁと思うのはSNSなどの発達で、24時間、そうした格付けされた世界から抜け出すことができないことだ。ネットの普及は、子どもたちを逆説的に、あまりにも狭い「リアル空間」に閉じ込めてしまっている。

一般的には4月から5月までがポジション取りの季節であり、つまりは「カースト決定」を意味するのであるが、これは恐ろしいことに1年間はほぼその位置で固定化される。よほどのことが起こらない限り、下克上のような動きはなく、しかも気を抜くと下がるというリスクを常に抱えているのだ。

格付け社会からリタイアしてしまった自称「大人」から見れば、「実にくだらない」であるとか「他人からどう見られるかで行動するな!」であるとか、「空気を読んで行動することに意味があるのか?」といった感想になりがちではある。

しかし、「学校からのリタイア」について「人生詰んだ」という発想でとらえる親子は少なくない。そうした家庭環境である場合、子どもたちは行くも戻るもままならず、その生きづらさに悶々としているのである。

この時期、元気をなくしてしまった子どもたちの多くは「教室内のポジション取り」に失敗してしまった、あるいは決まったキャラクターを演じることが苦痛という理由で凹んでいるのだと思われる。

これは哀しいことに親にどうこうできる問題ではないが、わが子の日常では、上記のような凄まじいポジション争いが繰り広げられているのかもしれないと認識できていれば、わが子への接し方にも違いが出てくる。

親としては、新しい環境はストレスフルである、ということ理解した上で、淡々と日常生活のサポートをしてあげることが一番なのだ。

特に子どもと接する時間が長くなりやすい母親がこのポイントを誤ると、子どもの自尊心を低下させ、対人恐怖の度合いを一気に押し上げてしまう。以下、接し方のポイントを挙げてみよう。

■即効チャージ!新年度、元気をなくした子の親の心得5

【元気をなくしてしまった子への賢い対処法1】
子どもには詰問しない

子どもは親が自分のプライバシーにうるさく口を挟むことを嫌う。中学生(あるいは小学校高学年以上)ともなれば、親離れに向かう時期で「ほっといてほしい」ということが一番の望みになりやすいのだ。

ただし、子どもは「ワガママな自己中」であるので、指示命令を一切せず、自分がしゃべりたい時にだけ黙って聞いてくれる親を求めている。

心配のあまり詰問しがちであるが、ここは「親のスッキリ」よりも子どもの「スッキリ」を優先させよう。子どもが「親に話してもいいかなぁ」と気持ちを委ねることができる環境作りをまずは目指すべきである。

【元気をなくしてしまった子への賢い対処法2】
生活習慣を乱さないように努める

朝はきちんと起こし、食事を用意し、身支度を整え、清潔な暮らしをさせる。そうした生活リズムを崩さないようにすることもかなり大切になる。特に中学生以上の子どもの睡眠時間確保については難しくなっているが、日々のリズムを乱さないように努めたい。

【元気をなくしてしまった子への賢い対処法3】
家庭はチャージ機能だということを心する

「男は敷居を跨げば七人の敵あり」とはよく聞く話だが、きょうびは子どもでも疲れ切って自宅に戻ってくる場合がある。その時に「ホッ」とできる空間を用意してあげられるのは、特に母親なのだ。

家族との団欒タイムやくつろげる空間作りは子どもの元気をチャージする。できれば、そこで「笑い」の要素を意識すると、子どもの元気も満タンになりやすい。

■「あったかい飯を食わせ、あったかい布団に寝かせる」

【元気をなくしてしまった子への賢い対処法4】
子どもの話に共感する

子どもが元気をなくしている理由を話してくれたのならば、そのときは無条件に「肯定」あるのみだ。親とは生きている時代が違うので、ほとんどのアドバイスは役には立たない。ただ、ひたすら話を聞いて、「そうか、そうか」と相槌を打つだけで子どもは自分の頭を整理し、明日への活力を自ら生み出していく。

【元気をなくしてしまった子への賢い対処法5】
友だち100人説を否定する

母親にありがちなのだが、子どものためと思い、クラスメートの母親に「ウチの子をハブにしないでね」と頼んだり、「ウチの子も誘ってくれるようにお宅のお子さんに言ってください」などと裏工作をしたりしてはいけない。子どもには子どもの世界があるし、幼稚園児ではないのだから親が子どもの交友関係を支配してはならない。

もし、言うとすれば「友だちなんか要らなくない? 私(母)もそう言えば友だちなんていないわ」と笑い飛ばすか「友だちは作るものではなく、できるもの。自然体、自然体」くらいで留める。そのほうがお互いに負担が少なく、悠然としている母親の元には、やがては自分自身の力で物事を解決できる子が育つのだ。

一方、父親の場合、なかなか子どもと接する時間をつくれないという場合もあるだろう。

子どもにとっての大問題は親にとっても憂うものではあるが、もし父親が家族をリードする立場であるならば、必要以上に騒ぎ立ててはいけない。もし、妻が子どものことでいっぱいいっぱいになっているなら、妻の話に耳を傾け「俺たちの子だから、大丈夫」と安心させよう。そして「わが家の危機」を回避するために、父親こそができる限り子どもと食卓を共にしよう。

筆者のお勧めは、「うなぎパイ」のキャッチコピーと同じく「夜のお菓子」を父が土産に買って帰ることだ。お菓子でも、スイーツでもいい。団欒のひととき、説教も小言も抜きで家族でくつろぐ。これが意外と効くのである。

親は子育てでは気を揉むことしかできないのではあるが、まずは「あったかい飯を食わせ、あったかい布団に寝かせる」。これだけでも大抵の問題は乗り越えられるように感じる。子どもが大変な4〜5月は親も頑張り時だからね! というエールを送ろう。

( エッセイスト、教育・子育てアドバイザー 鳥居りんこ=文)