ミムラ、休業の真相 “空白の2年間”を激白
映画『彼らが本気で編むときは、』で子供を置いて家出をしてしまう母親を演じ、新境地に挑んだ女優のミムラ(32)。近年、ますます精力的な活動を見せる彼女だが、一度は自分の未熟さから芝居の世界を離れたいと思った時期もあったという。当時、いきなり月9で主演デビューというプレッシャーの中、撮影現場で抱いた違和感とは? 今だから語れる「約2年間の休業」の真相、そして再出発を決意した気持ちの変化を赤裸々に語った。
2003年、フジテレビ系の月9ドラマ「ビギナー」で主演に大抜てきされたミムラ。演技経験のなかった彼女は当時、自分の置かれた状況をのみ込めずに苦しんでいた。「自分より上手な女優さんがたくさんいるのに、わたしなんかがなぜ、こんな大きな席にいるんだろう……業界のイロハもわからず、当時はものすごく違和感があって、ずっと『誰かのカバン持ちがしたい』(演技の現場を別角度から見て勉強したい)と思っていた」と述懐する。
「演技はもとより、ちょっとした写真撮影も、インタビューの受け答えも、全てがダメで。自分が本当にこの仕事をできる人なのか、一度問いただしたいと思い、(事務所の)社長に『辞めさせてください』と伝えたんです」と当時を振り返る。ところが社長は「演技は好きなんでしょ? たぶん戻ってくると思うから休んでおいで」とミムラの席を空けながら、そっと背中を押してくれたという。
そして2006年末、女優活動を休業。映画や芝居を観たり、本を読んだり、一人旅も経験。その中であることに気付いたという。「わたしの場合、いきなり“内側”からお芝居に惚れたけど、休業して“外側”から惚れることができた。お客さんの視点から観ると『お芝居ってこんなに面白いんだ』ということがあらためてわかった」と声を弾ませる。「あんなに幸せな場所を用意していただいていたのに、何を怖がっていたんだろう」。そう思えるようになったミムラは、再デビューのつもりで一から出直したという。「あの頃の葛藤や経験が本当に役に立っている。こんなにお芝居が好きな人はいないだろうっていうくらい、今はお芝居が好き」。
そんな、ノリに乗っているミムラの最新作が『かもめ食堂』『めがね』などで知られる荻上直子監督が自ら“第二章”と銘打つ渾身の一作。セクシャルマイノリティーに対する日本の変わらぬ現実、そして、母子が織り成すそれぞれの愛のカタチを描いている。生田斗真がトランスジェンダーの女性を演じることでも話題の本作で、ミムラは娘のことを大事にしたいと思いつつも、自身が母親との関係をうまく築けなかったことで、子供の愛し方がわからず悩むシングルマザーをリアルに演じ切った。
「ヒロミは自分自身のことすらわかっていない女性。だから、わたしがヒロミという人間を把握してしまってはいけないんだなと。それに気付いたときに『どうしよう』と戸惑いもありましたが、同時にやりがいも感じました」と役者魂を見せる。「ふわぁっとした居心地のいい荻上監督の世界にヒロミのような人間がどう収まるのか荻上作品ファンとして少し不安でしたが、完成作品を観て荻上さんがおっしゃっていた“第二章”の意味がわかりました」と納得の表情を見せた。(取材・文:坂田正樹)
映画『彼らが本気で編むときは、』は公開中