「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「晴れ」、「晴天」「快晴」の「晴」。三寒四温をくりかえすこの季節。立春を過ぎても、見上げる空には冴え渡る冬晴れが広がります。



「晴」という字は日へんに「青」と書きます。

「日」は太陽を意味する象形文字。

一方の「青」という字の古い字体は、音を表す「生」という字の下に、「丹精をこめる」「丹念に行う」の「丹」という字を書きます。

この「丹」という字は、井戸の中に石がある様子を描いた形。

かつて、色の原料となる鉱物は井戸から取り出していましたが、ここでは「青丹(あおに)」と呼ばれる青い鉱物を意味しています。

太陽と青い色を示す二つの文字を組み合わせた「晴」という漢字は、澄み切った青空に太陽が見える様子を表すようになったのです。

春の気配がかすかにまじる、冬の終わりを予感させる朝。

縮こまった身体をゆったりと伸ばしながら、いにしえの人は夜明けの空を見上げます。

霧が広がっていたら晴れ、足元に霜が下りていればなお確実。

太陽の光をいち早く感じとる雀たちのさえずり。

大きな蜘蛛の巣に光る朝露。

完璧な晴れの知らせを受け取ったその人は、今日の予定を組み立てます。

苗床づくりに、農具の点検。

合間をぬって子どもと遊び、両親を連れて山菜を積みに出かけよう。

晴れ晴れとした心が、充実した一日のはじまりを告げています。

ではここで、もう一度「晴」という字を感じてみてください。

やがて来る春の空は、霞がかった潤いのある空。

刷毛で薄く描いたようなやわらかな雲もうるんで見えます。

最近は、花粉や黄砂のまじった、憂いの空ともいえそうです。

冬の季語である「冬晴れ」の空は、乾ききった雲ひとつない空。

くっきりとすがすがしい青が広がります。

心の中に広がる空は、できればそんな空がいい。

生命が誕生する以前の、太古の空そのままの青さを抱き、曇りのない整った心で生きてゆく。

そこで、冬晴れの日に出会ったら、空を見上げて深呼吸。

嵐も豪雨も厳しい暑さも、平常心で受け止めることができるよう、まじりけのないその青を、胸いっぱいに取り込んでおくとしましょうか。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。

その想いを受けとって、感じてみたら……、

ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献

『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)

『気象予報士・蓬莱さんのへぇ〜がいっぱい! クレヨン天気ずかん』(蓬莱大介/著 主婦と生活社)

2月18日の放送では「駆」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。

<番組概要>

番組名:「感じて、漢字の世界」

放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット

放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)

パーソナリティ:山根基世

番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/



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聴取期限 2017年2月18日 AM 4:59 まで

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