「じぶん銀行」が大幅改定、auユーザーにとっては『改悪』に:週刊モバイル通信 石野純也
KDDIと三菱東京UFJ銀行が共同で設立した「じぶん銀行」のサービスが、大きく変わりました。特にauユーザーでじぶん銀行を使ってきたユーザーに対しては、"改悪"とも受け取られかねない内容なだけに、口座を持っている人は注目しておく必要がありそうです。
他行宛ての振込手数料が4回まで無料(三菱東京UFJは回数無制限)、ATM利用料が無制限無料というもので、これだけの特典を用意していたネット銀行は、なかなかほかに見当たりません。ATMを多用するユーザーであれば、auの携帯電話代の"元"も取れるほどで、使わないのはもったいないと思える銀行でした。
ATM利用料無料や他行宛ての振込無料といった特典が廃止に
この手厚すぎる特典の廃止が発表されたのが、7月のこと。代わりに用意されたのが、全ユーザー対象の「じぶんプラス」というステージ制の優遇制度で、11月13日から開始になっています。もちろんauユーザーにはプラスαでの特典もあり、これが発表されたのが、サービス改定の直前である11月11日になります。新たな特典は、KDDIが戦略として打ち出している「au STAR」と連携します。
auユーザーなら申し込まなきゃ損?「au STAR」本日開始──特典付きの無料会員制プログラム
少々複雑ですが、基本的にはau WALLETなどにチャージできる「WALLETポイント」での還元と考えておけば、間違いはありません。au STARはauの契約年数に応じた還元を受けられる仕組みですが、この考え方はじぶん銀行との連携でもそのまま受け継がれています。もらえるポイントは契約年数とステージのマトリックスで決まります。以下の表が、そのポイント数です。
原則として、契約年数が長ければ長いほど、また、じぶん銀行をヘビーに使っていればいるほど、もらえるポイントが多くなります。最大のポイントは月200で、これは200円相当として使えます。年間だと、2400円分の還元を受けられるというわけです。超低金利どころかマイナス金利の現状を考えると、これだけもらえれば御の字といったところでしょうか。
ただ、契約年数が経っていないともらえるポイントが一気に少なくなる上に、縦軸の条件も意外と厳しく、すべてのポイントが付与される人は非常に少なくなりそうです。
無料の振込回数や、ATMの利用手数料に関しては、じぶんプラスで付与される形ですが、こちらもややハードルが高めです。特に、ステージ4以上に行こうとすると、じぶん銀行を相当使いこなしていなければなりません。
一例を挙げると、ステージ4になる条件として記載されているのが、50万円以上、100万円未満の預金で、なおかつクレジットカードの引き落としなどがあること。これなら、普通に使っていればクリアできそうですが、ステージ5となるとそのハードルはさらに上がり、300万円以上の預金が必要になります。
au以外のユーザーが対象になる「じぶんプラス」
さすがにそこまで預けられないという人には、緩和された条件もありますが、これも100万円以上の預金があった上で外貨預金などが10万円分以上あるか、住宅ローンを組んでいる必要があり、該当するユーザーは少なくなりそうです。
ステージ4で振込手数料無料回数が月3回、ATM利用手数料が月8回、ステージ5で振込手数料無料回数が月5回、ATM利用手数料無料が月11回になりますが、「プレミアムバンク for au」を部分的に超えるのは、最高位であるステージ5だけ。少なくともauユーザーにとっては、かなり条件が厳しくなったと断言できます。
ステージ判定の条件
一方で釈然としないのは、やはりauユーザーでしょう。他キャリアユーザー向けの特典を強化するのは分かりますが、逆にauユーザー向けの特典は同等以下になってしまったからです。他キャリアユーザーを獲得するための犠牲になったというと大げさかもしれませんが、よくなったと評価できる人は少ないはずです。
そもそも、じぶん銀行は「プレミアムバンク for au」の特典を、過去に1度改悪しています。元々は振込手数料も無制限で無料だったところを、月4回に減らしています。これでは、「釣った魚に餌を与えない」と言われても、しかたがないと思います。
auは、会社の戦略として「ライフデザイン」を掲げており、通信以外の領域に積極的に進出しています。通信とのシナジー効果も見込める分野として、金融や保険などに手を広げており、これをビジネスの核に育てていこうとしているのです。じぶん銀行の住宅ローンもこうした戦略の下で始まったもので、その金利の安さや、通信料への還元施策が話題を集めました。
金融事業は、auのライフデザインを支える中心的な存在
その中核になっているじぶん銀行の方針がブレているのは、大きな問題と言えるでしょう。しかも、「プレミアムバンク for au」が始まってから、まだそこまで時間も経っていません。
短期間で、しかもシナジー効果が減る方向に大きく転換したのです。筆者もauユーザーでかつじぶん銀行を愛用していましたが、今回の一件で、auが金融事業に本気で取り組んでいるのか、疑問に思いまいた。銀行は、ユーザーの大切な資産を預かる機関で、社会的な責任も小さくありません。通信会社ならではのスピード感が必要なことも分かりますが、もっと腰を据えてサービスを打ち出してほしいと感じました。
サービスが大きく改定、手厚すぎる特典を廃止
大きく変わったのが、「au ID」との連携部分。元々じぶん銀行は、「プレミアムバンク for au」として、auユーザーに手厚い優遇を提供していました。ATM利用料無料や他行宛ての振込無料といった特典が廃止に
この手厚すぎる特典の廃止が発表されたのが、7月のこと。代わりに用意されたのが、全ユーザー対象の「じぶんプラス」というステージ制の優遇制度で、11月13日から開始になっています。もちろんauユーザーにはプラスαでの特典もあり、これが発表されたのが、サービス改定の直前である11月11日になります。新たな特典は、KDDIが戦略として打ち出している「au STAR」と連携します。
auユーザーなら申し込まなきゃ損?「au STAR」本日開始──特典付きの無料会員制プログラム
au STARユーザにWALLETポイントで還元するが...
では、au STARに登録しているユーザーには、どのようなメリットがあるのでしょうか。少々複雑ですが、基本的にはau WALLETなどにチャージできる「WALLETポイント」での還元と考えておけば、間違いはありません。au STARはauの契約年数に応じた還元を受けられる仕組みですが、この考え方はじぶん銀行との連携でもそのまま受け継がれています。もらえるポイントは契約年数とステージのマトリックスで決まります。以下の表が、そのポイント数です。
原則として、契約年数が長ければ長いほど、また、じぶん銀行をヘビーに使っていればいるほど、もらえるポイントが多くなります。最大のポイントは月200で、これは200円相当として使えます。年間だと、2400円分の還元を受けられるというわけです。超低金利どころかマイナス金利の現状を考えると、これだけもらえれば御の字といったところでしょうか。
ただ、契約年数が経っていないともらえるポイントが一気に少なくなる上に、縦軸の条件も意外と厳しく、すべてのポイントが付与される人は非常に少なくなりそうです。
auユーザーのためのサービスではなくなった
これでは、auユーザーであれば誰もが受けられていた「プレミアムバンク for au」からは、サービス内容が大きく後退したと受け止められても、しかたがないでしょう。ATM利用回数やどこの銀行に振り込むかにも左右されますが、「プレミアムバンク for au」であれば、数百円から場合によっては1000円を超える還元になっていたからです。無料の振込回数や、ATMの利用手数料に関しては、じぶんプラスで付与される形ですが、こちらもややハードルが高めです。特に、ステージ4以上に行こうとすると、じぶん銀行を相当使いこなしていなければなりません。
一例を挙げると、ステージ4になる条件として記載されているのが、50万円以上、100万円未満の預金で、なおかつクレジットカードの引き落としなどがあること。これなら、普通に使っていればクリアできそうですが、ステージ5となるとそのハードルはさらに上がり、300万円以上の預金が必要になります。
au以外のユーザーが対象になる「じぶんプラス」
さすがにそこまで預けられないという人には、緩和された条件もありますが、これも100万円以上の預金があった上で外貨預金などが10万円分以上あるか、住宅ローンを組んでいる必要があり、該当するユーザーは少なくなりそうです。
ステージ4で振込手数料無料回数が月3回、ATM利用手数料が月8回、ステージ5で振込手数料無料回数が月5回、ATM利用手数料無料が月11回になりますが、「プレミアムバンク for au」を部分的に超えるのは、最高位であるステージ5だけ。少なくともauユーザーにとっては、かなり条件が厳しくなったと断言できます。
ステージ判定の条件
独り立ちした銀行になろうとしている?
もっとも、auユーザー以外にとっては、特典が強化されたことにもなります。これまでの「プレミアムバンク for au」は文字通りauユーザーのためのサービスで、他キャリアのユーザーがじぶん銀行に口座を持つメリットが、ほとんどありませんでした。auユーザーとそれ以外のユーザーの差が激しすぎたのです。
今回始まったじぶんプラスを見ると、他のネットバンクに勝るとも劣らない内容になっており、他キャリアのユーザーを積極的に取り込んでいこうとするじぶん銀行の姿勢が垣間見えます。
一方で釈然としないのは、やはりauユーザーでしょう。他キャリアユーザー向けの特典を強化するのは分かりますが、逆にauユーザー向けの特典は同等以下になってしまったからです。他キャリアユーザーを獲得するための犠牲になったというと大げさかもしれませんが、よくなったと評価できる人は少ないはずです。
そもそも、じぶん銀行は「プレミアムバンク for au」の特典を、過去に1度改悪しています。元々は振込手数料も無制限で無料だったところを、月4回に減らしています。これでは、「釣った魚に餌を与えない」と言われても、しかたがないと思います。
auは、会社の戦略として「ライフデザイン」を掲げており、通信以外の領域に積極的に進出しています。通信とのシナジー効果も見込める分野として、金融や保険などに手を広げており、これをビジネスの核に育てていこうとしているのです。じぶん銀行の住宅ローンもこうした戦略の下で始まったもので、その金利の安さや、通信料への還元施策が話題を集めました。
金融事業は、auのライフデザインを支える中心的な存在
その中核になっているじぶん銀行の方針がブレているのは、大きな問題と言えるでしょう。しかも、「プレミアムバンク for au」が始まってから、まだそこまで時間も経っていません。
短期間で、しかもシナジー効果が減る方向に大きく転換したのです。筆者もauユーザーでかつじぶん銀行を愛用していましたが、今回の一件で、auが金融事業に本気で取り組んでいるのか、疑問に思いまいた。銀行は、ユーザーの大切な資産を預かる機関で、社会的な責任も小さくありません。通信会社ならではのスピード感が必要なことも分かりますが、もっと腰を据えてサービスを打ち出してほしいと感じました。