電車つり革「○」「△」どちらが多い? 採用分布に「地域差」も
「○」と「△」の2種類に大きく分けられる、つり革のつり手。どちらを採用するかは、地域差があるようです。またそれぞれ、どのようなメリットがあるのでしょうか。
「△」が増加中 「○」は…?
電車のつり革には、つり手が丸いもの、三角形や、三角形に近い五角形のもの、さらには細長い二等辺三角形のものなど、いろいろな形があります。
しかしながら、大まかに分ければ「○」と「△」の2種類といえるでしょう。実際にはどちらが多く、どんな使い分けがあるのでしょうか。
「△」を採用する、東京メトロ南北線9000系リニューアル車のつり革(2016年8月、恵 知仁撮影)。
関西のつり革部材メーカーである三上化工材(大阪市西淀川区)は、「過去4年の出荷実績数では、全体の75%近くが『○』」といいます。一方で、関東に拠点を置く別のメーカーでは「最近の新車はほとんど『△』という認識」だそうです。
三上化工材は、「弊社がつり手の製造販売を始めた1955(昭和30)年ごろは丸形が標準で、バリエーションがあまりなかったのですが、現在では西日本地区に丸形、東日本地区に三角形、五角形が多い傾向にあります」とコメント。関東のメーカーも同様に、現在は西日本と東日本で地域差が見られるといいます。
両社の発言を鑑みるに、「○」は標準形で数が多いものの、新しい電車に「△」が増えていることがわかります。たとえば、東西のJRにおける新しい通勤形電車を比較すると、山手線の新型車両E235系電車や、首都圏で導入されているE231系電車は「△」です。対して、大阪環状線の323系電車や、関西で導入されている225系電車には「◯」が採用されています。
「握りやすさ」だけじゃない 選ばれるポイントとは?
「○」「△」の違いは、形だけではありません。「○」のつり手は、輪にしたベルトの先に取り付けられ、線路のレールと平行になります。一方、「△」はつり手上端の取り付け部分でベルトとつながり、枕木方向(レールと直角)に取り付けることが可能。水平な「△」の下辺部分を、窓と向かい合って立った人が、4本の指に力をかけて握ることができます。
三上化工材のカタログにあるつり手の標準品例。「○」にも幅や大きさが異なるものがある(画像出典:三上化工材)。
関東のつり手部材メーカーは、「『△』のほうが握りやすいという声がある」といい、関西の三上化工材は「『△』は、密集して取り付けた際に、つり手どうしが衝突しにくい」などのメリットも説明。つり手がレールと平行になる「○」は直径分の幅がありますが、枕木方向になる「△」は幅が抑えられます。
一方の「◯」。握る箇所が湾曲しており、「△」と比べると握ったときの安定感は劣るものの、「とっさにつかみやすく、顔や頭に当たったとき三角形や五角形に比べて衝撃が少ない」(三上化工材)そうです。「輪を回せるので、直近の人がつかんでいなかったところをつかむことができる」(関東のつり手部材メーカー)など、乗客にとっての“自由度”は「△」よりも高いといえます。
「○」と「△」、それぞれにある特長。また鉄道事業者によってデザインへの考え方も違うことから、両メーカーとも「採用の決め手は一概にはいえない」そうです。
【写真】東京と大阪、JR最新車両のつり革
上は山手線の新型車両E235系電車、下は大阪環状線の新型車両323系電車の車内。前者は全て「△」、後者は全て「○」(写真出典:JR東日本、JR西日本)。