都立城東vs東亜学園
サヨナラ打を打った両角亮主将（都立城東）
夏の東東京大会では準優勝の東亜学園と、ベスト4の都立城東が、いきなり激突した。試合は予想通りの接戦になったが、やや乱戦模様の展開になった。
江戸川区球場は、江東区の城東にとってはいわばホーム。スタンドには、大勢の応援のファンが詰めかけた。東亜学園の先発は、夏の決勝戦でも先発した左腕の藤下 凌也。都立城東はエースの小林甲汰が本来の調子でないこともあり、先発は背番号10、身長164センチ、体重54キロと小柄な左腕の皆川友汰であった。
1回表東亜学園は二塁打の1番佐藤文哉が三塁に進み、3番橋本翔琉の三ゴロで、本塁を突く。タイミングはアウトであったが、捕手・両角亮の落球もあり、1点を先取する。橋本は盗塁で二塁に進み、5番島田一輝の右前安打で生還し、初回に2点を入れる。
都立城東は3回裏に1番佐藤良祐の四球を足掛かりに、1点を返したものの、4回、5回と東亜学園が1点ずつを入れ、試合は東亜学園のペース。序盤硬さがあった東亜学園の藤下は、徐々に本来のペースを取り戻し、球に勢いが出てきた。ところが6回裏、突如崩れる。
この回先頭の4番茂木郁己の中前安打、5番田中純平の二塁打で二、三塁とし、6番宮坂隆吾の遊ゴロの間に1点。続く7番両角亮の中飛を東亜学園の中堅手、主将の御代川弘哉が好捕するも犠飛となり、さらに1点を返したものの、二死になった。しかしここで、三者連続四球で満塁となり、2番河合和也の二ゴロが、ベースカーバーに入った藤下への送球が悪く、その間2人が還り、都立城東は逆転に成功する。さらに押し出しで1点を追加し、この回一挙5点を入れた。
都立城東は7回からエースの小林が登板する。球威は確かにエースの方がある。ただし荒れ気味で8回表には安打1本と2四球で無死満塁のピンチ。ここで小林は三者連続三振でピンチを逃げ切る。捕手の両角は、「（小林は）ストレートが走っていましたし、ストレートを打たれても仕方ないという思いもありました」と語る。
先発・藤下凌也（東亜学園）
ところが9回表は、東亜学園の8番、この回先頭の村松拓海が振り逃げの三振で出塁すると、続く9番、2番手で投げていた福田拓海に代わる代打上西拓真が四球、1番佐藤文の犠打で一死二、三塁とすると、2番御代川への3球目を捕逸して1点。さらに御代川の右前安打で、同点に追いつく。
けれども都立城東の池上 茂監督は、「相手の投手に代打を出していましたから、同点なら、いいと思っていました」と語る。実際東亜学園は9回のマウンドに、3番手の高野駿を送る。先発の藤下、2番手の福田に比べ、高野の経験不足は否めない。
9回裏この回先頭の6番宮坂が出塁すると、打席には7番で主将の両角が立つ。両角は当然走者を進めるべくバントの構えだが、東亜学園の一塁手が猛烈にダッシュする。それをみて両角は強打に切り替える。しかし打球はセンターに打ちあがった感じになった。両角が「やっちゃったと思いました」と語る打球は意外に伸びて、センターの頭を越えて、宮坂は一気にホームイン。都立城東はサヨナラ勝ちを収めた。
「相手の内野のダッシュをみて、バントの方が、リスクがあると思いました。打った球は、たぶんストレートだと思います」と両角は語る。選手の自主的な判断を重んじる城東らしい、のびのびとした姿勢が生んだサヨナラ打であった。
池上監督は、野村克也氏の言葉を引用しながら、「勝ちに不思議の勝ちあり、と言った感じの試合でした」と語る。それでも、ピンチを最少失点で乗り切り、8回などの無死満塁では三者三振に切り抜ける底力があればこその勝利であった。実質的に、自ら主将を買って出るほど積極的な両角のサヨナラ打は、チームに勢いを生む可能性が十分にある。
東亜学園も先発・藤下、2番手・福田とも、夏を経験しているだけあり球に力があった。ただし藤下は6回投げて四死球7。チームの失策も4出ている。これではなかなか勝利は呼び込めない。逆に都立城東の皆川は6回を投げて、不安定そうに見えながら、四球を1個も出していなかった。その差が大きかった。両チームとも力はあるだけに、都立城東は2回戦に向けて、東亜学園は春に向けて、より締まったチームに成長することを期待したい。
（文＝大島 裕史）
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