常総学院vs土浦湖北
優勝候補の常総学院が辛勝したゲームだ。ノーシードで前評判も高くない土浦湖北なら勝って当然という空気が球場全体にあったが、序盤の走塁を見たら難敵だとすぐにわかった。1回、2番中里亮太(2年)が三塁ゴロで一塁到達3.88秒、3回に9番鈴木峻斗(2年)がバント安打で4.08秒。4回には6番宮津宏輔(2年)が左中間に二塁打を放ち、二塁到達が7.96秒。5回以降も私が俊足の目安にしている各塁到達タイムを2回計測し、計4人が5回も同タイムをクリアしているのだ。
弱いチームでは私の俊足基準「打者走者の一塁到達4.3秒未満、二塁到達8.3秒未満、三塁到達12秒未満」を3人以上がクリアすることはまずない。一定の“野球力”が備わっているかどうか、これ以上の目安はないと思っている。
しかし、高いレベルの野球力を備えている土浦湖北でも常総学院の先発、鈴木 昭汰(3年)を攻略することはできなかった。選抜以降、鈴木は調子を落としていた。夏に間に合うかどうか不安視する声も耳に入ったが杞憂だったということだ。
1回裏はストレートが14球中13球、2回は13球中11球、3回は18球中15球、4回は18球中15球……実に4回まで7割がストレートという力の投球で土浦湖北打線に対し、被安打3、奪三振7という成績でしのいだ。
球速は130キロ台が多かったが、打者手元での伸びが違う。3回裏にはヒット、エラー、バント安打で無死満塁の局面を迎えるが、1番小野佳祐(3年)を空振り三振、2番中里をキャッチャーファールフライ、3番吉田 託夢(3年)をセンターフライに打ち取って難なくピンチを切り抜ける。
ストレートだけがよかったからストレートを投げていたわけではない。縦・横2種類のスライダーは打者近くで鋭く曲がって落ち、打者のストレート狙いを難しくしていた。このレベルの左腕は全国的に見ても多くない。
打線は8安打、2得点を見れば例年のような破壊力はないと思いがちだが、タレント揃いだ。とくに、1番陶山 勇軌(2年)、3番中村 迅(3年)、4番宮里 豊汰(2年)はスイングの強さと打球の強さで際立った。捕手の清水 風馬(3年)はイニング間の二塁送球で2回1.9秒台(ともに1.95秒)を計測し、土浦湖北の機動力を実戦以前に封じた。
先制機が訪れたのは4回表。常総学院のクリーンアップ、中村、宮里が連打で無死一、三塁のチャンスを作り、5番花輪 直輝(3年)がライト前にタイムリーを放ち先制。7回は一死、二、三塁から9番打者のスクイズで加点。4回は得点後も一死二、三塁、7回は二死一、三塁のチャンスが続くが後続が土浦湖北の技巧派左腕、吉田の緻密なコントロールに翻弄されたと言っていい。
個人技の常総学院に土浦湖北はチームが一丸となって対抗したという試合。見ごたえ十分で夏の暑さが全然気にならなかった。
(文=小関 順二)
注目記事・第98回全国高等学校野球選手権大会 特設ページ