帝京長岡高等学校 バンゴーゼムゲレック 高投手【後編】「ケガを成長のきっかけに 最後の夏は勝ち切れる投手へ」

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 前編ではバンゴーゼムゲレック 高投手が野球を始めたきっかけと、2年夏までの軌跡を描きました。後編ではケガを乗り越え、最後の夏へ向けてどんなピッチングを見せていきたいかを語っていただきました。

夏休みに大けがを負うも それが転機に

バンゴーゼムゲレック 高投手(帝京長岡高等学校)

 だが、好事魔多し。今まで以上に精力的に練習した結果、夏休みに大きなケガを負ってしまう。そのケガの影響で、新チームで臨む秋の大会には出場することができなかった。

「夏休みに腰を痛めたんです。病院へ行くと『疲労骨折の一歩手前』って言われて、練習しすぎたのかなとか、体が成長しているからなのかとかいろいろ考えました。正直、かなり焦っていました」(バンゴーゼムゲレック 高)。

 その一方で、このケガによって自身を見直すいいきっかけにもなったという。「昨秋〜冬にかけてこのままではだめだと思って、食事を今まで以上に増やしました。休み時間とか部活の合間にとにかく食べてました。部活が終わった後もしっかり食べて、プロテインで栄養を補給したり。一食で丼2、3杯いきました。最初はつらかったですけど、徐々に慣れてきました。おかげで、ウエイトも増えましたし、体つきも変わってきたと実感しています。

 技術面では自分、テイクバックが非常に大きいので、そこをなるべく小さくしようとしてきました。テイクバックが小さいと、打者のタイミングが取りにくくなる。すぐに肘が下がってしまうので、それを矯正する意味でもテイクバックを小さくすると肘の位置を高くすることができる。試合でも長いイニング投げられるように、改良しました」(バンゴーゼムゲレック 高)。

課題となる一歩先に進める投手へ

 今年の春の大会、そこには一回り大きくなってマウンドに立つバンゴーゼムの姿があった。4回戦で強豪校・巻に自身公式戦初完投で勝ち、勢いに乗って臨んだ準々決勝で、優勝した新潟明訓に2対3で惜敗。またしてもベスト8の壁にぶつかってしまった。

「チャンスで打てなかったですね。逆に、相手にチャンスを与えて取られてしまった。自分は4番だったので余計に…。チャンスを作っているんですが、あと一本が出ない。それを乗り越えるには、やはり気持ちを集中させることが大事だと思います。とにかく悔しかったですね」(バンゴーゼムゲレック 高)。

「いいゲームはするんです。競って競って、すごくいいゲームにはなる。でも勝ちきれない。その先がないんです。ベスト8とか16の力はあると思うんです。でもその先になかなかいけない。ここって場面であと1本がでない。技術的なことよりも、メンタル・気持ちですよね。それは選手にも、散々言っているんですが、なかなか…」(中島 茂雄監督)

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バンゴーゼムゲレック 高投手(帝京長岡高等学校)

 夏の大会まであと少し。夏の大会2年連続ベスト8、さらに昨秋のベスト16、今春のベスト8を乗り越えるため、明確な課題を持って、必死に練習する帝京長岡ナイン。その中心でバンゴーゼムはどんなことを思っているのだろうか。

「夏の大会に向けて、調整は順調、いい感じです。今年のチームは、バッティングがいいです。初球からどんどん振ってくるので、自分がもし他校の選手だったら対戦したくない打線ですね。(意識しているチームは?)やはり日本文理。夏に照準を合わせてくると思うので。どこで当たってもいいように、準備はしています。

 個人としては、同学年の江村(伊吹・北越)は同じ左腕として意識しますね。やっぱりいいピッチングしてるんで。あとは、藤塚(光二郎・日本文理)と、小鷹(樹・巻)もいい投手なので、負けたくないですね。このチームで大会を勝ち抜いて、必ず甲子園へ行きます。甲子園で投げてる姿はイメージできています。夏の大会がとにかく楽しみです」(バンゴーゼムゲレック 高)。

 そして甲子園の先にあるのは、幼い頃から憧れ続けているプロのマウンドに立つこと。「やっぱりプロ野球選手になりたい。今いろいろメディアなどで注目していただいているんですけど、まだまだ足りないことの方が多くて。特に、制球力ですね。プロは甘い球は全部持っていかれると思うので。逆に自分の武器は、自信持って強気で投げられる右打者のインコースへのクロスファイアー。

 ストレートを磨くために、小さい頃から手首のトレーニングをずっと続けていて、風呂の中など日常生活でも自然とやっていますね。なるべく回転数の多いストレートを投げるように意識してます。小さい頃見ていたマンガ「Major」の主人公・茂野 吾郎みたいにストレート1本で強打者を抑えられるような選手に憧れますね」

「速い球を投げたい」という純粋な思いから始まり、菊池 雄星、茂野 吾郎ら圧倒的な球威で相手打者をねじ伏せる左腕に憧れたバンゴーゼムが、ケガなく万全な状態で迎える最後の夏。計り知れないポテンシャルを秘めたその左腕は、今夏一体どんなパフォーマンスを見せてくれるのか。豪腕がうねりあげ、帝京長岡を初の甲子園へと導く。

(取材・文=町井 敬史)

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