光泉高等学校(滋賀)【前編】

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北大津にリベンジし守り勝った春

 グラウンドはラグビー部、サッカー部、陸上部と共有でまともに使えるのは内野部分だけ。水、金曜日の球場練習を除けば満足な守備練習は行えない。しかも20時完全下校が学校の規則。強豪私学として環境面で恵まれているとは言えないが、この春に滋賀県大会6試合で3失点を喫したのは決勝のみ。「エラーらしいエラーはほとんどなかった」(古澤 和樹監督)という堅守が光り、大会を通じてわずか7失点、守り勝つ野球で初めて春の滋賀を制した。そんな光泉はどのようにして力をつけていったのだろうか。

無理なプレーはしないこと

ミーティングの様子(光泉高等学校)

 旧チームから残るレギュラーは0人で、能力面では1年前の方が上。しかし、バットを振る力、走る力が及ばなくても試合になると結果が出る不思議なチーム。初優勝の要因となった守備も、特別難しいことはしていない。古澤監督が指示したのは無理なプレーをしないこと。例えば、走者一塁でバントをされた場合に二塁がギリギリのタイミングとなる時でも、前の塁で刺しに行く必要があるのか考えよう、全員で丁寧にアウトを3つ取ろうということだ。

 バントが成功してから内野ゴロで二死三塁となっても、次打者を打ち取ればホームは踏めない、仮にそこで失点してもベンチの責任。同じような考え方の下、前進守備も終盤の勝負所でしか使わなかった。1点どうぞの守備隊形にもかかわらず相手がスクイズを空振りして三塁走者を殺せたり、前進守備では捕れなかったであろう内野と外野の中間辺りへのフライに追いつき、当然浅いフライだからタッチアップも出来ないなどの幸運にも恵まれた。

 攻撃はほぼノーサイン。前でアウトになるのはオッケー、行けると思ったらドンドン走るのが光泉の野球。3回戦の八幡戦では出塁した3人が続けざまに走るも刺され、打撃成績では凡打0ながら実質3人で攻撃を終了したこともあった。特に走ることが多いのは試合序盤。相手バッテリーに意識付けすることで後半の勝負所でプレッシャーをかけ、配球をストレート中心にする狙いがある。八幡戦での足攻めはその次の試合でも生きた。準々決勝で対戦する膳所はこの試合をビデオに撮っており、相手バッテリーは盗塁をかなり警戒。ストレートが多くなったところを狙い打ちし試合の主導権を握った。

[page_break:チームを大きく成長させた北大津戦]チームを大きく成長させた北大津戦

打撃練習の様子(光泉高等学校)

 そして、この春チームにとって大きかったのが準決勝・北大津戦での勝利。昨秋は初戦でぶつかり敗れている。内容は9回に2対2の同点に追いつき延長戦に突入。11回に2点を勝ち越すもその裏に二者連続四球から同点とされ、最後は9回からのロングリリーフとなった小傳良 創(3年)が13回に力尽きた。現3年生の学年は1年生大会でも延長戦の末に黒星を喫しており、誰もがリベンジを誓っていた。

 北大津のエース・竹村 航(3年)は滋賀県屈指の本格派右腕。この難敵を前に中学時代同じボーイズだった3番・篠田 昌吾(3年)は燃えていた。パンチ力のある打撃が持ち味だが昨秋は4打数無安打と完敗。チャンスで回ってきた打席で結果を残せず延長戦で敗れる敗因の1つにもなっていた。

 しかし春は初回にいきなり二塁打を放つ。「北大津と当たって嬉しかった。1打席目から結果を出せて良かった。ストレートもスライダーもキレが良くなって、マウンド上の仕草とかを見ても気持ちが強くなってるなと思いました」というかつてのチームメイトのストレートを捉えた。

 篠田は6回にも走者を一塁に置いた場面で再びストレートを捉え、ライト前に弾き返す。これを相手のライトが後逸すると走者は一気に生還し先制に成功。この後、広角に打つ器用さもある4番・平田 直希(3年)にも1本が出てリードを2点に広げると、投手を中心にした守りはこの日も安定しピンチは何度も作ったが強敵を完封。

 2点リードの9回は二死からファースト強襲の安打で走者を許しクリーンアップを迎えるが最後は相手の3番打者をライトフライに打ち取りゲームセット。その瞬間、「めちゃめちゃ嬉しかった」という捕手の氏家 啓志(3年)は無意識のうちに思わずガッツポーズ、ワンチャンスをものにしてようやく北大津から白星を挙げた。

 こうして大きな1勝をつかむと昨秋準優勝で今春も決勝まで勝ち上がってきた近江兄弟社を1点差で退け、初優勝を飾った。

 後編では夏の躍進のカギを握るキーマンや大会へ向けての意気込みを伺っていきます。

(取材・文/小中 翔太)

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