【鹿児島展望】春夏連続、連覇に挑む鹿児島実 阻むのはどこか?

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 この夏の鹿児島は、センバツに続く春夏連続甲子園、昨夏に続く連覇を目指す鹿児島実が優勝候補の大本命で、これを他校が追いかける構図になりそうだ。

本命は鹿児島実

鹿児島実業ナイン

 鹿児島実は夏前最後の県大会であるNHK旗を制し、この1年間、県内のチームに公式戦で負けていない。不動の4番・綿屋 樹(3年<インタビュー>)を中心に、昨夏を経験した板越 夕桂(3年)、追立 壮輝(3年)ら力のある打者がそろっている。綿屋以外の打順は相手投手によって組み替えることができる柔軟な対応力があり、選手層が厚い。

 センバツ以降、投手陣の核をになう丸山 拓也(3年)、谷村 拓哉(3年)が故障、バッテリーを組む井戸田 貴也(3年)も死球を受けて戦列を離れる苦しい台所事情だったが、NHK旗では背番号11の泰 厚志(3年)が好投。捕手には外野から中村 天(3年)を回し、大島、れいめい、樟南と夏も優勝争いのライバルになりそうな強豪を下して優勝した。6月の組み合わせ抽選会で第1シードに選出されることはほぼ間違いないだろう。5年前、センバツで8強入りしながら夏準決勝で敗れた苦い経験があり、宮下 正一監督が指揮してから未だ達成していない春夏連続への意気込みは並々ならぬものがあるだろう。

「対抗馬」一番手は樟南、神村学園

浜屋 将太(樟南)

 これを追いかける対抗馬の一番手には樟南と神村学園を挙げたい。樟南はエースバッテリーの浜屋 将太(3年)、前川 大成(3年)を筆頭に、今田 塊都(3年)、大澤 大樹(3年)ら前チームから主力だった経験豊富なメンバーがそろう。左腕・浜屋は130キロ台の直球にキレのあるスライダー、チェンジアップを駆使し、毎試合2桁奪三振をとる安定感は県内トップクラス。バッテリーや守備の安定感に比べて打力が今一つといわれていたが、河野 勝丸(3年)、折尾 昂靖(2年)、吉内 匠(3年)が成長し、得点力が上がってきた。

 NHK旗では春決勝で大敗した神村学園を準決勝でリベンジし、優勝したライバル鹿児島実との決勝も1点差の惜敗だった。春、NHK旗と2大会連続準優勝とあと一歩で逃した悔しさをエネルギーに、3年ぶりの甲子園出場を目指す。

[page_break:好投手擁するれいめい、鹿児島城西、大島]

 昨秋は4回戦敗退で3年連続のセンバツ出場を逃した神村学園だったが、この春に優勝を勝ち取った快進撃ぶりは印象深い。鹿屋中央、出水中央、昨秋敗れたれいめい、南薩の宿命のライバル鹿児島城西と並みいる私学強豪を強力打線で撃破し、決勝では樟南を圧倒した。田中 梅里(3年)、島中 大輔(2年)ら勝負強い強打者がそろう打線の破壊力は、これまで常に県大会、九州大会で上位争いをしてきた過去のチームにそん色ない。

 ただし、春以降は南日本招待での帝京(東京)戦、九州大会での福岡大大濠(福岡)戦で2桁失点の大敗を喫しているのが気になるところ。NHK旗ではエース捕手で4番を担った田中 怜央那(2年)がスタメンから外れた。先発の柱として好投した内田 雅輝(3年)がベンチからも外れている。彼らが復調し、春の大会の勢いを取り戻せば、チーム力では鹿児島実にそん色ないものがあり、4年ぶりの夏も見えてくる。

好投手擁するれいめい、鹿児島城西、大島

太田 龍(れいめい)

 れいめい、鹿児島城西、大島あたりも夏はシード校に選出される可能性が高い。れいめいは太田 龍(3年<インタビュー【前編】 【後編】>)、鹿児島城西は平 将太(3年)、大島は渡 秀太(3年)、いずれも県内屈指の好投手を擁し、この1年間の県大会ではすべて8強以上の安定した成績を残した。

 れいめいは最速148キロ、プロのスカウトも注目する太田を筆頭に、リードオフマンの古賀 智司(3年)、中軸の福山 将真(3年)、堂免 大輔(3年)と強打者がそろい、個の力では鹿児島実や神村学園ともそん色ない。だが春は準々決勝で神村学園に、NHK旗は準決勝で鹿児島実に、いずれもコールド負け。ここぞという勝負所で崩れると踏ん張り切れないもろさが気になる。そこを克服することが夏を制するポイントになりそうだ。

 頂点まで「あと一歩」という意味では、鹿児島城西もここ数年、常に4強以上に顔を出しながら頂点を獲り切れないでいる。昨夏も決勝で敗れており、「この夏こそは」の意気込みは並々ならぬものがあるだろう。右腕・平の成長が著しい。球威のある直球に加えて、チェンジアップやスライダーなどの変化球の制球が安定し、投球の幅が増えた。有川 凌(3年)、井上 知也(3年)ら控え投手陣も充実し、守備が堅い。打線も1人で勝負を決められるようなスター選手はいないが、俊足巧打の花城 音弥(3年)、貞包 康貴(3年)、勝負強さがある上村 大希(2年)、戸川 太喜(3年)、寺井 勇樹(3年)と仕事ができる選手がそろっている。

[page_break:混戦の8強争い]

 大島は公立校の中で唯一強豪私学に負けない力がある。昨秋は4強入りして九州大会に出場し神埼清明(佐賀)戦で完封勝ちした。今春、NHK旗はベスト8どまりだったが、NHK旗では優勝した鹿児島実を相手に延長10回の接戦を演じた。左腕・渡は緩急の使い方を覚えた。

 勝負強い4番・上原 勇人(3年)、県内ナンバーワンショートストップの大山 竜生(3年)らがけん引し、攻守に安定感のある野球ができている。14年春の21世紀枠センバツ出場に続く鹿児島の離島から初の夏の甲子園、公立勢としては06年の鹿児島工以来10年ぶりとなる夏の甲子園出場に挑む。

混戦の8強争い

海田 真裕(加治木)

 シード8校のうち、上位6校までは前述したチームが挙がってくるだろうが、下位の第7、8シードを含めてベスト8クラスの力があるチームは多数あり、8強入りをかけた戦いは熾烈な混戦になりそうだ。

 2年前、大隅初の夏の甲子園を勝ち取った鹿屋中央は、山本 信也監督が復帰し、巻き返しを図る。上位の成績は残せていないが、昨秋は4回戦で樟南、春は3回戦で神村学園、NHK旗は準々決勝で樟南と上位クラスのチームに惜敗している。夏までに一皮むけてくれば上位を脅かす存在に間違いなくなってくるだろう。NHK旗で8強入りした尚志館、出水中央も上位争いに食い込んできそうな存在だ。昨秋8強の池田は江口 将平(3年)、駒壽 大地(3年)のバッテリーの故障などで、春以降は不本意な成績で終わっているが、個の力は高く、注目校の一つだ。

 公立勢では春4強の加治木、同8強の鶴丸あたりの奮起を期待したい。加治木は4回戦・池田戦、準々決勝・大島戦で4番・海田 真裕(3年)が決勝タイムリーを放つなど、ここ一番での集中力と勝負強さを発揮し、接戦を勝ち抜いた。鶴丸は好左腕・有木 和也(3年)の制球が昨夏に比べて安定し、粘り強くなった。好右腕・長野 良太(3年)を擁する加治木工、強豪ひしめく南薩地区で力をつけて成長著しい薩南工、指宿商、枕崎、加世田、春8強の鹿児島玉龍、昨秋8強の鹿児島南をはじめ鹿屋工、国分中央、鹿児島中央、川薩清修館なども私学強豪の壁を打ち破ろうと意気込む。

 昨秋、今春と初戦敗退だったが、打力のある鹿児島、好左腕・奥間 卓斗(3年)を擁する沖永良部なども、ダークホースとして押さえておきたいチームだ。

(文・政 純一郎)

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