春は、新しい出会いや恋の季節。今週(4月19日〜22日)は「日本人の色と恋」をテーマに、日本特有のいろいろな色恋に関する文化をご紹介しています。2回目の今回は、日本独特の愛情表現である「萌え」という言葉、中でも「擬人化萌え」の歴史に迫ってみたいと思います。


擬人化萌えは、日本の伝統文化?



今や世界でも日本の文化として受け入れられている「かわいい」や「萌え」という言葉。
そして、その「萌え」の中には「擬人化」というひとつのジャンルがあります。
人ではない生物やモノなどに命を吹き込み、言葉をしゃべらせたり、ときには恋に落ちるという独特の世界観……実はこれ、江戸時代からあった文化なのです。

江戸時代後期の浮世絵師・戯作者の山東京伝が書いた小説「箱入娘面屋人形」には、おとぎ話・浦島太郎の番外編が書かれています。
そこには美人の女房、乙姫に飽きてしまった浦島が、魚である鯉(こい)の「お鯉の(おりの)」と浮気をするシーンが。
こんな会話がやり取りされています。

「お鯉の、そんな本気なことを言ったってやはり魚だから、人間の俺をコケにするってのはナシだよ」
「つれないことを! この胸をさいて鯉の洗いにして、洗いざらい見せとうござんす」
鯉だけに鯉の洗い……このナンセンスなダジャレも江戸っ子が喜びそうです。

ほかにも、山東京伝は「人間一生胸算用」という本の中で、なんと体のパーツをそれぞれ擬人化したストーリーを描いています。
目や、口や鼻がそれぞれ人間の形になって動き出すのですが、それを支配しているのが「心」。
心の支配に嫌気がさしたパーツたちは、反乱を起こし結託して、心を追い出そうとする……という、なんとも哲学的なストーリー。
なんだか面白そうですね。

日本の伝統文化であった「擬人化萌え」。
もしかしたらその根底には「付喪神(つくもがみ)」のような、「全てのものには神や精霊が宿る」という考えがあるのかもしれませんね。

文/岡本清香

TOKYO FM「シンクロのシティ」にて毎日お送りしているコーナー「トウキョウハナコマチ」。江戸から現代まで、東京の土地の歴史にまつわる数々のエピソードをご紹介しています。今回の読み物は「擬人化萌えは、日本の伝統文化?」として、4月19日に放送しました。

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<番組概要>
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