縦横無尽に動いて、ひとり気を吐いた宇佐美。チーム最多のシュート3本を放つも相手に防がれ、悔しさを滲ませた。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 敗れた柏戦後、吹田市立サッカースタジアムのメインスタンドからG大阪のメンバーに向けて辛辣なヤジが飛んだ。
 
「金返せ!」
 
 チケット代に見合った試合じゃない――。そんな想いが込められていたのだろう。もっとも、サポーターが放ったであろうひと言は、チームに対する期待の裏返しとも受け取れる。スタンドからの痛烈な声は、ピッチレベルで取材していた本誌カメラマンの耳にも届いており、選手たちの心にも間違いなく突き刺さったはずだ。
 
 4月2日の5節・横浜戦(1-2)を皮切りに、ACLの上海上港(0-2)、今節の柏戦(0-1)とホーム公式戦は3連敗。リーグ戦では今季4敗目を喫し、すでに第1ステージの優勝争いから脱落した感が漂う。シーズン開幕前は優勝候補に上がり、クラブもリーグとACLの二冠獲得を高らかに掲げただけに、序盤戦の不甲斐ない結果を考えれば、柏戦後のブーイングはむしろ当然とも言える。
 
 敗戦の事実はもとより、多くの課題を内包した内容が問題だ。柏が放った14本のシュートに対し、G大阪は8本。ホームチームの押し込む時間が長かった割に、肝心のフィニッシュには至っていない。8本のうち、チーム最多となる3本を放った宇佐美は「相手どうこうじゃなく、ああいう相手ならもっと圧倒して勝たないといけない。自分たちのなかで起こっている問題」と自戒し、サポーターへの陳謝を口にした。
 
「勝てない辛さ、歯がゆさ、悔しさをファンやサポーターの方に与えているし、僕ら自身がそれを一番感じている。もどかしさもありますが、ホームやアウェーに関係なく、試合に勝っていく作業を繰り返しやっていきたい。ネガティブにならず、改善することに集中してやっていければいい」
 
 そして、エースはチームの抱える問題についても指摘し、「ガンバらしさを出せてない」と語り出した。

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 宇佐美が問題視しているのは“自分たちのテンポで攻撃を完結できない”という点だ。実際、柏戦では良い形で仕掛ける局面はあったものの、“良い形で攻撃を完結する”場面は皆無に近い。エリア付近でのシュートはことごとく相手にブロックされ、終盤はパトリックを軸としたパワープレーに頼らざるを得なかった。
 
「攻撃でなかなかギアが上がらない試合だった。自分たちがボールを持った時、自分たちのテンポで攻撃を完結できないところから失点した。自分たちらしさが出ない試合だった」
 
 なにより宇佐美が嘆いたのは、相手のプレスを剥がせなかった部分だ。柏の守備は一定の強度を保ち、前からの圧力も確かに強かった。しかし、相手のプレスをテンポ良いパスワークで外し、フィニッシュに持ち込むのが、G大阪のストロングポイントだったはずだ。
 
「相手が前から来ているなか、僕も含めて、(マークを)外しながらやれれば良かったけど、ハメられる状況では僕たちらしさが出せない。相手を押し込む展開がもっと増えてこないと。ガンバらしくボールを回し、自分たちから発信した攻撃や自分たちで完結させるプレーを増やさないといけない。僕自身も、そういうシーンを個で作らないといけない」
 
 柏戦での宇佐美は、幅広く動き回ってボールを引き出し、どうにか打開の糸口を探ろうと奮闘した。その働きは評価に値する一方、エースに負担がかかり過ぎている感も否めない。今の状況が続くのであれば、抜本的な改革――すなわち2ボランチにメスを入れる――も考慮すべきだろう。
 
 
取材・文●大木 勇(サッカーダイジェスト編集部)