ワークライフバランスは○○○がNo.1 「仕事本位」で働くための方法

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「派遣労働者」が今、日本にどれだけいるか知っているだろうか。

2015年の総務省の調査によれば、126万人。非正規雇用者のうち6.4%を占める。「派遣」といえば、2008年のリーマン・ショック以後の世界的な恐慌の中で、日本において「派遣切り」という言葉を生み出し、不安定なイメージをもたらす雇用形態となった。

しかし、一方で近年では派遣社員の時給も上がっており、景気の良い話も多い。

では、派遣社員の実態はいかなるものか? 『やりたいことを仕事にするなら、派遣社員をやりなさい!』(総合法令出版刊)の著者である大崎玄長氏にお話をうかがった。中編をお届する。
(取材・構成/新刊JP編集部)

■派遣法改正、派遣社員の働き方はどのように変わる?

――昨年9月に労働者派遣法が改正され、話題になりました。今回の改正では、どの派遣業務も同じ職場で働けるのは原則3年以内という期間制限が設けられた点、派遣会社は雇用安定措置を講じなければいけなくなったという点が注目を集めていますが、この法改正についてはどのようにお考えですか?

大崎:そもそも今回の改正の前から「3年ルール」はありました。ただ、改正前では、専門的業務については「例外として」3年を超えても働けることが認められていたのですが、その例外がなくなったというのが改正の一つのポイントです。また3年ルールも業務単位から人単位に変わり、かなり分かりやすくなりました。

3年も同じ会社の同じ仕事で同じ人が継続して働けたということは、職場はその派遣社員を「適性がある」と判断していた、ということです。派遣先企業は「適性がない」と判断すれば、派遣会社に派遣社員の交代を要請することもできるのに、それを3年間してこなかった。普通であれば、3年経てばそのまま派遣先の会社に雇用されますよ。

――つまり、そのままその会社で働き続けることになることが多いという予想ですね。

大崎:そうです。1人の派遣社員が1つの派遣先で働く期間はだいたい1年から1年半くらいです。そのまま派遣先で正社員になることもあれば、他でいい仕事を見つけましたので転職します、という人も多いですね。だから3年継続して働き続けてもらえるということは派遣先も派遣会社も嬉しいんです。

適性のある人を直接雇用しないという職場もどうなのでしょうか。「雇用安定措置」が機能する可能性のほうが高いと私は思います。3年も働いていただいた派遣社員です。派遣会社での無期雇用化を含めて、しっかりサポートしていこう、というのがほとんどの派遣会社の共通した見解です。

■「派遣社員のデメリットはありません」

――派遣社員というと時給が高い分、即戦力的な能力を期待されるのではないかと思うのですが、実際はそうなんですか?

大崎:千差万別ですね。派遣社員だから即戦力的な能力を期待されているというよりは、高い報酬の仕事だから即戦力であってほしい、ということの方が多いです。派遣社員でもそれほど時給が高くない仕事もありますし、その場合は、幸か不幸か職場側の最初の期待値はそれほど高くもありません。なので、逆に、少し期待以上のことができたりすると、職場での評価が急上昇したりします。そこに更新や昇給のチャンスが生まれますね。

――『ハケンの品格』というドラマの主人公は、スキルや時給がとても高く設定されていたので、派遣社員ってすごいと思ったことがあります。

大崎:IT系の専門職、複雑なシステム構築ができる人なら、月給70万円から80万円になるような人もいます。営業でも業績手当がついたりすると月給ベースで40万円から50万円になる人もいます。事務系でも、経理や広報、特殊な事務のスーパーエキスパートだとそういう可能性もありますね。

――そこまで稼げるのに、なぜ派遣会社に登録するのでしょうか。

大崎:正社員という枠に収まりきれないからだと思います。社員だと自分がしたい仕事を必ずしも担当させてもらえるわけではありません。かといって自分で独立するまでのリスクはおかしたくない。派遣ではそういう「いいとこどり」の働き方ができるのですね。「会社本位」ではなく「仕事本位」で働きたいという人は増えていると感じています。

ちなみに、少し話からそれますが、ワークライフバランスの満足度も派遣社員がトップという調査データ(※)もありますし。ワークライフバランス満足度の最下位は正社員とも出ているんすよ。
(※エン・ジャパン株式会社2016年1月20日発表「ワークライフバランス意識調査」 http://corp.en-japan.com/newsrelease/2016/3168.html)

――派遣先の企業からはどの程度、能力を要求されるのでしょうか。

大崎:これも様々ですね。事務系の職種だとパソコンのスキルは当然必要だ、ということは多いですし、時給が高い仕事ほど求められる能力もあがります。ですが一方で、スキルがそれほど必要でなかったり、未経験OKの仕事もたくさんあります。派遣会社では、働きたい人の希望や能力、経験を踏まえながら、この人ならばできそうだ、と思われる仕事を紹介しますので、それほど不安がる必要はありません。

――仕事のマッチングはどのように行うのですか?

大崎:基本は本人の希望を踏まえて、その希望に沿う仕事を紹介します。やはり一番は本人がどう働きたいかですので、嫌がっている仕事を紹介しても仕方がありません。

その上で、能力や経験に自信を持ちきれず「このまま職場に行っても私は通用するかしら」と不安であれば、私の会社の研修センターや直営事業にある類似の仕事でお試し就業をしてもらったり、本人が望めば職場見学もできるよう調整します。

――契約社員と派遣社員を比較した際のメリット、デメリットを教えていただけますか?

大崎:その2つで比較したときのデメリットは正直思いつきません。派遣社員も契約社員も担当している仕事が終わったら次の仕事を探さないといけないのですが、契約社員やパート、アルバイト、さらには正社員でも万一リストラされてしまったときは、自分でゼロから次の仕事を探すことになります。そういう意味では、契約終了の時期に合わせて、いろいろ次の仕事を紹介されるのは、派遣社員のメリットですね。

また、万一、職場でトラブルになった場合も、派遣会社が間に立って解決してもらうことも可能です。一人で職場のトラブルと向き合うなんて結構大変なことですから、その点も派遣社員のメリットだと思います。

――そういったトラブルは多いのですか?

大崎:多いというわけではないのですが、たまたま職場の上司とウマが合わなかったり、あってはならないことですがパワハラやセクハラなりが起きることもあります。そういうことが苦情や報告として上がってくると、派遣会社は「こういうことが起きてますが」と派遣先企業に話をして解決に向けて働きかけます。

(後編に続く)