累計28万部突破!大ヒットミステリーの続編『ガラパゴス』は、非正規雇用という大企業の闇に切り込む!

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2012年1月に出版された社会派ミステリー『震える牛』は、大手ショッピングセンターの地方進出に伴う地方商店街の苦境や、加工食品の安全問題をテーマに話題となり、単行本・文庫本合わせて28万部突破のベストセラーとなった。

メモ魔の窓際刑事・田川信一が、次第に企業のタブーへと迫っていく様子に、手に汗握ったという人も多いだろう。

今年1月に刊行された続編となる『ガラパゴス』(相場英雄著、小学館刊)でも、田川の捜査は読みどころの一つであるのだが、その一方で、彼が迫っていく社会の闇を、私たち読者は「現実」として受け止めなくてはいけないのではないかと思うような、そんなとてつもない恐ろしさを感じる。

■派遣社員の死体が物語るものとは?

警視庁捜査一課継続捜査担当の田川は、身元不明のままとなっている死亡者のリストから自殺に見せかけて殺害されていた不明者リスト「903」の男を発見し、再捜査することになる。

そして、殺害現場の都内竹の塚の団地で「新城 も」「780816」と書かれたメモを見つける。聞き込み捜査とメモから、不明者リスト903の男は沖縄県出身の仲野定文と判明するが、彼は福岡の高専を優秀な成績で卒業したにもかかわらず、日本中を転々とする派遣労働者だった。

人件費を削減するために、正社員を減らし、派遣社員を増やす。派遣社員は人件費ではなく外注加工費とし、人を部品のように扱う大企業。派遣労働者の賃金は、基本給から派遣会社のマージンをしっかり抜かれ、月給が5、6万円下がることもある。

そして、田川の捜査が進むにつれ、派遣社員の地獄や企業の闇の部分が浮き彫りになっていくのだった。

■企業のタブーへと切り込んでいく

このシリーズの読みどころの一つは、企業のタブーへと迫っていくその様子だろう。本作では「ハイブリッドカーは、本当にエコカーなのか?」「日本の家電メーカーはなぜ凋落したのか?」といった疑問に切り込んでいる。

派遣労働や自動車業界に関する情報はニュースでもよく取り上げられるが、その実情はその世界にいなければ知る由もない。現場で何が起きているのか、当事者たちはどんな想いをしているのか。この小説はそんな想像を広げてくれる。

上下巻とボリュームはあるが、時間を忘れさせてくれる物語だ。

(新刊JP編集部)