国連安保理の制裁対象となっている北朝鮮の船舶の多くがレーダーから姿を消したと、米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)が報じた。

全世界の船舶の出入りや位置情報を表示する「マリントラフィック」によると、今月3日の時点では過去24時間の位置情報が確認できた北朝鮮船舶は15隻だったが、4日を前後して8隻の位置情報が確認できなくなったという。

デイリーNKジャパンで調べたところ、北朝鮮の貨物船「テピョンサン」号は、2月13日から3月4日19時まで上海港に停泊していたが、出港。6日17時42分に上海沖の長江口にいたのを最後にレーダーから姿を消した。

航行中の船舶は、国際協定に基づき、AISの電源を常に入れておくことを求められている。しかし、違反に対する罰則規定はない。

北朝鮮船舶の多くは、北朝鮮沖や中国近海にいたため、AIS(船舶自動識別装置)の電源を切り、北朝鮮に戻ったものと見られている。同時に多くの船舶がレーダーで探知できなくなったことから、本国、または船会社からAISの電源を切るようにとの指示が出された可能性もある。

国連の決議案で名指しされている、北朝鮮の船舶管理会社「オーシャン・マリタイム・マネージメント」(OMM、遠洋海運管理会社)所属の貨物船「JIN TENG」号に対し、フィリピン政府は、出港禁止措置を取り、制裁決議にもとづいて資産を凍結、船舶を差し押さえた。AISの電源が切られたのは、この措置の後であることを考えると、指示が出された可能性は非常に高い。

同社所属の船舶31籍は、国連加盟国への入港を全面禁止されている。

また、中国の交通省は3日、北朝鮮の「遠洋海運管理会社」所属の船舶31隻をブラックリストに載せ、中国国内の港への停泊、中国水域での航行を確認し、港への進入は許可してはならないとするように緊急指示を出したとロイター通信が伝えている。

このように中国を含む国際社会の北朝鮮包囲網が狭まりつつある中で、制裁逃れとも言える動きも感知されている。

3ヶ月半で9回も北朝鮮とシンガポールを行き来し、怪しい動きを見せていると米ワシントンポストに報じられ、国連の制裁対象となっている「ダンライト」号は最近、「ファーストグリム」と名前を変えている。その時期や理由は明らかになっていないが、制裁逃れの一環とも言えよう。