首都圏高速、新料金の注意点 迂回優遇に矛盾? 逆に高くなることも
2016年4月、首都圏の高速道路で料金体系が改訂されます。「起終点を基本とした継ぎ目のない料金の実現」が特徴で迂回しやすくなることから、都心通過交通の分散が期待されますが、“矛盾”に思われる内容も。利用には注意が必要かもしれません。
値上げになるが、仕方がない首都高
来たる2016年4月1日(金)から、首都圏の高速道路料金が改定されるのは、既報の通りです。
今回の改定の眼目は、「起終点を基本とした継ぎ目のない料金の実現」。つまり、出発点と目的地が同じなら、どのルートを通っても基本的に同料金とすることで、渋滞の激しい首都高を迂回し、圏央道や外環道の利用を促進していることです。
首都高とNEXCOという高速道路会社の垣根を越えて料金を統一し、迂回のために遠回りしても最短料金を適用する今回の内容は、交通量を平準化して渋滞を緩和する、理想的な料金体系といえます。
一方、不満も一部から出ています。その多くは「首都高の長距離利用料金が値上がりする」というものです。確かに首都高の料金は、現在の上限930円から1300円に値上げされます。しかしそこを値上げしないと、この統一料金制は実現不可能なのです。
現状では、首都圏を横断する際、首都高を突っ切るのが最も安く済みます。しかし、首都高の上限料金が930円のまま統一料金制を導入するとなると、その料金水準に合わせる必要が生じるため、結果的にNEXCOの高速道路料金単価を大幅に下げなければなりません。
そして、首都圏ばかりを優遇するわけにはいきませんから、全国の高速道路料金を引き下げる必要が生じ、結果的に年間1兆円単位で税の投入が必要になります。「その財源はどこから持ってくるのか」という、堂々巡りになってしまうわけです。
私[清水草一(首都高研究家)]の意見は、「現行の首都高の長距離料金が安すぎる」です。実際、さいたま見沼(さいたま市緑区)から幸浦(横浜市金沢区)まで走行すると、86kmで930円。その単価はNEXCOの大都市近郊料金の約4分の1と、あまりにもバランスを欠いた安さです。それを今回の料金改定で約4割上げて1300円にするのは、様々な条件を勘案すると、バランスのいい妥協点だと考えます。
趣旨に合わない? 残念な部分もある新料金体系
今回の改定は、基本的には理想的なものですが、細部を見ると、残念な部分もあります。
その最大のものは、今回の発表で<ご利用上の注意>に小さく書かれている、「外環道の各出入口、首都高速の各出入口を出発地(または目的地)とする場合は、料金は引き下げません。走行経路どおりの料金になります」という一文です。
首都高や外環道のインターが出発点や目的地の場合は、「起終点同一料金」が適用されず、経路どおりの料金を請求されるのです。これは今回の「起終点同一料金」が、あくまで「都心通過交通の分散化を図るためのものであるため」(首都高速道路株式会社広報室)です。
例外は、外環の外側の放射高速(常磐道・東北道・首都高S5埼玉大宮線)のインターと、首都高C1都心環状線内のランプとを行き来する場合で、このときに限って、迂回のために外環を“1JCT区間”(例えば三郷JCT〜川口JCT間)利用しても、外環道の料金は全額割引されます。
ただし、外環を2JCT区間以上使うと対象外。関越道〜外環道〜首都高を行き来する場合も対象外ですが、川口JCTを回って迂回する場合のみ、美女木JCT〜川口JCT間の走行分だけ割引されます。
またこの外環道割引は、あくまで外環の外側とC1都心環状線のランプを行き来する場合のみで、そのほかはすべて対象外ですから、割引対象になるケースは相当に限定されます。
つまり、外環の内側に起終点があるドライバーにとっては大半の場合、“迂回は高くつく”ということです。これは「迂回を促進する」という、今回の料金改定の趣旨に合いません。
迂闊に迂回すると高くなる場合も 解消すべき矛盾
例えば、八潮南(首都高6号三郷線)から新郷(首都高S1川口線)へ向かう場合、首都高C2中央環状線経由だと780円(19.4km、現行720円)ですが、外環道へ迂回すると1140円(21.5km、現行1330円)と360円高くなります。
距離はほとんど同じですし、迂回優遇の原則から考えても、同料金にすべきではないでしょうか。
このように、外環の内側に起終点の両方がある場合、外環の迂回利用をまったく優遇しないのは「画竜点睛を欠く」と言わざるを得ません。
2年後の2017年度には外環道千葉区間が開通し、外環の利用価値は大幅に上がります。その際は、この矛盾点をぜひ解消すべきです。