(イラスト・蟹めんま)

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不動のメンバーで四半世紀以上ロックシーンに君臨し続けているBUCK-TICK。その魅力を20〜30代のファン男女の方に集まってもらい、語ってもらいました。

昔と今の“バンギャル界”はどう違う? 平成生まれ&昭和生まれ座談会!

【参加者】

●水田眞子さん(20代) 「ウレぴあ総研ディズニー特集」などで執筆するフリーライター。実はBUCK-TICK 好き。

●DJニッチさん(30代) DJ。V系オンリーのクラブイベント「Vニッチ」を主催。

●山川さん(30代) 都内のヨガインストラクター。今井寿さんのファン。

『殺シノ調べ』の出た年に生まれました。(水田)

――まずは3人の自己紹介からお願いします。

水田:え〜と、『殺シノ調べ』が出た年に生まれました。

ニッチ・山川:えっ(笑)。

水田:92年ですね。リアルタイムで聴き始めたのは『Alice in Wonder Underground』が出た時からで、アルバムは『天使のリボルバー』かな。

ニッチ:『天使のリボルバー』が07年のアルバムだからほぼ10年前だね。

山川:もうそんなに経つんだ…。

水田:もちろんその前からBUCK-TICKの名前は知っていました。どうして聴くようになったかというと、まず『Alice in Wonder Underground』のPVが可愛かったということもあるんですが、私cali≠gariがすごく好きで、とくにギターの青さんのファンで、その方がBUCK-TICKの熱烈なファンだったので聴いてみようと思ったんです。

――好きなミュージシャンのルーツをだどっていくうちにBUCK-TICKに出会ったと。

水田:でも最初は初期から順番に聴き始めたので、正直そこまで心にグサッと刺さるような衝撃はなかったんで す。その後『RAZZLE DAZZLE』が出た時に、ジャケットが宇野亜喜良さんだったこともあって改めて興味を持つようになりました。

だからライブに行き始めたのは本当にここ数年なんですよ。フェス(BUCK-TICK FEST 2012 ON PARADE) の前に、フェスに出るバンドと 2マンツアーをしていたじゃないですか。

私、MERRY も好きなんですけど、そのツアーで MERRYとBUCK-TICK が対バンすると聞いて観に行った んです。そして初めて生で見た BUCK-TICK に感激して「本当にかっこいいバンドだな」とその後すぐファンクラブに入って...。その後は、首都圏でライブをやる時にはコンスタントに通っている感じです。

ニッチ:出会いは…記憶をたどると、最初にBUCK-TICKを知ったのは雑誌の「月刊明星」ですね。そこに「ヤングソング」という冊子が付録に付いてまして。

――通称「歌本」ですね。

ニッチ:そう(笑)。歌本の巻末に小さいディスクレビューが毎月載っていたんです。そこに『SEVENTH HEAVEN』のレビューがあったのを見たのが小学生の時で、そこでちょっと気になって。

でもまだ貸しレコード屋さんに行ける年齢でもなかったので、その後テレビで『JUST ONE MORE KISS』とかがよく流れるようになって、中1くらいに『TABOO』を買ったのが最初ですかね。

――買った決め手は何だったのですか?

ニッチ:もうBUCK-TICKが聴きたくてしょうがなかったんですね。まだ中学生だったし、経済的なこともあってなかなかライブには行けないけど、当時テレビには結構出ていたので、「ミュージックトマト(音楽情報番組)」でPVも流れていたし、その流れで『TABOO』を買って、やっぱり1曲目『ICONOCLASM』に衝撃を受けて。

それまでもお化粧したバンドとか見てはいたけど、明らかに異質な衝撃があったというか、それまでにあまり体験したことがない・・・いわゆる歌メロもないし、リフレイン、繰り返すミニマルな構成で、ものすごい高揚感がある音楽というのは初めての体験で、ドハマりして。

同じアルバムの中に『ICONOCLASM』と『JUST ONE MORE KISS』というすごく尖ったものとすごくPOPなものが同居していて。それでドカンとやられて、そのまま26年くらいずっとファンをやってます。

山川:私の出会いはですね、4歳上の姉が友人からBUCK-TICKのCDを借りてきて、たしか『JUST ONE MORE KISS』かな? 他にはどんなアルバム出てるんだろう?CD出てるんだろう?と思って調べたら、『SEVENTH HEAVEN』のジャケットの裏ジャケに今井さんがパンジーか何かをくわえているのを見て「なんて素敵な人なんだろう」と。

その今井さんに当時小学生の私は一目惚れして、そこからずっと今井さんが好きなんです(笑)。

「今井さんは基本的にポップスの人」(ニッチ)

――次は、皆さんに好きなアルバムを伺いたいと思います。

ニッチ:僕は『TABOO』ですね。「惡の華」に比べてあんまり今振り返られないじゃないですか。だけど、80年代の終わりに日本のバンドが出した有名アルバムとして最高峰なんじゃないかなと。ジャケットも格好いいですし。なので今『TABOO』を褒めたい(笑)。

山川:一番好きなアルバムって難しいんですけど、私は「Six/Nine」かなー。

――『Six/Nine』ってかなり暗いというか、かなりキャッチーではない作品だと思うんですけど、その理由は?

山川:このアルバム、私の中では全然暗くないですよ。『Loop』から『Loop MARK II』で終わる、あのアルバムの全体的な流れが好きなんです。

ニッチ:実はBUCK-TICKのアルバムって1枚も「暗い」アルバムってないんですよ

山川:うん。

――「暗い」っていうのは勿論ネガティブな意味ではないんです、この時期って『darker than darkness -style 93-』も含めて歌詞も死を連想されるというか…。

ニッチ:今井寿さんは基本的にポップスの人だと思っていて。暗いアルバムを作ろうとしていない意図というか、要素が色んなところに散りばめられているんです。

なので、結果的に「ただ暗いアルバム」というのは1枚も作っていなくて、ちゃんとユーモアというべきもの随所に散りばめられている気がしていて。だからあまりダークなイメージはなくて。
ま、暗いんでしょうけどね(笑)

山川:聴いててなんか八方塞がりじゃない感じはする。

ニッチ:しかもオリコン1位ですから。その週、日本で一番売れたアルバムのはず。

山川:『Loop』の出だしとか良いじゃないですか、「感謝したい 心から」って。

――もうすでに暗いじゃないですか!

ニッチ:だって、感謝してるんですよ。暗い話じゃないですよ。

――なんというかその感謝が「遺書っぽい」というか…。

ニッチ:いやいや。いきなり聴いてくれてるリスナーに対して感謝の言葉を述べてます(笑)!

――それは納得がいかない(笑)。

山川:あと、『相変わらずの「アレ」のカタマリがのさばる反吐の底の吹き溜まり』も好きだし、あと、『唄』もPVも含めて好きなんで、すごいロック色も強いアルバムですよね。

水田:これは最早BUCK-TICKとは関係ない話なんですけど、私「アルバム」という概念があんまり最近ないんですよ。

――世代的に…?

水田:というのは、私中学生くらいの頃には既にiPod shuffleがあったんです。だからアルバムごとに云々っていうのは、あまりないんですよ。

――そういうギャップの話は興味があります。

水田:だから、自分がリアルタイムで追ってるのは、やっぱり楽しみにして、そればっかりを聴く時期っていうのがあるから、アルバムとしての認識はあるんですけど、それ以前の、自分が追っかけて来た曲、後追いで聴いた曲って、あんまりアルバムごとの曲として認識していないというか…。

ニッチ:なるほどね。

水田:あと、個人的な曲の好みというか、そういう話に関して言うならば、初期の曲って、同じ時代を過ごしていないから分からない部分がすごくあるんです。曲はすごく好きだけど、歌詞がちょっと「分からない」わけではないけど自分の気持ちや感覚とリンクしない。

――固有名詞がわからないとかではなく? 例えば、電話がダイヤル式だったりとか…。

水田:どちらかというと時代の空気みたいなのが分からないというか。それがカチッと分かるようになったのが、『RAZZLE DAZZLE』くらいですね。空気って言うよりは「あ、こういう、なんかもっと大きい引いた目で見てるんだな」っていうのが認識できるようになってみたいな。

山川:しかし、アルバムというと本当に悩みますよね。他には…『狂った太陽』も好きなんですけど。まぁ全部好きです。

ニッチ:そうなんですよね。すごく悩むんですよね。でもどうしても10代の頃に一番衝撃をくらっているものが強いというか。他には、好きというか衝撃を受けたのは、『シェイプレス』ですね。

――『シェイプレス』はまだ国内で一般的には知られていないテクノミュージシャンを起用し、さらに当時まだ一般的ではなかったリミックスアルバムという先鋭的な作品ですよね。

ニッチ:僕は当時、テクノに傾倒している時期でもあったので、Aphex Twinも大好きだし、BUCK-TICKも大好きという状態で聴いたんです。もちろんそういう人は周りにも何人かいたんだけど、みんなが「う〜ん」ってなったんです。

何故かというと海外のテクノミュージシャンはBUCK-TICKというバンド自体に愛情がない感じもしたし、一方BUCK-TICKはそれにダメ出しできるほど(テクノ等のダンスミュージックに対しての)音楽的な力量がなかったような印象を受けて、それがすごくショックだったんですね。つまり、自分の好きなアーティストを自分の好きなアーティストが邪険にしてしまっているような。

それで少し落胆して、「早く次の作品出ないかな〜」と思いながら。で、そのあと出た『Six/Nine』も、なんとなくそのへんの影響も感じられつつも、そのあと、『COSMOS』はさんで『SEXY STREAM LINER』ですぐガチガチに打ち込みやるじゃないですか。

――はい。

ニッチ:あんなにテクノ系の人達に邪険にされた感じがあったけど、今井さんはそれでもやっぱり打ち込みをやり、テクノロジーを入れた音楽を導入したいのは痛いほど伝わってきて。

だから『シェイプレス』を経て、外部ではなくて、ちゃんと自分たちでやろうって、『SEXY STREAM LINE』をガッチリ作ったのかなみたいなことをちょっと感じたりとかします。

――『シェイプレス』って、初期からだんだん打ち込み寄りになってくるの過渡期の象徴というか。

ニッチ:ゴシックな部分とかもそうですけど、おそらくはイギリス、ヨーロッパの流行りを気にしてたというか、影響を受けていたんじゃないのかな。

山川:今井さん、元々YMOとかが好きで、本当だったらシンセサイザーとかやりたいって言ってたんですよね。で、高くて買えなかったからギターやったというのはインタビューでもよく語られてますよね。

BUCK-TICKをオススメするときはどうする?

ニッチ:BUCK-TICKって何を最初に聴いてもらうかどうかでおすすめするの困りません?

山川:ライブでやるような曲かなあ。最新作と…何の曲やるかわからないから、考えちゃいますよね。

水田:『memento mori』に収録されている『真っ赤な夜』や『アンブレラ』もけっこうやりますよね。

ニッチ:あと『独壇場Beauty』は対バンキラー曲だし。そういえばこの曲はまだ5年前のものなんだね、そうとは思えないくらいあまりにも馴染んでる。最近のBUCK-TICKの代表曲といえるんじゃないかな。

水田:『RAZZLE DAZZLE』って、大人のバンドがやってカッコいい曲が入ってると思うんです。歌詞もそんな感じだし。『羽虫のように』も大好き。

ニッチ:楽しいアルバムだよね、ダンサブルな曲が多くて。

水田:『Django!!! -眩惑のジャンゴ- 』や『ボレロ』もだけど、いい感じにゆるく踊れる感じがするので、「大人」って感じ。力がうまい感じに抜けているというか。このバンドじゃなきゃ出来なさがある。それを言ったら全部そうなんですけど(笑)!

山川:『狂気のデッドヒート』も『RAZZLE DAZZLE』ですね。

水田:最近のBUCK-TICKの、大いなる目で物をみてる感じが好きかもしれない。 だから上手く形容できないけど。歌詞の視点が地球を月からみてるくらいの引き方なんで。聴いた人が解釈 していいというか、受け手に委ねることが多くなったのかなって。 だって「We love all 抱きしめたい」ですよ(笑)!! 『禁じられた遊び』とかは個人的な話っぽいけど、全体的に博愛なんですよ。

――90年代半ばくらいから中東の戦争問題に触れていたり、2000年以降はそれこそ『極東 I LOVE YOU』あたりでどんどんそれが顕著になっていって…。

ニッチ:僕それで一瞬「え?ちょっと…」って思って(気持ちが)離れちゃったんですよ。CDは買ってたんですけど。そこから『十三階は月光』で戻ってきたというか。

――『十三階は月光』は初のコンセプト・アルバムということもあって、オススメしやすいかもしれないですね。

水田:そう、だからその辺から逆に自分が体験してなくても分かる音楽とか歌詞になってくれたから、すんなり入ってくるようになったっていう部分はすごくありますね。

ニッチ:『十三階は月光』でドッと新規が増えた感がありますね。若い子で「BUCK-TICK」気になるって言ってる人たちがドンと増えたなって感じがしました。

――あのあたりから若い層、いわゆるバンギャル、あるいはロリータさんをよく見るようになった気がします。「もともと名前やバンド名は知ってたけど・・・」みたいな感じで。昔は「BUCK-TICKはV系じゃない」的な意見の人も多かったと思うんですが、いつの間にか。

山川:逆に「BUCK-TICKっていったらコレ(逆立てる動作)でしょ?」で止まってる人もいますしね。

ニッチ:もうひとりしかいないよ!

――逆にひとりイメージを守ってる人がいることがすごいですよ。

ニッチ:ほかにも『蜉蝣 -かげろう-』でCLAMP原作のアニメ『XXXHOLiC』のエンディングをBUCK-TICKがやって、そこでCLAMPのアニメのファン層と、BUCK-TICKのファン層が重なった感もあるんですよね。

山川:私アニメ全然わからないんですけど、そうだったんですか?

――PVもそのアニメの世界観にあっていて、ファンの方からも評判がよかった記憶があります。

ニッチ:多分BUCK-TICKを好きな人たちが大人になって、なにかしらの企画の決定権を持ちだすじゃないですか。それで「原作者がファンで…」みたいなこともあるんじゃないですか。

――他にも05年のアニメ『トリニティ・ブラッド』でも『ドレス (bloody trinity mix))』が起用されていましたね。

ニッチ:いろんなところでBUCK-TICK好きな人と会うというか。僕DJをやってまして、ダンスミュージックのDJもするんですけど、昔からいろんな所でリハで一番よくかける曲が、出音を確認しやすいので、『ICONOCLASM』なんですよ。

そしたらライブハウスとか、クラブのスタッフとかPAの人達が、V系のイベントじゃなくても、リハでDJがBUCK-TICKかけてるって時点で「え?BUCK-TICK好きなの?」って話になるんですよ。それで、そこで盛り上がるというかコミュニケーションがスムーズになることが多くて。

やっぱり80年代終わりにBUCK-TICKを思春期で食らった人たちが30代半ばから上になってるから、それがそういうアニメタイアップなんかにも表れてるのかなって勝手に思ってたりするんですけど。

今後のBUCK-TICKに期待していること

山川:2010年以降ホールツアーやってライブハウスツアーやって、それでアルバム出して…って動きますよね。

ニッチ:今年みたいにほぼ1年リリース無い年とかありますけどね。ライブもルナフェスとDIQツアーだけですよね。

水田:とはいえMORTALやSCHAFTがありましたし。

ニッチ:あとアニイの誕生日イベントか。

山川:でも昔よりコンスタントに動いてる印象があります。

――今年は9月に横浜アリーナも決まっていますし、Victorに移籍してのリリースも決定してて、色々と動きがありそうですね。

水田:またフェスもやってほしいです。前回のフェスがすごく良くて、メンツが私の好みすぎて…、まあ自分の好きなバンドがBUCK-TICKを好きだったってだけなんですけど(笑)。

山川:今はSCHAFTのツアーも終わって、SCHAFTロスなので(笑)、9月のBUCK-TICKのライブを楽しみにしています。

ニッチ:Victorに戻っての新作がどうなるのか楽しみですね。個人的には『エリーゼのために』以降の3枚が落ち着いていたので、そろそろ攻撃的なシングルが出たら嬉しいなと思っています。