2016年の高校野球を占う【京都編】「平安1強を阻むチーム、選手が現れるか?」
2014年春、龍谷大平安優勝、福知山成美ベスト8、2015年夏、鳥羽がベスト16と全国レベルの実力を持つ京都府。今年の京都府の状況を占ってみた。
甲子園出場最多の龍谷大平安、それに対抗する福知山成美、ダークホースの京都外大西今の2年生部員が高校に入学した2014年春以降、6季中5季で優勝しているのが龍谷大平安。全国最多の甲子園出場回数を誇る古豪は今年も優勝候補の大本命だ。昨秋の京都を制すと近畿大会も2試合連続コールド勝ち。1発にバントと機動力を絡めた攻撃力は迫力十分で相手バッテリーに重圧を与える。旧チームから上位打線を任されていた小川 晃太朗(2年)、久保田 悠(2年)、橋本 和樹(2年)の3人に下級生ながらスタメンの座をつかみ新風を送り込んだ岡田 悠希(1年)が残り内外野共に経験者を擁する。
市岡 奏馬(龍谷大平安)
投手陣もエース・市岡 奏馬(2年)の左腕から繰り出すストレートには威力があり、ハマった時のキレはまず打たれない。ただし試合によっては制球を乱しピンチを招くことも。昨秋敗れた近畿大会の準決勝では先制点をもらいながら初回に4四球を与えるなどして逆転を許すと、修正出来ないままチームもまさかのコールド負け。近畿ベスト4という結果を残したものの原田 英彦監督は「帰ってから練習します」と不満だらけの表情で球場を後にした。
市岡は試合によってだけでなく、結果的には好投と言われるような試合の中でも悪癖が顔をのぞかせそうになることもある。相手チームが攻略するにはその隙を突けるかだが、守備も堅いだけに容易ではない。右腕の大野 将輝(2年)も期待の投手で、大野が市岡とともに両輪となって活躍できるか。
そして堅実な野球をする龍谷大平安と対照的に、爆発力を秘めるのが北部の雄・福知山成美。昨秋の京都府大会決勝で龍谷大平安とぶつかるとすでに近畿大会出場を決めていたためかエース・川上 翔(2年)ではなく4投手の継投で挑むが9失点。毎年強力打線が自慢だが打線も3得点に抑えられスコア上は完敗。だが龍谷大平安のエース・市岡から2桁安打を放っているのが今後の戦いで鍵になるかもしれない。
森下 リズム(福知山成美)
今年のチームは外野の頭を越す長打力抜群の打者が並ぶというよりは、鋭いライナーで外野の間を抜く打者が多い。勝つ時はガンガン打つ反面、負ける時はエラーやバントミスが響く、というのがこれまでのイメージだが、展開によっては送りバント、スクイズの使用度も増し、ピンチを招いても好守備で切り抜ける場面も目立った。打って走れるタレント揃いの外野陣は京都屈指。
特に秋に打撃好調だった1番の森下 リズム(2年)が打線のキーマンになりそう。まとまりのあるエース・川上、昨秋の近畿初戦でサヨナラ押し出し四球を与えてしまう悔しさを味わった北野 優弥(2年)ら投手陣の底上げに期待。井本 自宣監督の龍谷大平安に対する戦績は2戦2敗。3度目の正直なるか。
今年の京都は頭1つ抜ける龍谷大平安を福知山成美ら第2グループが追う、という構図が予想されるがダークホース的存在になりそうなのが京都外大西。投手を中心とした守りと1、2番タイプの巧打者が並ぶつながる打線で連覇した時期もあったがしばらく甲子園から遠ざかる。ただ現2年生には力のある選手が揃い打線の力強さに上羽 功晃監督は自信を持つ。これまでのイメージを変える戦いぶりを披露する年になりそう。
[page_break:ブレイクが期待される府内の注目選手たち]ブレイクが期待される府内の注目選手たち昨秋ベスト4の京都翔英を引っ張るキャプテンの石原 彪(2年)は中学時代に日本代表に選ばれ、高校でも1年夏から4番を務めるスラッガー。大量の白米を詰め込むことで有名な京都翔英の食事トレーニングやウエイトトレーニングの成果でパワーアップに成功した。また打つだけでなく50mは6秒0と俊足の持ち主で、隙あらば盗塁を狙う。上背は無いが二塁送球は2秒を切る強肩捕手でドラフト候補にも挙げられている。攻守の要としてチームを初の夏の甲子園に導きたい。
伊那 夏生(鳥羽)
昨夏の京都大会で優勝を果たし、高校野球100周年の甲子園を盛り上げた鳥羽は旧チームで3番を打っていた伊那 夏生(2年)がチームの中心。立命館宇治との決勝戦ではセンターの守備でも左中間への飛球をダイビングキャッチでつかむ大ファインプレーを披露するなどビッグプレーで流れを変える力を持つ。
投手では乙訓の上野 晃徳(2年)の評価が高い。最速141km/hの右のオーバースローで奪三振能力に優れる。公立が強豪私立と点の取り合いをしたのでは分が悪いため、上位進出のためには上野の好投は必須条件だ。
冒頭で述べた通り、今年も「平安1強」時代の色合いが強い。龍谷大平安が前評判通り突き進むのか、どこかが止めるのかだが、上記に挙げたチーム以外では立命館宇治、京都成章も有力。北部勢では地力のある峰山や綾部、日星の他にも左右の2枚看板を擁する宮津や本格派右腕・窪田 智樹(2年)が引っ張る西舞鶴なども打倒、市内の強豪を狙っている。
(文・小中 翔太)
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