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料理のレシピ投稿サイト「クックパッド」の創業者で、筆頭株主の佐野陽光取締役が、自分を除く取締役全員の交代を求める「株主提案」を行ったことが明らかになり、話題になっている。佐野氏の提案は、3月に開かれる株主総会で議決にかけられる予定だ。

クックパッドは、一般のユーザーが料理のレシピを投稿して、そのノウハウを共有するウェブサイトで、利用者は月に延べ5800万人。創業者で43%あまりの株式を保有する佐野氏は、次の株主総会に向けて、自分を除く取締役全員を解任し、自分の再任と新しい7人の取締役の選任を求める株主提案を行った。

佐野氏は現在の経営陣について、「料理から離れた事業に注力するなど、経営ビジョンに大きなひずみが出てきた」と批判している。佐野氏は2015年11月にも、みずからの社長復帰を求めたが、取締役会が提案を棄却。今回も、経営の主導権をめぐって創業者と現経営陣の対立が表面化しているとみられる。

今回のような企業内部の対立を、どう読み解けばいいのか。企業法務の問題に詳しい鈴木謙吾弁護士に聞いた。

●創業者1人だけでは可決できない

「『クックパッド』の創業者が行った株主提案というのは、端的に言えば、株主総会で議論する決議事項について、株主の意見を反映させるために、一株主が事前に提案できる制度です。

同制度を利用するためには、6カ月以上の保有条件などがありますが、株主として行使できる権利です。今回は、創業者が株主として、この制度を利用したと言えるでしょう」

創業者ということで、株主総会で有利に取り扱われるのだろうか。

「創業者の提案した議題が株主総会において取り上げられたとしても、取締役の選任や解任については、決議要件として少なくとも過半数が必要である点に注意が必要です。

創業者の所有は43%の議決権ですので、出席議決数にもよりますが、原則として1人では提案議題を可決できないことになります」

自分の提案を可決させるためには、どんな方法が考えられるのか。

「様々な作戦を検討することになりますが、その1つがプロキシーファイト(委任状争奪戦)です。

委任状争奪戦というのは、他の株主から、『私の議決権行使をあなたに委任しますよ』という内容の委任状を取り付けて、自分の持っている議決権の数を増やすというやり方です。

最近では、大塚家具の騒動においても、熾烈な委任状争奪戦が繰り広げられました。

このように取締役の選任や解任については、仮に43%の株式を保有する大株主として、株主提案によって株主総会の議題を提案することはできたとしても、それだけで自らの思い通りに取締役を選任したり、解任したりできません。

株主提案は、企業の方向性を検討する一つの指針とはなりますが、経営の主導権については今後の趨勢をきちんと見守っていく必要があります」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
鈴木 謙吾(すずき・けんご)弁護士
慶應義塾大学法科大学院教員。東京弁護士会所属。
事務所名:鈴木謙吾法律事務所
事務所URL:http://www.kengosuzuki.com