兵庫県神戸市で2015年11月9日、道路わきの側溝に潜んで、女性のスカート内をのぞこうとした男が、県迷惑防止条例違反の疑いで逮捕された。男は2年前にも、同様の容疑で逮捕され、「生まれ変わったら道になりたい」と供述していたという。


のぞき見イメージ(編集部撮影)

「道になりたい」。男を擁護するつもりはないが、どこか心に響く言葉だ。わたしも道になってみたい。とはいっても、実際に側溝に潜むのは、いろいろと問題がある。なるべく似た環境を作って、そこから見上げることにしよう。記者はすぐさま、側溝を買い求めようと、ホームセンターへ向かった。

ホームセンターをハシゴする


まずは編集部から便のいい、スーパービバホーム豊洲店(東京都江東区)へ。排水溝が見当たらないので、店員さんに聞くと「取り寄せ」とのことだった。肩を落としながら、都バスに乗り、北上してみる。


次に訪れたのは、コーナン江東深川店(同区)。屋外売り場へ行くと、断面がU字型になっている「U字溝」がズラリと並んでいた。これぞ側溝というべき、ポピュラーなものだ。約500円〜という価格設定もうれしい。


しかし、このお店のU字溝は、すべてコンクリート製。電車で持って帰るには重すぎる。会社の総務から「タクシーは使っちゃダメ」と言われていることもあり、「グレーチング」と呼ばれる排水溝のふただけ買って帰ることにした。


グレージングの棚へ行くと、格子の細さや幅に応じた、さまざまな種類が並んでいた。「いちばん小さいが、格子は細かいものを」と思い、溝幅100ミリ、高さ19ミリのものを購入する。税込4298円。手痛い出費だ。


領収書をもらった。経費で落ちなくてもいいが、領収書をもらっておくことで、「これは仕事なんだ」と思えるのだ。片手で持つには重すぎるグレーチング。両手を駆使して、改札を抜け、地下鉄を乗り継ぐ。「何であの人は、スーツ姿で『側溝のふた』だけ持ってるんだろう?」。視線が痛い。


グレーチングはビニール袋で包んだ(大江戸線門前仲町駅にて)

長机のスキマに渡してみた

帰社した記者は、グレーチングをかぶせられそうな「溝」を探した。しかし、オフィスに側溝なんてあるわけがない。そこで、会議で使う長机をふたつにわけ、その間にグレーチングを渡すことにした。上を歩くことはできないが、見上げる感覚は味わえる。



寝そべった状態で、下からのぞいてみると、地上まで思ったより距離がある。もっと近づいてみよう。なるべくグレーチングに、目を近づける。格子の向こうをジッと眺めながら、男は何を考えていたのだろうか。


ときは8月16日未明。気象庁のデータによると、気温は26度ほど。湿度は60%台で、ジメジメとした朝だったようだ。深夜3時に潜み始め、「その時」を待ちわびる。土曜から日曜になったばかり。旧盆とも重なって、何度か酔客も通ったはずだ。「いつ吐かれるか」。そんな恐怖におびえながらも、潜み続けたのではないか。


空の色、太陽の光、風のにおい――朝8時まで約5時間、男が感じたであろう「空気」はわからなかったが、視野の狭い空間での「孤独感」は味わえた。とはいえ、なぜここまでして、男はのぞきたかったのか。体験してもなお、その根幹は理解できなかった。


さて、このグレーチング、どうしよう。有効活用する方法をご存知の方は、ぜひJタウンネットまでご一報いただきたい。