「来年もお客さんとして見に来ようと思います」と松井玲奈は言った。TIF１日目レポ
というわけで、今年もやって来ましたTOKYO IDOL FESTIVAL（TIF）。2010年に始まって以来、今年で６度目となるTIFには過去最多となる154組のアイドルが８月１日と２日の２日間にわたり、お台場・青海地区の各会場でパフォーマンスを繰り広げた。
１日目は、フジテレビ湾岸スタジオ前の広場に設られた野外ステージ「SMILE GARDEN」でのRadio Gymnastics、ようするにラジオ体操からスタート。ファンとステージ上のアイドルが一緒に体を動かすというこのプログラムは、去年のTIFの２日目に初めて行なわれたのが好評で、今年は１日目からの実施となった。ジャンプの体操では、ファンがここぞとばかり跳ねる跳ねる。
このとき出演したのはアイドリング!!!の朝日奈央・河村唯・三宅ひとみを中心に、アリスインアリス、ミライスカート、SiAM&POPTUNe、フラップガールズスクール、ななのんのメンバー。京都を拠点に活動するミライスカートは、この日のために車で10時間かけて会場までやって来たとか。そんなふうにアイドルが全国から集結したイベントがTIFなのだ。
エキレビ！では昨年と同様、私（近藤）とライターの丸本大輔さん（写真担当）でチームを組んでTIFにのぞんだ。が、１日目は２人とも仕事の都合で残念ながら途中で会場を抜けることに。それでも夕方までに結構いろんなグループが見られた。
昨年TIFをおおいに沸かせたでんぱ組.incは、フジテレビの「お台場夢大陸オマツリランド」内に設けられた大型ステージ「HOT STAGE」にこの日トップバッターとして登場した。このときメンバーは予定の時間より15分ほど早くステージ上に現れ、観客を前にリハーサルを行なうといううれしいサプライズ。本番の終わりには、新曲「おつかれサマー」では観客と一緒にタオルをブンブン振りまくった。
丸本さんから勧められてZepp DiverCityの「HEAT GARAGE」で見たi☆Risは、さすがメンバーが声優としても活躍しているだけあって声量がほかのアイドルとくらべても抜群。ダンスでも、ハイジャンプを決めたり、ラインダンスで６人の息の合ったところを見せたりと、アイドルとしてのスペックの高さを感じさせた。
スペックの高さといえば、この日の午後にHOT STAGEでライブを行なった東京パフォーマンスドール（TPD）にも当てはまる。TPDといえばアラフォー世代には、「アイドル冬の時代」と呼ばれた90年代にあって篠原涼子などを輩出したグループとして記憶に残る。新生TPDは一昨年に結成された。昨年11月の単独コンサートがアイドルファンのあいだでは評判が高く、私も気になっていたのだが、今回初めてそのパフォーマンスを見て納得。30分間、MCをほとんど挟まず立て続けに曲を披露するそのパワーに圧倒された。
このほかにも、アイドルユニットAeLL.の解散後、ソロ歌手として活動を始めた篠崎愛、去年のTIFで私が劇的な出会いをしたGALETTeなど印象深いグループは１日目だけでもいくつもあったが、このレポートではとくに２組をとりあげたい。
２年ぶり、W松井がそろったSKE48のステージ
まず１組目は、１日目の午前中、前出の「HEAT GARAGE」に登場したSKE48。SKEについてはいままでエキレビ！では何度もとりあげてきたけれども、何しろTIFには２年ぶりの出演、しかも主要メンバーの一人で今月いっぱいでグループを卒業する松井玲奈も参加しているとあってやはり外せない。
パフォーマンス自体は30分と短時間ながら、SKEのエッセンスが濃縮された、私がこれまで見たSKEのライブのなかでもかなり上位に入るいいステージだった。グループの紹介ソングで、本拠地である名古屋の名所や名物を歌詞に折りこんだ「SKE48」がセットリストの１曲に入っていたのも、全国からアイドルが集まるTIFならではの選曲だろう（欲をいえば、いま一つのSKE48のご当地ソングにして夏うたの名曲「羽豆岬」も入れてほしかったところですが）。
MCでもメンバーが一人ずつ自己紹介。今月リリースのシングル「前のめり」で初めて選抜に入った後藤楽々（らら）は英会話が得意とか、ファンの私も初めて知った。考えてみれば、いくらグループ内でシングルの選抜メンバーに毎回入り、48グループの総選挙でも上位にランクインしようとも、それはTIFに来るほかのアイドルファンにとってはあくまで内輪の話。今回のセットリストもMCも、それを十分に意識したものであったことは間違いない。ファンとしては、こういう他流試合的なイベントへのSKEの出演がもっと増えることを期待したいところだが。
さて、公演終了後には、TIFのテレビ中継のMCである濱口優（よゐこ）とクロちゃん（安田大サーカス）が登場、メンバーにきょうの感想などを訊ねた。そのなかで松井玲奈は「来年もお客さんとして見に来ようと思います」と発言。そういえば、玲奈さんは昨年のTIFには、大好きなベイビーレイズ（現・ベイビーレイズJAPAN）のステージを見るため観客として来ていたのだった。この発言に対してメンバーの高柳明音から「玲奈さん、SKEの（出演する）ときに見に来てくれるんですか!?」とツッコまれると、一瞬間を置いて、「あのへんで……」と客席の前方を指さしていたのがおかしかった。
アイドルらしからぬ“パンの歌”に心をつかまれる
２組目は私がいままで全然知らなくて、今回のTIFで初めて出会ったグループである。
それは湾岸スタジオの「DOLL FACTORY」に、前出のGALETTeとWHY@DOLLのコラボをめあてに見に行き、そのステージ終了後、今度はどこに移動するかプログラムを見ながら検討していたときのこと。そうこうしているあいだに次のグループが出てきて歌い始めたのだが、どうも耳に入ってくるフレーズがおかしいというか、「駆け落ち」とか「バスは事故にあった」とか「最高のパンを焼き続けてる」とか、アイドルソングらしくない。プログラムで確認したところ、それはSTARMARIEというグループということがわかった。
ほかの曲もマイナー調で、いまどきのアイドルには珍しくどこか陰があるなー（衣装も黒のノースリーブで喪服を思わせた）と思ったら、最後に披露した「メクルメク勇気！」という新曲は一転して明るい楽曲だった。MCでそれがテレビアニメ「カードファイト!!ヴァンガードG」のエンディングテーマだと聞いて納得したのだが。
あとでネットで調べてみたところ、私の心をとらえた“パンの歌”は「涙のパン工場「コンセル・カマタ」」という曲だった。この曲にかぎらず、すべての楽曲の歌詞が物語仕立てになっているのが特徴らしい。今年６月のアジアツアーファイナルでリリースしたアルバムの紹介を見ると、「涙のパン工場」以外にもタイトルからして気になるナンバーが並ぶ。絶対買う！
STARMARIEは2008年の結成以来、何度かメンバーが入れ替わりながら国内外でのライブなど活動を続けているようだが、不勉強にもまったく知らなかった。こういう未知のアイドルとの偶然出会ったりするのがTIFの最大の醍醐味である。
会場の各所ではまた、今回はステージでパフォーマンスを披露するまでにはいたらなかったものの、PRのためTIFへやって来たアイドルたちが名刺やライブのチラシを配るのに余念がなかった。TIFのパンフレット販売のブースでも、そんなアイドルが入れ替わりでパンフをファンに手渡しながら自分たちを売りこんでいた。私が行ったときは、Parfait（パルフェ）というグループがブースに入っていて、握手とともにパンフの裏表紙にグループ名をサインしてくれた。
去年の経験からするとTIFは夜がまた楽しいのだけれども……。しかし残念ながら時間切れ。SMAILE GARDENでのLinQのライブを横目に会場をあとにする。明日こそは一日みっちり見るぞと心のなかで誓いながら。
（その２へつづく）
（近藤正高）
