映画 木屋町DARUMA 
原作、脚本 丸野裕行
監督 榊英雄
出演 遠藤憲一 三浦誠己 武田梨奈 木下ほうか 寺島進 木村祐一 ほか
京都木屋町を舞台に、ある事件から四肢を失った男が闇金融の取り立て屋として生き抜く姿を描く。監督は「捨てがたき人々」などの榊英雄。
10月3日(土)渋谷シネパレスほか全国順次ロードショー
大阪・第七藝術劇場 京都みなみ会館 兵庫・元町映画館
公式サイト http://kiyamachi-daruma.com
(C)2014「木屋町DARUMA」製作委員会 

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過激だから出版できないと言われ、映画化しても上映してくれる映画館がなかなかみつからなかったという問題作「木屋町DARUMA」。

それでも、榊英雄がプロデューサー、監督を引き受け、遠藤憲一や寺島進が出演し、人間の業を迫真で演じて、引き込まれる。原作と脚本を手がけ、榊との共同プロデュースもつとめた丸野裕行は、暴力には報いがある、そういうことを描きたいと言い、あらゆる欲望が渦巻くそれは歌舞伎で描かれる因果応報の地獄絵図のようだ。7年前に書いた自作を、たくさんのひとを巻き込んで映画化するまでの血と汗と涙にまみれた執念を訊く。
前編はこちら

木下ほうかさんもキャスティグ


──撮影はいつ行われたんですか。
丸野 2013年の5月です。12日間で撮りました。
──2012年の年末に榊監督から映画つくろうと言われて、5ヶ月という短期間で準備をしたと。それでよくこの豪華キャストを集められたものですね。遠藤憲一さん、寺島進さん、木下ほうかさん、木村祐一さんなどなど。
丸野 榊監督がプロデューサーも引き受けてくれて製作がはじまったとき、まず、誰に出てほしい? と訊かれて、遠藤憲一さんと寺島進さんは外せないと希望して。一度はスケジュールがとれないだろうと言われましたが(笑)、ダメ元で頼んでほしいと粘りました。そのときは既に木下ほうかさんもキャスティグをやってくださるということで参加していました。
──木下さんは榊さんがつれてきて?
丸野 そうです。榊さんと木下さんのおかげで、条件が悪いにもかかわらず、多くのすばらしい俳優さんが出演してくださいました。
──遠藤さん、忙しいのに、よく時間がとれましたね。
丸野 遠藤さんはちょうど撮影の頃「かすていら」や「潜入探偵トカゲ」などのテレビドラマに出演されていて忙しく、スケジュールがないと言われましたが、とにかく台本だけでも読んでほしいと頼み、映画界でこれまでやってないことをやりたいという気持ちなんですと伝えたら、やるって言ってくれたんです。そもそも、遠藤さんは、榊監督の長編1作目「GROW-愚郎」の時に「次はがっつりやりましょう」と仰られていたそうで、榊監督との約束を果たす意味でも、この作品をやりたいと仰ってくださったようです。売れっ子になったいまでも、面白ければ、メジャー、インディーズ問わず参加されるらしくて。寺島さんは、榊監督と以前からのお知り合いで忙しいなかシンパシーをもってくださり参加してくださいました。また幸い、撮影のころ、レギュラー出演している「京都地検の女」シリーズの撮影も行われていたので、スケジュールとしてもちょうどタイミングがよかったんです(笑)。
──すごいラッキーですね。
丸野 ええ。とくに、友里役は過激なので、引き受けてくれるひとがいないんじゃないかと心配していたら、木下さんがお知り合いの武田梨奈さんを強力にプッシュされての抜擢です。武田さんも当時は、認知度がそれほどでもなかったですが、すっかりいまや人気者になっていますよね。

みんなにお弁当を運びました


──丸野さんはプロデューサーとして日々何をやっていたんですか。
丸野 ぼくは映画制作のことを何も知らないので、プロデューサーとしてのメインのお仕事は榊さんにお任せして、朝の弁当の手配など制作的なことをやっていました(笑)。
──原作者でもあるのにお弁当の手配とは。
丸野 朝方まで脚本直していても、毎日必ず、みんなにお弁当を運びました。当時はミニクーパーのオープンカーに乗っていたので、それにお弁当を山積みにして。あとガリガリ君を差し入れたり(笑)。俳優の皆さん、ガリガリ君でも喜んでくださっていい方たちだなあと感激しました。
──アットホームな感じですね。
丸野 申し訳なかったのは、いつもなら遠藤さんは立派な楽屋で過ごしているのでしょうけれど、今回はプレハブの仮設の建物のなかでお弁当を食べることになってしまったんです。にもかかわらず、「いいんだよ」ってその状況すら楽しんでくださっていて、ありがたかったですよ。遠藤さんも寺島さんも、ここまで上り詰めるまでにご苦労されているから、こういう実験作の意義をわかっているのでしょうね、ものすごく協力的で。
──木屋町ロケは簡単に撮影許可がおりるんですか?
丸野 先斗町の通りの撮影はできないんです。ぎりぎり可能なところでやっていて、京都府警の暴力団対策課の方に協力してもらっています。いまは退職されたのですが「鬼の上原」と呼ばれる有名な方をある方から紹介されて。
──どなたに紹介されたんですか?
丸野 祇園でクラブをやられている女性に。京都を盛り上げようとしている若いやつがいるなら力になりましょうっていうことで。いま、外国人観光客でにぎわっている京都ですが、それは観光スポットだけで、木屋町をはじめとする地元のひとたちのための夜の飲食街はもうずっと不況なんですよ。
──警察はどんな協力をしてくれたのですか?
丸野 なんかあったらこれ出してと名刺をくれまして、ぼくは撮影中、その名刺をずっと握っていました(笑)。交番のひとにも話をしてあるから、なにかあったら連絡してとも言っていただきましたし。
──警察も協力的だったんですね。
丸野 京都府警にご挨拶をしに行ったときこの企画と脚本をお見せしたら、面白いと言ってくれたんです。ただ、暴力団をむやみに礼賛するような内容にはしないでと注意されました。映画の脚本はそこには気をつかっていますし、小説の終わり方も書き換えました。

人間を描くための暴力を


──エロやえぐい描写は意識して書いているのですか?
丸野 Vシネマのオマージュです。しかも無駄なバイオレンスじゃないんです。最近の映画には、無駄に暴力をふるって、それを最新鋭像で見せて喜んでいるようなものがありますけど、「木屋町〜」の暴力は、暴力には報いがありますよってメッセージがあるんです。酷い目に遭うひとは皆、自分がやったことの報いでしか暴力を奮われていないんですよ。
──暴力をCM映像みたいにかっこよく描く作品ありますね。
丸野 ぼくは、そういうのではなく、かつては存在していた、人間を描くための暴力を映画や小説で復活させたいんです。
──今後の予定は?
丸野 「木屋町DARUMA 」に続くタブー小説を書く予定です。大阪・信太山の遊郭の話と屠殺場の話を書いて「木屋町〜」と合わせてタブー小説3部作を構想しています。いずれも最終的には、どっこいこの街で生きていくという勇気をもってもらえるようなものにしたいですね。
──いずれも、裏社会ライターとして培った取材力で、関西地区で実際あったことをもとにして描く?
丸野 そうですね。西はタブーが多いですからね。こわいけれど面白いものになると思います。もうひとつ、「木屋町DARUMA」のスピンオフ的なものを企画しています。遠藤さんが演じた主人公と、三浦誠己さんが演じた舎弟の話です。
──あのふたりの関係性いいですよね。
丸野 ああいうバディものいいでしょう(笑)
──ちょっとBLぽくも見えてくるから。
丸野 電子書籍のファンの方でBL好きなひともいて、やっぱりあのふたりがすごくいいって感想をくれました。映画は小説よりもソフトな結末になっています。小説はとにかくすごいことになってますんで(笑)。
──小説も映画も、えぐいだけではなくて、ちゃんと登場人物の繊細な感情をすくいとっていたので、よかったですよ。
丸野 ありがとうございます。女性からの声援もすごく多くて、Twitterでつぶやいている人にも女性が多いみたいです。男は文化や芸術を大事にしないで物質的なものを求めますからね(笑)。最近はフィギュアとかね。まあ、ぼくもモデルガンが好きで、劇中に出てくる銃のなかにはぼくが私物を提供したものがあるんですよ。
──手づくりな映画ですね(笑)。
丸野 手作り感満載な映画です(笑)。

[プロフィール]
まるの・ひろゆき
1976年京都市生まれ。作家、脚本家、ライター、映画プロデューサー。
株式会社オトコノアジト代表。裏社会ライターとして、アンダーグラウンドの取材を続けた後、小説「木屋町DARUMA」を電子書籍で出版。それを原作に映画もプロデュースした。現在は、ラジオ、イベント、テレビ出演などでタレントとしても活躍し、特別監修・責任編集長として、メディアサイト「ウーテレ」「Qtty」では、広告宣伝ナシで2ヵ月最短“10万アクセス”を誇る。
次回作に「純喫茶関東刑務所前」、「童貞保護区域指定01号」、「屠殺場、地獄絵図ヲ描ク。」がある。

(木俣冬)