照ノ富士の初優勝で幕を下ろした大相撲夏場所。結びの一番で、優勝を争う白鵬を兄弟子・日馬富士が下した際には、照ノ富士も思わず涙ぐむ様子が見られました。兄弟子が弟弟子の優勝を援護射撃する、美しい連携プレーでした。

しかし、日馬富士は照ノ富士だけでなくもうひとり、部屋の弟弟子を援護射撃していたのです。その相手とは伊勢ヶ濱部屋の宝富士。宝富士は夏場所で東前頭筆頭に位置し、自身初の三役昇進に向けて勝負の場所を過ごしていました。その結果は9勝6敗の好成績。初の三役昇進へ十分な成績……のはずでした。

ところが、好成績の照ノ富士はもちろんのこと、千秋楽の取組で小結の栃煌山・逸ノ城が相次いで勝ち越しを決め、さらに関脇・妙義龍も千秋楽に勝って7勝8敗としたのです。「ひとつ負け越せば番付が一枚下がる」というのが通例ですので、これでは妙義龍も小結に踏みとどまる可能性が出てきます。関脇・小結の4人の誰かが抜けなければ、せっかく好成績を挙げても宝富士の三役昇進が叶わないかもしれないところだったのです。

そのピンチを「照ノ富士を大関に昇進させることで、宝富士が三役に入るぶんの枠をひとつ空ける」というナイス援護射撃によって、日馬富士は回避してみせたのです。ひとつの白星で部屋の弟弟子ふたりを救うとは、まさに兄弟子の鏡です。

兄弟子が奮闘し、弟弟子が感謝と尊敬を抱くという好循環で、伊勢ヶ濱部屋は結束力を高め、ますます充実していきそうな予感。かつて貴乃花・若乃花・貴ノ浪らを擁して一大勢力を築いた二子山部屋のように、今後は伊勢ヶ濱部屋が角界の中心勢力となっていきそうですね。

(文=フモフモ編集長 http://blog.livedoor.jp/vitaminw/)