【亀山敬司×経沢香保子〜新規事業の作り方】第5回|泥臭い仕事で有利に立つ

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「日本語のできる外国人を雇う」というグローバル化

 2015年2月19日、オンライン英会話サービスやモノづくり支援など、次々と新規事業を立ち上げるDMMグループの会長・亀山敬司と、トレンダーズの創業者で、最年少上場女性社長としても知られるカラーズ代表取締役・経沢香保子氏の対談がちゅうつねセミナーで行われた。その模様を計5回にわけて配信していく。

経沢香保子(以下つね) では、次の方の質問を。

客B ビジネスについて先ほど世界に向けて売り出すってお話があって、そういう時にやっぱり日本人って言葉の壁ってすごく大きいと思うんですけど、それを具体的にどう克服されようとしてるのかっていうのを聞かせてもらいたいです。

亀山敬司(かめ) 言葉の壁の克服?…うん。人を雇う。

つね いや重要です(笑)

かめ おれは世界中を旅してるんだけど、実は英語はほとんどできなくって。行く国もモンゴルとかペルーとか変な所ばっかりで、何語かもよく分からないようなことが多い。だから結局出たとこ勝負で、ボディランゲージだったり、中国だったら漢字を手に書いたり、言語は個人的には諦めてるんだよ。うちのスタッフもほとんど英語できないから、今やろうとしているグローバル化は「日本語のできる外国人を雇う」で。英語ができる日本人以上にその国の文化もわかるから。

 だから楽天さんみたいに「英語できないと出世させないぞー」ってことはない。だって英語は表現力の一つの能力だけなんで、それ以外の業務って英語関係ないから。ただ皆さんは勉強した方がいいとは思うよ。おれはもう50過ぎたら今更ちょっとやる気ないかなっていう感じです。

7割自分と同じ決裁ができるようになったらどんどん任せる

客C たくさんの部下の方がいらっしゃる中で仕事されてると思うんですけど、上に立つ人間として、部下からこう思われていたいというイメージがあったら教えてください。

かめ 部下にはあんまりオレのことを信じてほしくない。上が強ければ部下はだんだんYESマンになっちゃうし、カリスマ性があるほど社員は思考停止になっちゃうじゃない。会社の中でおれが動き過ぎると、結局みんながこっちを見ちゃうってのがあるのね。そうなるとオレもあと10年20年で死んじゃうかもしれないのに、その後がキツイじゃない。

 結局その後は自分たちでやってかないといけないから、社員には「おれが言ってることも否定できるようになれ」とは言ってる。そうやってく中で新しいものが生まれていく。だからやっぱり自分で考える社員になってほしいと思ってますかね。

つね すごいいい話ですね。DeNAの南場さんも同じようなことをおっしゃっていて、自分で考えて、ちゃんと答えを出さないとお前のバリューはないみたいなことを。本人に向かって言うらしくて。

かめ 一番簡単な教育方法は、部下から「これどうしましょう?」って聞かれたら「どっちがいいと思う?」って問う。そしてその答えに「いいよ」って言うか、違うなら「これはこうだから違うよ」って話をする。上司は部下から「どっちがいいですか?A?B?」って聞かれたらついつい「A」って答えちゃうわけよ。でもそれをやってると、部下は「どっちがいいですか?」しか聞かなくなる。だからまずはどっちがいいかを本人に決めさせてから決裁を取りに来させる。それを繰り返していくと、部下はとりあえず考え出すわけ。

「Aがいいと思いますけど、これでいいですか?」って問いに「いいよ」か「ダメ」と決済していって、7割くらい自分と同じ決裁ができるようになったら、ちょっと間違えてもいいっていう考え方でどんどん任せていく。たったそれだけのことで、人は思考を働かす。

つね すごいそれいい。組織が自活しますもんね。長持ちするというか組織として育っていく。

かめ また必要以上に自分がカリスマにならないように気をつけないと、どうしても自分がそこまで思ってなくても幹部あたりがやりだすんだよ。「会長がおっしゃってるのに、お前らはやらないのかー」みたいなことを。

つね 勝手に持ち上げはじめるっていう。

かめ そういうタイプは「俺が死んだら銅像作るんじゃねーか?」って思うんだけど(笑)偶像化しちゃいけないのはそういうとこだと思うんだけどね。結局崇めるものがあると、それに対して「お前は反対するのか」ってなる。部下への指示は「自分の言葉で言え」って話だね。

つね 顔色伺うみたいな?

かめ 必要以上に気にしないと、どうしても自然と人はそうなるっていうことを理解しといた方がいいかな。ときには部下の意見を否定することもあるけど、本当は否定されても言い続けてほしいわけよ。でも部下は否定されると「言わない方がいい」って思うじゃない。結構そこが厄介で、まあ社員にはめげないでほしいかな、などと思っております。

つね 私も思う通りにやって欲しいから、みんなが思うようにやってくれるっていう組織作りを心がけてます。 では次の方どうぞ。

やめる時はトップが決断しないといけない

客D 亀直など事業をお任せになるときに、利益が赤字でも売上が出ていたら続けさせることを大事にされているような印象を受けたんですけど、引き際のタイミングを見分ける時に何を考えてのか教えてください。

かめ 基本は成長してるか?未来があるか?が撤退の論点になるんだけど、成長してても他社がそれ以上に成長してたりして、最終的にシェアを取れないって思いからの撤退もある。例えていうなら、うちは配信のアダルトでは一番取ってたから、映画の配信にも気合入ってたのよ。でも、映画の動画配信には、TSUTAYAとかJcomとか、docomoとか、色んなとこが参入してきた。で、その人たちはお金あるのでハリウッド映画をどんどん高値で買うわけよ。すると映画コンテンツ代が高騰、ライバルが増えて市場が細かく分散してきた。

 将来ビジネスになるには、ある程度のシェアを取らないといけなくて一番になっただけではダメ。レンタル店市場でのTSUTAYAやGEOみたいに30%くらいシェアを持つと力になるんだけど。動画配信市場みたいにdocomoが10%、TSUTAYAが10%、その他いろいろみたいな取り方をするとどうなるかっていうと、ハリウッドメーカーが一番強い存在になる。アメリカのネットフリックスみたいに圧倒的一番を取ると、メーカーも全部ひれ伏すけど、日本みたいに細かく10%とって1位だとか言ってても、ハリウッドに「他の90%に売るからこの値段で嫌ならやめていいよ」って言われて終わるから。

つね そうですね。

かめ 業界によって、店舗が強かったり、流通問屋が強かったり、メーカーが強かったりがあるけど、どこが主導権を握るかでビジネス利益が決まるっていうのがある。それでいうと日本の動画配信事業っていうのは、実はどこも儲かってないのが現状。4〜5年前はDMMも何億かでハリウッド映画買ってたし、売上もある程度あったよ。でも、ここは未来がないからと思って撤退。そんな風に未来を何に見るかが、シェアとか成長率とか事業によって違う切り口で見て、続けるかどうかを決めてくかな。

つね やめる時が結構、一番エネルギー要りますもんね。

かめ やめる時はトップが決断しないといけない。現場がやめたいとは言わないから。良くない事業こそ定期的にまめにミーティングして、状況聞いて、早く引こうってことを考えないといけないかな。

つね 今日はいつもと違ってすごく視点が広くて、私も自分が新しいこと始めたばっかりだからすごく染み入りました。

かめ うちは視点広いよー。だって露天商からITまでだから幅広いことは広い。だからそういったことを利点にしたいっていうのはあるかな。オンライン英会話みたいにフィリピンまで行って一人づつ会って講師雇うみたいな泥臭い仕事をIT会社はやらない。そういうITだけじゃないとこを有利にしたいね(笑)

(完)



※対談全編の音声はこちらからお聞きいただけます。

プロフィール

株式会社カラーズ代表取締役社長

経沢香保子

桜蔭中高→慶應経卒。新卒でリクルート→創業間もない楽天で楽天大学を設立後、26歳自宅でトレンダーズを創業。30代で、3回の出産・育児、2012年に東証マザーズへ当時最年少女性社長での上場を経験。2014年(株)カラーズ設立 代表取締役社長。

株式会社カラーズ:

プロフィール

DMMグループ会長

亀山敬司

石川県のレンタルビデオ店からアダルト、IT業界の大物まで登り詰めるも、めったに人前に姿を現すことがなく、その正体は謎につつまれている。