3月17日に保釈される宮内被告。この前日出された保釈決定に検察側が準抗告した際、罪を償いながらも、残された家族の身を案じ「何とか出られないものか」と願ったという。(資料写真:吉川忠行)

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申し訳ない気持ちでいっぱいです──。

 11日、東京地裁の大法廷(104号法廷)。真ん中の証言台の前にひとり座った宮内亮治被告(38)は、正面の小坂敏幸裁判長を見上げ、か細い声を震わせてこう心境を語ると、握りしめた白いタオルを顔に当てた。ライブドアグループをめぐる証券取引法違反事件で、同法違反(有価証券報告書の虚偽記載など)の罪に問われた宮内被告ら旧経営陣4人の第3回公判では、宮内被告に対する初めての被告人質問が行われた。

 1月の強制捜査から現在までの宮内被告の胸中を探る弁護側。同被告は「取締役ですから自分のしたことの責任を取るのがあるべき姿」と逮捕当時の思いを振り絞るような声で語り始めると、精神不安定で薬を服用しながらの拘留生活、会社や家族への慚愧(ざんき)の念など、事件発覚からの半年間の出来事一つひとつに思いを巡らせた。

 宮内被告の証言によると、保釈が決まった3月16日、地裁の決定に不服として準抗告した検察側からは「これが検察側の姿勢だ」と伝えられた。残した家族や同僚らの身を案じていた同被告は、当時を「苦しかった。何とか出られないものかと思った」と、証言台で振り返った。

 東京拘置所を出た後も、宮内被告への検察の取り調べは続き、3月中はほぼ毎日、6月までに計44回行われた。事情聴取は、堀江貴文被告が個人で保有する株式や同被告の私生活、5月に入ってからは村上世彰被告が起訴されたインサイダー取引事件に関する内容が中心だった。

 家族との生活を再開したのは5月の連休明け。その後もマスコミの取材攻勢が続いていたため、家族や近所に配慮し、ホテルに泊まることもあったという。現在の精神状態について宮内被告は「まだまだ良くないです」と語った。

 一方、弁護側、検察側の双方から、投資ファンドを通じて行った自社株売却益の売上計上など起訴事実について問われると、宮内被告ははっきりとした口調で適切な言葉を選ぶように供述を続けた。「ベンチャー企業は上場して、M&Aで急拡大して、株主に還元しなければならない」「社会に必要とされない=利益が出ない」。最高財務責任者として、堀江被告とともに「世界一」を目指した当時の姿勢をこう振り返ると、「目先の数字を優先して、道を踏み外してしまった」と反省の弁を繰り返した。

 初の供述の機会となった今回の公判は、午前10時から始まり、途中に休憩を挟みながらも午後2時半まで及んだ。熊谷史人被告の弁護人から質問の冒頭「疲れていませんか」と声を掛けられ、宮内被告が「大丈夫です。もう少しですから」と答える場面も。

 「3人とも私が誘ってライブドアに入っていただいたのに、私の認識不足、確認不足、法令遵守意識の低さから、こんなことになった。しっかりしていれば、3人がここにいることはなかった。非常に申し訳ない」。宮内被告は、事件への認識を問われると、関係者、ライブドア社員とその家族、自身の妻子へそれぞれ陳謝した後、被告席に座る岡本文人、中村長也、熊谷の3被告に対しても謝罪。保釈の正式決定を弁護人が伝えられた際には、同被告が“最年少幹部”だった熊谷被告を案じ「熊谷を何とかしてください」と泣きながら求めたことも明かした。

 裁判の最後、小坂裁判長が「株主のための会社であるのにも関わらず、会社を堀江やあなた、役員たちのものと思っていたのでは」と尋ねると、宮内被告は「結果として株主のためじゃなかったという状況になってしまっている。裁判長の言う通りだと思います」と供述。「当然私も、堀江もマザーズ市場から東証1部、2部に移ることは会社にとってもいいと思っていた」と、法令違反で幻となった“野心”の残像をのぞかせた。【了】

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