マーリンズ初の日本人選手となるイチロー【写真:田口有史】

マーリンズと合意のイチローが今季置かれる状況とは

 春季キャンプ開始まで約1カ月となった時期に、大リーグのヤンキースからフリーエージェント(FA)となっていたイチロー外野手の去就が決まった。複数の米メディアが23日(日本時間24日)、マーリンズと1年200万ドル(約2億4000万円)程度で契約合意したと伝えた。大リーグ15年目で初のナ・リーグとなる。

 マーリンズ公式サイトは球団史上初の日本人選手について、「4番目の外野手を獲得した。外野の控えと右投手相手の代打で起用されるだろう」と位置付けた。

 マーリンズの右翼には米スポーツ史上最高額とされる13年総額3億2500万ドル(約380億2500万円)で契約延長した25歳のスタントン、左翼にゴールドグラブ賞を受賞した23歳のイエリック、中堅には昨季23本塁打を放った24歳のオズナがレギュラーにいる。スポーツ専門局ESPN(電子版)がナ・リーグ最高と評した外野陣は鉄壁だ。米メディアも「あと156本に迫るメジャー通算3000安打の今年中の達成は難しい」との見解で一致している。

 1年契約で来季のオプションも付いていないとみられ、選択肢が少ない中での決断だったと思われる。球団公式サイトのフリサロ記者がツイッターで「イチロー側に他に選択肢がないとしたら驚きだ」とつぶやいていたが、厳しい評価が浮き彫りになった形だ。今オフ、イチローに興味を示している球団には、オリオールズとマーリンズ、ブルージェイズが挙がっていたが、「外野の4番手」以上の評価は得られなかったのだろう。

「ナ・リーグの野球にフィットする選手。まだ貢献できる力が残っている」

 指名打者制のないナ・リーグで出場機会が激減する可能性もあり、道のりは険しい。一方で、マーリンズはメジャー出場前提となる40人枠に外野手は3選手だけと選手層は決して厚くない。スタントン以外の二人は実績も少なく、付け入る隙は十分にありそうだ。

 米メディアも今回の移籍については大方、好意的な見方をしている。ヤンキース公式サイトのホーク記者はツイッターで「ナ・リーグの野球にフィットする選手。まだ貢献できる力が残っている」と評価。ヤンキースに所属した昨季も外野の5番手から出場機会を増やし打率2割8分4厘とまずまずの数字を残した。経験豊富なベテランの存在も若いチームに好影響をもたらしそうだ。

 最近3年間では2012年に178安打を放ったのが最高で、13年以降は136安打と102安打。通算3000安打到達には最低でもあと2シーズン必要とみるのが現実的だ。FOXスポーツ局のローゼンタール記者がツイッターで「今シーズンで3000安打に近づけば、FAとしての魅力も増す」とつぶやいたように、米野球殿堂入りの目安となる記録にどこまで迫れるかで、来季以降の挑戦権も見えてくる。

 球団公式サイトも今年の成績次第でマーリンズが2016年に再契約を提示する可能性を指摘する。初めてのナ・リーグで指名打者制も無い中、控えとして過ごしながら安定した調子を保った昨季の経験を生かせるか。1本の重みを感じながら、天才打者が勝負の1年を迎える。