復帰登板で13勝目を挙げた田中【写真:田口有史】

メジャー復帰は75日ぶり

 右肘靱帯部分断裂で故障者リスト(DL)入りしていたヤンキース田中将大投手が21日(日本時間22日)、本拠地でのブルージェイズ戦でメジャー復帰した。75日ぶりのメジャーのマウンドで、5回1/3を5安打1失点4奪三振無四球と好投し、7月3日のツインズ以来となる13勝目(4敗)。すべての球種を使い、肘に負担がかかるとされている宝刀のスプリットもしっかりと投げた。70球を投げてストライクは48球とコントロールの良さも負傷前と変わらず。防御率は2・47となった。

 田中が戻ってきた。試合前、ももクロのテーマ曲が流れ、右腕がダッグアウトから駆け出してくると、ヤンキースタジアムが大きな歓声に包まれた。そんな中、マウンドの土を手に付け、プレートから左足を踏み込む位置まで歩数を測る。いつも通りの仕草で準備した。

 しかし、立ち上がりはさすがの田中にも硬さが見られた。レイエスへの復帰初球は148キロの直球。外角高めに浮いた。2ボール1ストライクとなってから、真ん中に甘く入った145キロの速球を右前に運ばれる。最初の打者にヒットを浴びた。

 続くバティスタには1ボール1ストライクから、この日初めて135キロのスプリットを真ん中低めに投げ込む。ファウルで追い込んだ。しかし、最後は147キロのツーシームが逆球となり、外角に再び右前に持って行かれてしまう。

 いきなり無死1、3塁のピンチにも、エンカーナシオンは内角へと食い込む147キロのツーシームで打ち取る。コース、キレともに申し分のないボールで遊ゴロ。併殺の間に1点は奪われたものの、ピンチは脱出した。ナバーロは外角低めへの140キロのスプリットで空振り三振に仕留め、最少失点で切り抜けた。

 その裏には捕手のマッキャンが2死から同点弾。田中の女房役が相手先発ハッチソンから強烈な一発を放ち、すぐに同点に追いついた。

スプリット4連投で空振り三振も

 2回の田中は先頭のジョンソンを三ゴロに打ち取るが、川崎には144キロのツーシームを右翼線に運ばれる。二塁打でまたもピンチを迎えた。続くポンペイの一ゴロで川崎は三塁に進塁。それでも、田中はゴインズへの初球のカーブがボールとなると、スプリットを4連投。最後は外角低めの絶妙なコースに落とし、空振り三振に切って取った。

 3回はゴースを中飛、レイエスを二ゴロ。バティスタを三直と、初めて三者凡退に仕留める。4回はエンカーナシオンへのツーシームが真ん中高めに入ったが中飛。ナバーロはスプリットも右飛に仕留めたが、ジョンソンには死球を与えてしまう。続く打者は川崎。ここで、追い込んでから内角低めの146キロのツーシームで見逃し三振。ボールからストライクになる強烈な「フロントドア」で仕留め、グラブをポンとたたいた。

 5回は7番からの下位打線を三者凡退。すべてのバッターに対して初球にカーブを投げる工夫のある配球で三者凡退に抑えた。その裏、2回以降はイチローの2安打のみと沈黙していたヤンキース打線が、待望の1点を奪う。先頭のガードナーがハッチソンから右翼へソロ本塁打を放ち、勝ち越した。

ジーターもタイムリーで援護

 5回終了時で田中の球数は61球。70〜75球が降板のメドとされていたが、6回も続投した。ブルペンではウォーレンの準備も始まった中でのマウンドで、先頭のレイエスに甘く入った直球を中前に運ばれる。バティスタは二ゴロに打ち取ったが、併殺は取れず。続くエンカーナシオンに投じたスプリットは落ちきらず、右前打とされた。

 ここで球数が70球に達し、ベンチから出てきたジラルディ監督が交代を告げる。75日ぶりの復帰戦で好投した田中を、ヤンキースタジアムのファンはスタンディングオベーションで迎えた。後を継いだウォーレンは後続を打ち取り、田中の7月3日以来の勝利投手の権利をしっかりと守った。

 ヤンキース打線は7回にジーターのタイムリーで1点を追加。今季限りで引退するキャプテンの一打で、雰囲気は最高潮に達した。マッキャンのこの日2本目となる2ランも飛び出した。

 ヤンキースの救援陣はリードを守りきり、5-2で勝利。イチロー、ジーターと2人の役者も花を添え、田中に80日ぶりの13勝目が付いた。