フランスの「Le monde.fr」は、フランス紙「Le Canard enchaine(ル・カナール・アンシェネ)」の風刺画が日本の怒りをかったことについて伝えた。

 ル・カナール・アンシェネ紙は、11日付の紙面で、東京でオリンピックが行われることを受け、問題の2枚の風刺画を掲載した。ひとつは痩せこけた3本の手がある力士が描かれ、ふたつ目は、'オリンピック用のプールがフクシマにすでにある'とし、防護服を着た審判も一緒に描いた。

 また、これを受けて日本側が、「またフランスメディアが原発問題をやゆ」という論調とともに、風刺画に不快を示したことが伝えられた。さらに、「このユーモアは、日本人の好みにはまったく合わないもの」だとし、日本政府関係者が「誤解を与える不適切な報道で、震災で被災した方々のお気持ちを傷つけるもの」と発言したことを説明した。それを受けて在仏日本大使館が、カナール・アンシェネ編集部に対し直接抗議をしたことを伝えた。

 さらに、2012年にフランスのテレビチャンネル「フランス2」の番組内で、司会者が日本人サッカーの川島永嗣選手の画像の腕を、4本に合成して紹介したことについても触れた。これを受けて、「フランス2」のディレクターは謝罪をした出来事も改めて紹介した。

 フランスメディアは、日本人には考えられない程「ブラックユーモア」が登場することもあるため、今回の風刺画もフランス人にとっては日常的な光景だったようだ。

 しかし、相手に対する敬意や礼儀を重んじながら育った日本人にとっては、鋭い刃のような悪意を感じてしまうことは不思議ではない。

 また、2012年の「フランスメディアによる日本への不祥事」では、ディレクターは謝罪をしたものの、発言の超本人である司会者のローラン・リュキエは「表現の自由だ」としてその非を認めることはなかった。

 また今回のカナール・アンシェネの編集長は、「担当画家は、福島第一原発の事故が収束していない中、東京での五輪の開催は問題があると指摘する意図があったと思う」とし、「被災地の人々を傷つけるつもりはなかった」と述べた。

 Le Mondeの記事を読んだ読者からは、多数のコメントが寄せられており、遺憾表明については、「日本人とフランス人のユーモアは違う」、「メディアから表現の自由をとったら、真実は伝えられない」と述べるものや、中には「風刺画がそんなに挑発的だとうは思えない」と述べるフランス人が続き、日本人との価値観のギャップを感じさせられる。

 また、「そもそもカナール・アンシェネ紙は、誰にも敬意など示さないのだから、そこに'敬意'を求めるのは無理な話だ」とし、皮肉やブラックユーモアで成立しているフランス社会の一面をもうかがわせた。そもそも、フランス人が問題だと感じ論議したいのは、「人を傷つけるための風刺画のあり方」にあるのではなく、「汚染水に責任ある対応が感じられない東京電力や日本政府」にあると考えているようだ。

 そのため、「問題は東京電力や日本政府の福島第一原発事故への対応力のなさにある」、「被災地の人々の敵はカナール・アンシェネではなく、東京電力だ。怒りを向ける矛先が違うのでは」という論調に勢いが見られた。

 フランス人にとって、今回の風刺画は、決して被災地の人々を傷つけるという目的にあるのではなく、東京がオリンピック開催地に選ばれたことをうけて、汚染水への対応策の遅れを批判せずにはいられないという思いを示すもののようだ。(編集担当:下田真央・山口幸治)