毎年、今の時期はプロ野球をうらやましく思う。2月1日に一斉にキャンプインすると、連日テレビや新聞が大きく取り上げる。特に今年は、日本ハムの大谷君の露出の多さがすごいね。

それに比べて、Jリーグは寂しいかぎり。キャンプの話題が全国メディアで取り上げられることはほとんどない。

でも、それも仕方のないこと。各チームの新戦力を見ても、これといった目玉がないのだから。

確かに、浦和などは頑張って、森脇、興梠(こうろき)、関口と、代表クラスの選手を次々と獲得した。ただ、いずれも契約満了に伴う“0円移籍”。お買い得な選手をうまく集めただけ。マスコミが大きく取り上げるまでのインパクトはない。実際、アジアチャンピオンズリーグを制した2007年当時のメンバーと比べれば見劣りするよね。

ほかのクラブはさらに地味だ。移籍金の発生する移籍はほとんどなかったんじゃないかな。契約の切れた選手がチームを出ていく。浮いた年俸で、他チームとの契約が切れた選手を獲る。それがJリーグの移籍の“形”になってしまった。お金が動かないんだ。

それを象徴するのが、J2降格のG大阪に、日本代表の遠藤と今野が残留したこと。J1各クラブにとっては、戦力的にも営業的にもチームの顔になる選手を獲得するビッグチャンス。ところが、ふたりとも複数年契約の途中で違約金が発生するため、どこも名乗りを上げなかった。本人たちの意思はともかく、世界の常識で考えれば、代表の主力が2部リーグでプレーするなんてあり得ない。今後の日本代表にとっては大きな不安だ。

FC東京がラウールやデル・ピエロといった大物を獲得するかもしれないという記事が出たときは僕も少し期待したけど、結局、ガセネタだった。

世界中から大物が集まってきた発足当初のJリーグの姿は見る影もない。それどころか、今はJリーグで結果を出していない若手が次々と海外に“脱出”している。それはつまり、プレー環境も年俸もJリーグの魅力が乏しくなっているということだよ。

もちろん、日本経済の不況の影響は大きい。先立つものがなければ、どうしようもない。でも、それを言い訳にして、何も手を打たないのは最悪だ。僕が思う一番の問題は、大半のクラブがいまだに親会社べったりのアマチュア体質だということ。社長は親会社からの出向で、サッカークラブの経営についてはまったくの素人。大きな失敗をしたくないから、与えられた予算内で赤字を出さないようにしている。“経営”ではなく“管理”だよね。

でも、それじゃジリ貧。親会社やその関連企業にばかり目を向けるのではなく、もっと地元を意識した営業努力をすべきだ。例えば、僕がシニアディレクターを務めるアイスホッケーの栃木日光アイスバックスは、地元の自治会を通して、従来のファンクラブを拡大する形で1世帯500円の支援金を募っている。金額は少なくても、お金を払うことで興味を持ってくれるからね。そうやって、なんとか地元を巻き込もうとしているんだ。実際、少しずつだけど、街中で関心を持って声をかけられる機会は増えている実感がある。

残念ながら、今のJリーグでは、大きな親会社を持つ、経営の安定したクラブほど、そういった地道な営業努力が不足しているように見える。そこから変えていかなければいけないね。

(構成/渡辺達也)