短期間でトップへ戻るための一歩だ。ミランの金庫に新たな資金を手に入れ、『フォーブス』誌が7億6400万ユーロ(約775億円)以上と試算するクラブにふさわしい予算を手にするために、“アラブ・ミラン”とするのだ。

シルヴィオ・ベルルスコーニ名誉会長は、完全に売却することは考えていない。しかし、30%前後の一部株式を売却する計画は存在する。そして、カタールのファンドとのコンタクトは、もはやコンスタントに行われているのだ。目標は、新たに2億5000万ユーロ(約250億円)を手に入れること。ただし、さまざまなことを分析しなければいけない。

最初は、不動産プロジェクトが存在するかもしれない。クラブにアジアグループを入れるために、インテルが選んだ形だ。ミランも同じように、アラブの資金で、バルバラ・ベルルスコーニが強く望む新スタジアム建設を計画するかもしれない。新しいスタジアムか、サン・シーロを改築するか、だ。

だが、これは始まりでしかないだろう。カタール資本が関心あるのは、イタリアサッカー界に入り込むことだけではなく、テレビ市場への参入でもあるからだ。ミランをめぐり、財政面で大きな動きがある。

『フィニンヴェスト』の収支を見る限り、ベルルスコーニ・ファミリーの個人財産に頼らない限り、ミランがかつてのように再び支出できるようになることはないだろう。クラブのコントロールを維持しつつ、大きなプロジェクトに外国人投資家を組み込むことが、ベストの選択肢と考えられている。

もちろん、イタリアサッカー界のような赤字部門への(しかも部分株式取得という形での)投資は、カタールの富豪たちのスタイルではない。だが、彼らが関心を寄せるのは、コミュニケーション部門での拡張だ。ミランへの投資は、『メディアセット』にも相互作用することを意味する。最近、『Cologno Monzese』と『アルジャジーラ』の提携が騒がれたのは偶然ではない。

とてもデリケートな案件だけに、慎重さが求められる。だからこそ、アドリアーノ・ガッリアーニ代表取締役も11日、「事実ではない。だが、すべてを否定することはできない」と話したのだ。アラブ資本に関するものだが、ロシアからのオファーに関するうわさに対するものでもある。ベルルスコーニ名誉会長がウラジーミル・プーチン大統領の家へ向かったことで、『ガスプロム』やほかのロシア資本の関心に関するうわさが再燃したのだ。ただ、現時点でクラブ参入により近い候補者は、アラブの方である。

アラブ・プロジェクトは、ミランに2億5000万ユーロをもたらす。ベルルスコーニ・ファミリーは昨年、損失補てんのために8000万ユーロ(約80億円)を投じているのだ。そのほかはチアゴ・シウバとズラタン・イブラヒモビッチの売却で賄い、収支をとんとんにしている。だがこの方針では、スポーツ面で大きな結果を必ずしももたらすものではない。

ミランは以前にも、緊縮財政をしようとしてやめたことがある。2001年、クラブの財政から節制が求められていたときに、ベルルスコーニ・ショックが訪れたのだ。3500万ユーロ(約35億5000万円)を投じてマヌエル・ルイ・コスタを獲得したのである。ベルルスコーニの歴史で最もコストがかかった取引だった。また、2年前に節約の必要性が宣言されたときも、イブラヒモビッチとロビーニョを獲得している。

現在の緊縮財政は完全なもののようだが、ベルルスコーニ名誉会長がサッカー界で2番手の役割に甘んじることはない。その対抗手段が、外国資本獲得なのである。