■高校1年生、あるいは中学卒業時点でプロか否かの判断が迫られる

海外でサッカー選手としてお金を稼ぐことのできる、そういう可能性を持っている選手は日本にたくさんいるんです。僕はボカの育成をやっていたシルビオ・マルソリーニに評価されたように、現時点で完璧な選手かどうかではなく、今いる選手たちとは違ったものを持っているか、さらには他のクラブでも評価される何かいいものを持っているかどうか、その可能性を見てくれるんです。

もちろん日本にある稼げるチーム数は限られているわけですし、今後日本人はもっと海外に出ていくべきですよ。3部4部でもかなり稼げる国も探せばありますし、世界中に南米人はいますよ。世界中に稼ぎに出かけています。そういう流れが日本にもできれば、日本のクラブのスカウトもさらに目が肥えてくる気がするのです。日本のクラブも選手に出て行かれたくないから、選手を守る方法を一生懸命考えるようになりますよ。

ラベッシなど多くの選手が可能性に懸けて臆せず外に出て行ったことで得られた成功例は世界中に無数にあります。選手が出場機会に恵まれず腐っているのなら、外に出ることが重要だし、きっと家族と自分で決めた決断で外に出た場合、たとえ満足な結果が出なかったとしてもサッカー以外にも得るものも多いと思うのです。

今回強く言いたいことは、僕みたいに恥ずかしいですが大したキャリアがない選手でも海外に出たことはやはりプラスになっているということ。サッカーから得たもの学んだものは本当に大きなものになっています。僕の場合も岡山の国体選手とかJFLでプレーさせていただきましたが、結局その程度の選手です。でもアルゼンチンによくいるのは、自国の2部でサテライトまで行ったその後、イタリア4部とスペイン3部でプレーして、最後は北欧でもプレーして貯めたお金で今はゆっくり商売をやっているような元選手。サッカーを仕事にして、いくつかの国を知り、多くの仲間もできる。

■迷わずに海外へ出て行くべき

僕自身、そんな人たちと同じような感覚になれたことを誇りに思っています。こんな僕ぐらいにできたことですから、今後アンダー世代で代表歴がある選手なんて迷わず行くべきですよ。あまり適当なことは人の人生ですから言えませんが、とにかく行ってから考える。日本で出場できないならば、まずは近くの韓国でも中国でもプロになるチャンスがあるならば行く。そこで保有権が発生するから一度プロになってみるんです。

まずサッカーの世界で食うことに足を踏み入れる。日本のクラブに入れないのなら高校や大学を卒業した時点で行く。それでやれそうなら続ける。トライして駄目でも、その勇気があればその後どうにか就職も出来るでしょう。アルゼンチンで僕がユースにいたとき、現地の選手たちが背負っていたものは本当に重くて、親は「なんとか成功してもらいたい」という思いですべてを懸けてやっていた。本当にサッカーがダメだったら他に就職先がないんです。だから必死でやれるチームを探す。必死に食える選手になろうとする。

というのもアルゼンチンは日本の高校1年生、あるいは中学卒業時の段階でプロになるのかならないのか、という判断があるんです。「おまえ、プロにトライするのか?」という判断があるから、中学生がそこで将来どうするかを自問自答するんです。アルゼンチンは午前中の練習がプロとユース1軍から2軍4軍5軍6軍というカテゴリーが練習をします、午後の練習が15歳以下のジュニアユース、ジュニア、スクール生たちになります。

だからプロになるという決断をしたら、午前中の練習になるわけです。トップ選手が怪我をしたらラッキーにも練習に呼ばれたり、U16とトップチームの練習試合だってやることもあります。「明日、お前トップに来い」と言われたらトップの練習に参加できる環境があるのです。僕も呼ばれて嬉しがっていたら壁に立たされただけの日もありました。でもトップのユニフォームを着てトップの人たちの品格を知れたり色々教わったりできたので楽しかったですよ。