香港在住の時事評論家の何亮亮氏は15日、香港に拠点を置く鳳凰衛視(フェニックステレビ)の番組「新聞今日談」で、日本側が香港人の活動家に尖閣諸島の魚釣島への上陸を許したのは、「日本側が自制したからだ」という見方を示した。「上陸成功」に興奮する声とは一線を画し、日本側の冷静な対応に注目した。

 何氏は、意外だったこととして、日本側が活動家の上陸を許したことと述べた。海上保安庁の装備は優秀であり、情報も早くから得ていたと指摘。「(上陸阻止のため)なぜ最も強硬な方法をとらなかったのか」と疑問を感じたという。

 活動家の立場からすれば、日本の艦船の包囲を突破したことになるが、「日本側には、最も不幸な局面を回避したいとの意志があった」と指摘した。

 何氏は、最も不幸な局面とは「海上保安庁が、巡視船を活動家の乗る漁船に強くぶつけること」と説明。死傷者が出れば、事態は極めて騒然とすると論じ、「私は、日本は事態をコントロール可能な範囲にとどめたと信じている」と述べた。

 何氏は「日本人からすれば釣魚島(尖閣諸島の中国側通称)は日本のものだ。すなわち尖閣諸島だ。日本の固有の領土だ。われわれは外国人ということになる」と、日本側の立場に言及。日本側は活動家をまず上陸させてしまい、上陸後に「日本の法律に違反した外国人」として、逮捕するという方法をあえて選んだとの見方を示した。

 仮に、日本が巡視船十数隻動員して、みずぼらしい漁船にぶつけて沈めた場合、「全世界の華人が激高する。まずは、中国大陸の民衆が強烈な不満を示す」と指摘。「日中関係は空前の危機に陥り、釣魚島は、東南アジアにおける新たな危機の起爆点になる。だからこそ、日本側は(強硬手段を)自制した」との見方を示した。

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◆解説◆何亮亮氏は1951年に上海で生まれた。中国政府のシンクタンク、中国社会科学院で修士号を取得し、1988年に香港に移住した。鳳凰衛視は香港に拠点を置き、大陸部を含む中国語圏向けに放送を行っている。(編集担当:如月隼人)