東京都が募っている“尖閣諸島購入寄付金”が日々膨れ上がっている。4月27日に開設した口座に集まった額は、5月22日入金確認分で、実に約8億6000万円! このペースなら10億円突破も時間の問題だ。

地権者の男性と石原慎太郎都知事の間でどのような合意がなされているかは明らかにされていないが、売買価格は10億円から15億円になるとみられ、寄付金だけで購入できる可能性も出てきた。

しかし、地方自治法の規定では不動産の場合、購入価格2億円以上、面積2万平方メートル以上の場合は議会の議決が必要とされている。仮に税金を投入せず、全額寄付金で購入できるケースでも同様だ。

これまでのところ、早々に「購入反対」を表明した共産党以外、都議会各会派は態度を明確にしていない。最大会派の都議会民主党は、週プレの取材に対し、「東京都の公的支出として適正か否か慎重に判断していく」とし、態度を保留している。

同党の関口太一議員はこう話す。「私自身は購入に大賛成ですが、なかには反対の人間もおり、会派として意見がまとまっていないのが現状です。とはいえ、民主党さえまとまれば、保守政党である自民党は『購入賛成』でしょうから、議決できると思います」

ところが、その自民党が及び腰だ。東京都議会自由民主党の福地正彦事務局長はこう答える。

「会派としてこうであるということを現段階では申し上げられない。そもそも、こちらで提出したテーマではなく知事サイドから出たお話で、あちらの詳しい説明を聞かないかぎり軽々に動けない。それこそなぜ、地方自治体である東京都が尖閣諸島を買うのかという批判的な声もありますからね。まだ様子見です」

購入議案は12月の定例会に提出される見込みだが、そのときまでに寄付金は数十億円にまで上っているかもしれない。よけいなお世話かもしれないが、もし万が一、都議会で否決されたら、その多額の寄付金はどうなるのか? 都知事本局・尖閣諸島寄附担当の担当者に聞いた。

「そこはまったく考えておりません。(お金を)集めるというより、国民の皆さまから“お志(こころざし)”をお寄せいただく、その受け皿をつくらせていただいただけ。同時に、そのお志をどう有効に使えるかを考えるため、このセクションは発足しておりますので、『買わない』という選択肢は頭の中にございません。返金? それも考えておりません」

「購入できる」という前提が整っていないのに、「購入できない」というケースをまったく想定していない?

「そうです。この段階で、購入できなかった場合のお話をされるのは意味のないことだと思いますよ」(担当者)

う〜ん、そうだろうか。自治体が一般国民から寄付金を募っている以上、使途についてはより注意が必要だろう。尖閣諸島購入の是非はともかくとして、寄付金を集める側のスタンスとしては、少々乱暴ではないか。都の中堅幹部職員がこう打ち明ける。

「そもそも税金全額投入は難しいからと、世間の理解を得やすいように寄付金の窓口を用意した一面もある。そうしたら、扱いに困るほどの寄付金が集まってしまった(苦笑)。正直、都は寄付金の扱いに困っています。これだけの額ですから、口座に保管していても利子が発生するし、それをどう扱っていいかもよくわかりません」

日々増え続ける国民からの“お志”。これ、ホントに買えなかったらどーするんだ?

(取材・文/コバタカヒト)