中国・貴州省黔東南ミャオ族トン族自治州鎮遠県で31日午後、同日に通信衛星「亜太(Apstar=APスター)7号」を打ち上げた長征ロケットの残骸(ざんがい)が落下した。残骸からは黄色い刺激臭のあるガスが噴出し、霧のようになって漂った。住民らは恐怖でパニック状態になったという。環球網などが報じた。

 四川省の西昌衛星発射センターで午後6時27分、長征3号B型ロケットを使って打ち上げた。鎮遠県尚寨トゥー族郷では、午後6時34分ごろ、上空に白い煙の帯が見え、続いて数回に分けて爆音が鳴り響いたという。

 その後、上空に白い物体が見えた。「どんどん大きくなりながら、こちらに向かってきた」という。「直撃を受ける」と思い、驚いて泣き出す住民や、子どもを抱いてできるだけ遠くに逃げようと駆け出す人もいた。

 物体は轟音(ごうおん)をたてて小川の近くに落ちて、4つの部分に分裂した。2つは山の斜面に突き刺さった。残りの2つは水田に落ち、黄色い煙を噴出しつづけた。住民は遠くから、物体と物体の周囲で次第に濃くなる「黄色い霧」を眺めているしかなかったという。

 同地域では、打ち上げに伴うロケットの残骸の落下が予測され、緊急指揮部も設けられていた。係員が落下地点に駆けつけると、周辺は黄色い霧に覆われていた。「我慢できない刺激臭だった。霧に覆われて、落下物もよく見えなかった」、「度胸がすわっている者は、息をとめて落下物に近づき、形や落ちている状況を確認した」という。

 周囲の地面より低くなっている小川の上をつたうようにして、「黄色い霧」は広がった。「黄色い霧」は、長征ロケットの推進剤として使われる四酸化二窒素で、強い毒性と腐食性がある。

 当局の担当者が、落下した物体は亜太7号を打ち上げたロケットの一部と確認し、「村人を驚かせたが、家屋などの損害は発生しなかった。人々の生命と財産に影響は出なかった」と述べた。(編集担当:如月隼人)