「中国人に愛はあるのか」実験、女児ひき逃げ事件契機の試みに反応は?

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10月13日に中国の広東省佛山市で起きた女児ひき逃げ事件は、路上で倒れている女児を18人もの人々が放置するという痛ましい現実を突き付け、「道徳の欠如」「冷血な中国人」などと自国メディアでも大騒ぎとなる事態に発展した。この一件を受け、ある広東省の大学生が「中国人に愛はあるのか」を確認するために、路上パフォーマンスを敢行。多くの人が行き交う場所でわざと卒倒し、「見ず知らずの人たちが手を差し伸べてくれるのか」という実験を行った。

中国紙羊城晩報などによると、この実験を行ったのは広東外語芸術職業学院の学生たち。23日午前、学生は二手に分かれ、「ひとりの女性が路上で卒倒する」パフォーマンスを敢行し、市民がどのような反応を示すか確認した。

最初の実験では卒倒した2分後に付近にいた夫婦が助け起こしてくれたものの、続いて行われた実験では近くにいた男性はその場から逃げ出し、2分間誰も手を差し伸べてくれなかったとのこと。どちらの実験でも周囲に野次馬はたくさんおり、その中には通報してくれる人もいたそうだが、基本的にはすぐに自ら手を差し伸べてくれる人はおらず、学生曰く「残念」な結果となってしまった。しかし、学生たちはこの結果にある程度理解も示しているようで、実験後には署名活動を行い、1,000人以上の人たちが「冷淡さを拒絶し、愛を伝えます」と書かれた横断幕に署名してくれたという。

この報道を受け、多くのネットユーザーから「中国社会の悲哀」「自分でも助けない」といった声が上がり、ある程度は結果を受け入れているようだ。これは、中国でしばしば問題となっている詐欺師による手口(行き倒れと見せかけ、助けてくれた人に責任を押し付けてお金をゆすり取る手口)の影響が大きく、自分で助けずに、まずは通報することが中国社会では暗黙のルールとなっていることからの意見だろう。

同時に「政府前で同じことをして(政府関係者がどのような行動を取るか)確認して欲しい」「こうした結果が出るのは、そもそも中国の社会保障制度の不備からだ」と、政府を批判するようなコメントも少なくない。

反面、こうした実験そのものを批判する意見も目立つ。「あなたは聖人ですか? このような実験をする権利があなたにはあるんですか?」「一人が現場から逃げ去ったからといって、それがすべての人を物語ることになるんですか?」との声もあり、こうした意見は大学生の行為を「行き過ぎ」と批判する。

確かに時間と場所が異なれば、女児ひき逃げ事件もまったく異なる展開になった可能性は高く、「中国人=愛がない」ととらえるのは安易だろう。ただ、こうしたパフォーマンスが行われ、かつ注目を浴びること自体、今回の事件が中国社会に大きな衝撃を与えた証拠であり、また、中国社会の“相互不信”が相当根深いことを証明しているとも言えそうだ。