2009年に放送された『アイシテル−海容−』(日本テレビ系)は小学生が人を殺めてしまうというショッキングな内容で話題となっていた。その連ドラのラストに新しい命として授かった、加害者の少年の弟。「殺人犯の弟」という十字架を背負って生まれ、生きて来た弟を主人公にした続編『アイシテル−絆−』が21日放送された。いずれも伊藤実の同名漫画が原作だ。

番組が始まった瞬間、ドラマ本編ではなく、被害者家族の父親を演じた佐野史郎がナビゲーターとして登場。そこで連ドラのときのエピソードや今回のドラマの説明、このドラマに対する彼の思いを語った。まるで映画か報道番組の特番が始まるのかと思わせるようなSPドラマとしては異例のスタートだった。

森田直人(岡田将生)は高校生のとき、自分は殺人犯の弟という事実を知り、家を飛び出す。それ以来、何かとつきまとう「殺人犯の弟」という十字架に直人は周囲から心を閉ざすようになる。そんなある日、配達中に迷い込んだ工房で須磨哲人(伊東四朗)と孫の加奈(水川あさみ)に出会う。二人と過ごしていくうちに次第に心を開いていく直人は、やがて加奈と結婚する。しかし、直人は「自分と同じ思いをさせたくないから、子どもだけは諦めてほしい」と加奈に告げる。加奈も承諾していたが、加奈が妊娠した事実を知り、直人は兄の智也(向井理)に会いに行く。

自分はなんのために生まれてきたのか分からないとずっと感じてきた直人が、加奈の妊娠を機に全ての元凶である兄に会いに行こうとするところから始まる。そこから過去の回想→現在という時系列でストーリーは進んだ。過去の不幸話満載になるわけではなく、直人が人生の転機を迎え、生まれながら背負わされた十字架とどのように決着をつけるのかがしっかりと描かれていた。過去の回想と現在が繋がる直前で少し混乱が生じたのが惜しかったが、テーマが絞られていたので全体的にはきれいにまとまっていた。殺人犯の弟の人生ということで、もっと偏見や、いじめなどのシーンが描かれてしまうのかと当初は思われたが、今回伝えたかったのはそこではない、という制作側の強い意思を感じた。

実は、このSPドラマでは被害者側の家族のことは一切描かれていない。きっとこのドラマの主人公は「殺人犯の弟」でなくても良かったのかもしれない。少し特殊な設定にはなってしまったが、誰もが一度は感じる「自分はなぜ生まれてきたのか」という問いかけへの答えを探す旅。ただそれだけなのだ。

一つだけ疑問が残るとすれば、兄・智也役の向井理だ。小学生のときに殺人という罪を犯し、弟の直人より何倍も重い十字架を背負って生きてきたはずなのに、演じる向井からはその“重さ”を全く感じることができなかった。直人役の岡田の方がずっと幸薄そうに映った。「岡田将生ってこんな声だったのか」と驚くほど、これまでの好青年のイメージを覆す、新たな一面を見せてくれた。今後、好青年ではない岡田将生にも期待したいところだ。他にも稲森いずみの老け顔メイクの本気度や伊東四朗の年の功からくるセリフに重みを感じただけに、余計に向井理の演技に重みがなかったことが残念である。

「苦しみを100%理解することは出来ない。でも寄り添うくらいは出来るぞ」伊東四朗が演じた須磨哲人のこの言葉が身に染みた。
(TechinsightJapan編集部 洋梨りんご)

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