【戸塚啓コラム】代表の可能性を拡げる長友のラストパス −グアテマラ戦レビュー(2)
来たか、という感じだった。9月7日に行われた、グアテマラ戦の先制ゴールの場面である。ゴールを決めた森本ではない。アシストを記録した長友だ。
08年5月のコートジボワール戦で国際Aマッチデビューを飾った長友は、グアテマラ戦が32試合目の代表戦だった。何度でもアップダウンを繰り返すスタミナと攻守の切り替えの速さを特徴とし、南アフリカ・ワールドカップでは空中戦の競り合いとポジショニングに成長の跡を見せるなど、およそ2年強の時間で右肩上がりの成長曲線を描いてきた。
足りなかったのは決定的な仕事である。攻撃参加に積極的でありながら、彼のラストパスがゴールへつながるシーンは率直に言って多くなかった。
アシストと呼べるものは、これまでに三つある。
最初に記録したのは昨年5月のベルギー戦で、後半32分に矢野の4点目をアシストした。同年9月ガーナ戦では、玉田があげた2点目を演出している。一カ月後のトーゴ戦でも、森本のゴールへつながるパスを送っている。
いずれもアシストとして記録されたプレーだが、クロスからのダイレクトシュートは矢野の得点に限られる。残りの二つはストライカーのタレント性が、ゴールをもたらしたものだった。
先の南アフリカ・ワールドカップを振り返ると、ワンタッチ(ダイレクト)のゴールが多いことに気付く。また、ゴールが決まっているゾーンはペナルティエリア内が圧倒的多数を占め、とりわけゴールエリアの幅が多かった。ゴールへ近付くにつれてプレッシャーが高まり、シュートをするための時間とスペースが削られていくなかでは、ワンタッチでシュートへつなげられるラストパスの供給が不可欠だ。国際舞台ではとりわけ重要である。
森本のヘディングシュートを導いたピンポイントクロスは、スピードも高さも申し分のないものだった。彼自身もスピードを落とさずにタテへ抜け出しているから、森本からすればタイミングを合わせやすい。相手DFからすれば対応しにくい。ボールとマーカーを同時に視野に入れるという守備の原則を保ちにくいのだ。
「チェゼーナでのトレーニングで、スピード系のトレーニングもしている。それもあって、(スピードも)上がってきていると思う。そこはやっぱり、自分の自信になっています。限界はないですから、現状に満足せずに上を目ざしていきたい」
グアテマラ戦で見せたクロスは、世界基準の精度と言っていいだろう。しかし、南アフリカ・ワールドカップを上回る成績を目ざすには、サイドバックに当然求められる精度でもある。
豊富な活動量でクローズアップされてきた長友が、どれぐらい決定的な仕事を増やすことができるのか。彼自身の成長は、日本代表の可能性を拡げることにつながっていく。(了)
08年5月のコートジボワール戦で国際Aマッチデビューを飾った長友は、グアテマラ戦が32試合目の代表戦だった。何度でもアップダウンを繰り返すスタミナと攻守の切り替えの速さを特徴とし、南アフリカ・ワールドカップでは空中戦の競り合いとポジショニングに成長の跡を見せるなど、およそ2年強の時間で右肩上がりの成長曲線を描いてきた。
足りなかったのは決定的な仕事である。攻撃参加に積極的でありながら、彼のラストパスがゴールへつながるシーンは率直に言って多くなかった。
最初に記録したのは昨年5月のベルギー戦で、後半32分に矢野の4点目をアシストした。同年9月ガーナ戦では、玉田があげた2点目を演出している。一カ月後のトーゴ戦でも、森本のゴールへつながるパスを送っている。
いずれもアシストとして記録されたプレーだが、クロスからのダイレクトシュートは矢野の得点に限られる。残りの二つはストライカーのタレント性が、ゴールをもたらしたものだった。
先の南アフリカ・ワールドカップを振り返ると、ワンタッチ(ダイレクト)のゴールが多いことに気付く。また、ゴールが決まっているゾーンはペナルティエリア内が圧倒的多数を占め、とりわけゴールエリアの幅が多かった。ゴールへ近付くにつれてプレッシャーが高まり、シュートをするための時間とスペースが削られていくなかでは、ワンタッチでシュートへつなげられるラストパスの供給が不可欠だ。国際舞台ではとりわけ重要である。
森本のヘディングシュートを導いたピンポイントクロスは、スピードも高さも申し分のないものだった。彼自身もスピードを落とさずにタテへ抜け出しているから、森本からすればタイミングを合わせやすい。相手DFからすれば対応しにくい。ボールとマーカーを同時に視野に入れるという守備の原則を保ちにくいのだ。
「チェゼーナでのトレーニングで、スピード系のトレーニングもしている。それもあって、(スピードも)上がってきていると思う。そこはやっぱり、自分の自信になっています。限界はないですから、現状に満足せずに上を目ざしていきたい」
グアテマラ戦で見せたクロスは、世界基準の精度と言っていいだろう。しかし、南アフリカ・ワールドカップを上回る成績を目ざすには、サイドバックに当然求められる精度でもある。
豊富な活動量でクローズアップされてきた長友が、どれぐらい決定的な仕事を増やすことができるのか。彼自身の成長は、日本代表の可能性を拡げることにつながっていく。(了)
関連情報(BiZ PAGE+)
1968年生まれ。'91年から'98年まで『サッカーダイジェスト』編集部に所属。'98年秋よりフリーに。2000年3月より、日本代表の国際Aマッチを連続して取材している