＜2010南アフリカW杯　スロベニアvsUSA　クリバリ主審評：0＞

■主審：Koman COULIBALY(MLI)
　 採点：0

　今大会、私が取材した試合のなかで最高の試合だった（TVもいれればドイツvsセルビア）。

　しかし、審判は残念ながら今大会最低クラスのレベルだった。

　一番の問題は幻の決勝点となったUSAのゴールシーン。

　選手たちが「主審がどのファウルをとったのか答えてくれなかった」と表現したが、主審がファウルを把握してなかったように私にもみえた。

　もちろん、把握していたとは思う。ただ、他の主審は大きな判定を下す時に、たとえば手を叩いてハンドを示したり、ユニホームを引っ張る仕草をしたり判定の正確さをアピールしているのに対し、コマン主審にポスチャーは一切なし。

　よく荒れずに終わったと思うし、逆にこうった受け入れる姿勢の素晴らしさも伝えたい。日本選手にも学んでほしい。

　また、このシーンをスローで見ると一目瞭然だが、スロベニアの選手が後ろからUSAの選手に抱き付いている。完全にPKのファウルだし、その他の場所でも掴みあいがあった。おそらく、ファウルをとったのは、互いに抱きかかえてたシーンでUSAのファウルだとは思うが、そのファウル自体も最初はスロベニアの選手から抱きかかえている。

　確かに激しいポジショニング取りはどの試合も行われているが、ここまで無法地帯なPA内はみていない。

　全ての原因は開始20秒のレフェリングにある。

　競り合いで2度、腕があたったシーンがあった。さすがに二度目は笛を吹いたが、カードも注意もなし。試合のテンションが上がるのを読めていなかった。この試合なら厳しい基準にすべきだった。

　その後も笛を吹いた後に、どちらのファウルかを示すのも遅く、主審の威厳は時間が経つごとにピッチからなくなっていった。

　毅然とした強さがなかったために、選手たちが「このプレーはファウルになる」というラインを徐々にラフな方に近づけてしまった。これは選手の問題というより、基準の問題だ。それが基準ならば、当然選手たちは勝つためにその基準内でプレーする。

　とは言え、W杯に選ばれたレフェリーだ。次の試合があればだが、今後に期待したい。


＜2010南アフリカW杯　ドイツvsセルビア　ウンディアーノ主審評：2＞

■主審：Alberto UNDIANO
　採点：2

　一方、ウンディアノ主審はかなり厳しい基準で試合を進めた。
　2分、足の裏をみせてチャレンジしたということでファウルをとると、細かくファウルをとり基準を作っていく。12分にはボールを奪われスピードアップされた所を裏から引っ掛けたクローゼに警告。18分、ボールに対してプレーできない範囲で体当たりする格好になったイバノヴィッチに。19分にも裏からスライディングタックルしたKOLALOVに警告を出したように、テンションの高い試合を抑えるために厳しいカード基準をみせる。

　迎えた37分、足をキッキングしたクローゼが二枚目の警告で退場に。

　カードの基準は厳しかったが、55分、ファウルを貰いにいったということでノーファウルにしたように、全体的な判定は今大会の基準通り。

　ドイツのレーヴ監督は「数回は警告が相応しいと思うタックルもあったが、まったく悪意はなくてイエローカードは避けられたタックルも多かった」と審判を批判したが、逆にこのコメントから判定が妥当だったことが伝わってくる。

　ようはカードは妥当だったが、カードを出さなくてもよいファウルもあったというもので、それこそ主審の裁量内だし、そもそも今日の試合のカードマネジメントが厳しいのは目に見えている。

　なにより、試合を左右するような大きな判定で微妙なものはいっさいなかった。

　もちろん、もっとうまく試合をレフェリングできる主審がFIFAにはいるとは思う。採点：2が妥当だろう。

〜採点基準〜
5:彼なしに試合はありえなかった
4:普通に試合を終わらせた
3:ミスにも見えるシーンがあったが、試合に影響はなかった
2:試合に影響はなかったかもしれないが、カード・得点に対する微妙なシーンがあった
1:ミスから試合の流れを変えてしまった
0:試合を壊してしまった

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