車の運転中は、少しの油断が大事故につながりかねない。眠気に襲われたり、地図を見たりと、集中力をそぐ要因は多々あるが、そうした要因のひとつとなっていた運転中の携帯電話の使用が日本で禁止されたのは1999年のことだ。また、2005年に米国で行われた事故原因調査では、運転中の飲食(1.7%)が携帯電話(1.5%)をしのぐという結果が出ている(最多は「単なる不注意」の15%)。運転中に「運転以外の何か」をすれば、事故を誘発する危険性が常に伴うわけだ。

ごくごく一般的な行為であるラジオを聴くこともまた、「運転以外の何か」のひとつ。ほかの行為に比べると危険性が低いように思えるラジオだが、英国では、ラジオのサッカー中継を聴きながら運転した場合に、ほかの要因と同様の危険性があるとの調査結果が出ている。

この調査は、英レスター大のマイケル・J・ポント教授らが行ったもの。同教授らは、サッカーファン10人を含む12人のドライバーを対象に、サッカー中継を聴きながらドライブシミュレータを使って高速道路を運転してもらった。

その結果、サッカーファンでない2人は終始走行が安定していたが、サッカーファンの被験者は試合内容によって不規則な運転が見られた。あるドライバーは、試合が盛り上がった際に速度オーバーし、別のドライバーはひいきチームと対戦する相手選手の動きに過敏に反応して車線変更や追い越しを繰り返したという。特に、ゴールシーンやファウル、選手へのレッドカード提示の時に不規則な運転をするドライバーが多かったようだ。

また、サッカーファンは前の車にぴったりとくっついて走行する人が大半で、ポント教授は「携帯電話による注意力低下は広く知られているが、ラジオでスポーツ中継を聞くなど、ほかにも似たような影響を起こす行動がある」として、警鐘を鳴らした。

一方、英紙デイリー・テレグラフは別の調査結果として、英国人は平均月3回ほど車でラジオを聴き、毎日200万人の聴取者がいることを紹介。サッカー中継を車のラジオで楽しむ人のうち15%が、ゴールシーンでハンドルから手を離した経験があることを認めたという。

これらのことを受け、英国の各メディアは「車で試合を楽しんで興奮したら、すぐに脇へ車を止めましょう」とドライバーに注意を促している。サッカーの人気が高い英国ならではの結果だが、日本でもスポーツ中継を聴きながらの運転には注意したほうがよさそうだ。